#085 福井県鯖江市の地域振興策「めがねをかけようキャンペーン」
先日の静岡県西伊豆町の取り組みに引き続き、今回は福井県鯖江市の地域振興策についてまとめてみたいと思います。
今後も、地域が中心となって、地元の企業や産業を盛り上げるようなおもしろい施策を見つけたら、随時取り上げてみたいと思っています。
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福井県鯖江(さばえ)市について
今回取り上げさせて頂くのは、福井県鯖江市の事例。
鯖江市 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AF%96%E6%B1%9F%E5%B8%82
鯖江市のキャッチコピーは「めがねのまちさばえ」。
福井県はメガネフレームの国内生産シェア96%だそうで、鯖江市はその中でも中心的な役割を担っているそうです。
人口は約7万人。福井県内でも人口増加率が最も高い市町村とのこと。
オープンデータへの取り組み
今回の取り組みの話題からはちょっと外れますが、鯖江市に関してどうしても触れておきたい話題がありますので、ここでご紹介しておきます。
鯖江市は、「データシティ鯖江」をキャッチフレーズに、「オープンデータ」への取り組みに関してかなり先進的なチャレンジをされておられます。
「オープンデータ」とは、「誰もが、自由に参照したり利用したりできるようになっているデータ」のこと。
ここでは、自治体が、自分たちの持っている統計データを、再利用しやすいオープンなフォーマットで利用制限無く公開すること、という意味で使用しています。
自治体が自分たちの持っている諸々のデータを「オープンデータ」としてを公開することで、住民や企業、その他第三者が、それらのデータを使って、新しいアプリやサービスを自由に作ることができるようになります。
オープンデータが大きく注目されたのは、東日本大震災の際でしょうか。
道路の封鎖状況や放射線の値など、自治体が持っているデータを公開することで、それらを見やすく表示するWebページやアプリ、それらデータを2次利用した分析などが誰でもできるようになりました。
もう、地域のサービスを、自治体だけが行うのは難しくなってきています。民間や住民の力を取り入れて地域のサービスを向上させていくためには、こうした取り組みは欠かせません。
鯖江市でこの取り組みを中心になって進めていらっしゃるのが、地元IT企業の創業者さんでもある、福野さんという方。
W3C(World Wide Web Consortium)という Web 技術の国際標準化団体に、「鯖江市」という自治体として加盟するという、極めて先進的な試みを実現されました。
鯖江市、全国自治体初のW3C加盟発表!/ 福野泰介の一日一創 / Create every day by Taisuke Fukuno
https://fukuno.jig.jp/579
私も W3C で活動していた時期があり、会合などで福野さんとお話させて頂いたことがありますが、ビジョンを明確に持ち、そのビジョンに向かって周りの人々を巻き込んでいく、本当にすごい方です。
また、子供たちに安価なプログラミング環境を提供する IchigoJamというプロジェクトを推進されるなど、次世代の教育にもご尽力されておられます。
こどもパソコン IchigoJam - はじめてのプログラミングパソコン(1500円)
https://ichigojam.net/
「めがねをかけようキャンペーン」とは
では、今回の地域振興策の話に戻ります。
今回鯖江市が打ち出した「めがねをかけようキャンペーン」は以下のような取り組みです。
さばえ めがねをかけよう ~産地からの総額1億5千万円~ キャッシュバックキャンペーン – めがねのまちさばえ 鯖江市
https://www.city.sabae.fukui.jp/kanko_sangyo/sangyo/shokogyoshinko/oshirase/megane-cashback.html
・キャンペーン期間は2020年10月1日から2021年3月31日まで。
・全国の対象店舗で2万円以上の鯖江産メガネフレームを購入するとキャンペーンに応募できる。
・先着4万人に3000円キャッシュバック。
・先着15万人のうち、抽選で1500人に2万円キャッシュバック。
上記の Web サイトで対象となるブランドが公開されていますが、私もよく知ってる高級ブランド、
・フォーナインズ(999.9)
・ayame
・BJ CLASSIC
・EYEVAN
・JAPONISM
あたりも含まれており(その他にもたくさん!)、非常に魅力的なキャンペーンになっています。
私も、この機会に眼鏡を1枚(業界の方は眼鏡を1枚2枚と数えるそうです)新調しようかと思っています。
応募を LINE に限定することで継続的な情報発信が'可能に
このキャンペーンで特徴的なのは、キャッシュバックの申込みを LINE で行うという点。
キャンペーンへの応募は、LINE で鯖江市役所の公式アカウントを友達登録するところからスタートします。
その後、LINE で購入した写真や応募カードのシリアル番号を入力し、キャッシュバックは LINE Pay で振り込まれる、という形になるようです。
この一連の手続きの中で、キャッシュバックを受けたいユーザーは自然と鯖江市の公式アカウントとつながることになります。また、キャッシュバックが振り込まれるまで、そのアカウントとつながり続けることになるでしょう。
鯖江市としては、この機会を上手に活用して、市の情報や今回のキャンペーン以外のプロモーションに関する情報を、この LINE アカウントを通じて行うことができます。
SNS の活用として、よくできた仕組みだと思います。
自治体と業界との連携と、思い切った施策の重要性
今回の施策、予算規模は2.1億円。そのうち、鯖江市が1.9億円、福井県眼鏡協会が0.2億円を支出しているようです。
鯖江市から支出する1.9億円は、コロナ影響で中止・縮小した事業の経費削減分を充当しているとのこと。
コロナ影響で眼鏡の展示会が軒並み中止となり、今年モデルの眼鏡フレームがかなりの数在庫として残ってしまっているようです。
これらを何とか売り切らないと、来年の新製品の開発ができない状況になっているとのこと。
地域の状況をきちんと把握し、適切なタイミングで効果的な企画をたて、思い切った予算を投入して業界とも連携して施策を実行する、こうした行動力が求められているように思います。
まとめ。
(1) 福井県鯖江市は「めがねのまちさばえ」として有名で、メガネフレーム全国シェア96%の福井県において、眼鏡産業の中心を担っています。あわせて、「データシティ鯖江」として、オープンデータの積極的な活用を進める自治体としても知られています。
(2) 2020年10月から2021年3月まで、全国の協力店で鯖江産のメガネフレームを購入すると、3000円のキャッシュバックが受けられるキャンペーンが開催されています。応募の申込みを LINE に限定することで、鯖江市のLINE公式アカウントと紐付け、市の情報を定期的に発信できるような仕組みを実現しています。
(3) 2.1億円の予算の大半は鯖江市の予算から捻出されています。世の中の変化に応じて企画を立案し、地元の業界と連携して機微に実行することが求められているのだと思います。
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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)
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