仮想通貨と電子マネーは両極端にある
FRBのパウエル議長は、10日の議会証言で、Facebookが発行を計画しているリブラに対して、マネーロンダリングなどに関連して深刻な懸念があると表明した。
リブラはブロックチェーンによって運営される仮想通貨であるから、マネーロンダリング等を基本的には阻止できない。
この点で、仮想通貨は電子マネーと対照的な位置にある。
電子マネーには管理主体があり、その取引は、管理主体によって完全に把握される。したがって、その情報を用いて信用スコアリングなどが行われている。これが進めば、プライバシーが全くない社会が実現しうる。
香港のデモ参加者は、地下鉄の切符を買うのに電子マネーを用いず、現金を用いたそうだ。電子マネーを使えば、誰がどのように移動したかが当局に把握されてしまう危険があるからだ。
仮想通貨であっても、中央銀行発行する仮想通貨は電子マネーと似た性質を持つので、あらゆる個人や企業の取引を把握することが可能だ。これは、究極の管理社会を実現するための手段になりうる。
それに対して、ビットコインやリブラなどの仮想通貨では、マネーロンダリング、不正な商取引(例えば、麻薬の取引)、あるいは脱税などを阻止できない。しかも、その通貨の取引を、(インターネットそのものを禁止するのでない限り)規制できない。
(もっともこれは仮想通貨によって初めて生じた問題ではない。これまでの現金通貨も、匿名性を持つ支払い手段なので、同じような性質を持っていた。それがさらに効率的に行えるというだけの話である)
このように、マネーに関して全く両極端の動きが生じている。そのどちらも選ばれるかによって、将来の社会は大きく変わるだろう。