#092 中小企業診断士の NPO 支援について
先日、名古屋のNPO支援団体、ボランタリーネイバーズさんが主催する、NPOさんと中小企業診断士とを繋ぐオンラインイベントに参加させて頂きました。
中小企業診断士によるNPO支援 キックオフミーティング in Aichi Nagoya|ボランタリーネイバーズ https://www.vns.or.jp/%e4%b8%ad%e5%b0%8f%e4%bc%81%e6%a5%ad%e8%a8%ba%e6%96%ad%e5%a3%ab%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%ef%bd%8e%ef%bd%90%ef%bd%8f%e6%94%af%e6%8f%b4%e3%80%80%e3%82%ad%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%aa%e3%83%95%e3%83%9f/
今回は、そうしたイベントが開催されるようになった背景と、今後の中小企業診断士による NPO 支援の可能性についてまとめてみたいと思います。
そもそも「NPO」って何?
NPOとは、Non Profit Organization の頭文字を取った略語で、日本語では「民間非営利組織」と訳されます。
非営利なので、事業で得た利益や資産を、社員や役員などの構成員に分配することは認められていません。
ただ、非営利といってもまったくお金をやりとりをしてはいけないこということでは無く、そこで働く職員さんに給料を払ったり、ボランティアで参加してくれる方に交通費を支払うことなどは認められています。
NPO という言葉自体は、どれくらい広くとらえるかによって含まれる団体が変わってくるようなのですが、ここでは最も狭い意味でとらえて、「特定非営利活動推進法(NPO法)」で定められている「NPO法人」について書いていきたいと思います。
NPO法人と株式会社との主な違い
以下、理解しやすくなるように、NPO法人と株式会社との主な違いを挙げてみます。
ちなみに、NPO法人は、現在、日本国内に5万法人超あるそうです。
分野としては、「保険・医療・福祉」「学術・文化・芸術・スポーツ」に関する法人が多いようです。
NPO が抱える問題
上の比較表でもわかる通り、NPOの特徴は「利益よりもミッション・社会的な使命」を優先するところにあると思います。
例え赤字であっても、社会的に必要とされていることであれば、何とかして事業を継続していかなければなりません。
収益を得る手段としては、事業収益の他に、会費や寄付金、助成金などがありますが、これらのお金、必ずしも事業継続に十分な金額があるというわけではありません。
経費削減のための作業の合理化、より効果的なマーケティング、参加する人たちの能力を最大限に発揮させる人事、といった取り組みは当然必要でしょうし、
収益の上がっている事業をより成長させて赤字の事業に回す、プロダクトポートフォリオマネジメント的な経営戦略も必要だと思います。
こうしてみていくと、中小企業に対する経営コンサルティングの知見が、そのまま NPO 法人に対しても活用できるように思えてきます。
NPO と中小企業診断士との距離が近づいた理由
これまで見てきた背景に加えて、近年、NPO法人と中小企業診断士との距離が近づいてきたのは、以下の2つの理由が大きいと思います。
(1) NPO 法人が診断士の実務従事ポイントの対象になった
中小企業診断士は5年ごとに資格の更新を行う必要があり、その更新要件の1つに、「5年間の間に30日以上実務に従事すること」というのがあります。
この、実務従事の対象、それまでは中小企業に限られていましたが、令和元年7月より NPO 法人も対象に含まれることになりました。
中小企業診断士の新規及び更新登録の要件となっている実務従事の対象拡大について
https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/2019/190731kakudai.pdf
これにより、中小企業診断士が NPO 法人の経営支援に関わるメリットが増えたことになります。
(2) NPO 法人も、中小企業を対象とした補助金が使えるようになってきた
「ものづくり補助金」や「持続化補助金」といった、中小企業診断士にはお馴染みの補助金制度の対象が NPO 法人にも広がっており、最近は NPO 法人の採択事例も増えてきているようです。
こうした補助金は、中小企業診断士が対象の企業にヒアリングを行い、申請書の作成をお手伝いし、できた申請書を役所に提出する、というのが定番のパターンです。診断士は申請が通りやすくなるような申請書の書き方のノウハウをたくさん持っています。
今後、NPO 法人がこうした補助金申請を行う場合に、診断士の持っているノウハウが活かせると思います。
「企業内診断士」とは
さて、こうした NPO 支援、特に私のような「企業内診断士」(一般の企業に勤めながら、ボランティアや副業として診断士業務を行う人)にとっての相性がいいように思います。
ちなみに、私のような企業内診断士は、診断士全体の47.3%、人数にして1.2万人くらい存在すると言われています。
企業内診断士の実体調査 - 現状と活躍の可能性について -
https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/honbu/h29/jittaichosa.pdf
企業内診断士にとっての NPO 支援のメリット
企業内診断士が NPO 支援を行うメリットは、大きく以下の2点かと思います。
(1) 報酬が発生しないので副業禁止の会社に勤めていても参加しやすい
前述の通り、企業内診断士であっても資格を更新するためには5年の間に30日の実務従事が必要になるため、何らかの診断実務を実際に行わなければいけません。何も活動しないと資格が失効してしまいます。
しかし、普通に一般の中小企業のコンサルを行ってしまうと、大抵の場合報酬が発生してしまいます。これは、副業禁止の会社に勤めている場合、やっても良いかどうかの判断がグレーなことが多く、躊躇してしまうことも多いです。
しかし、NPO を支援するのであれば、報酬の発生しないボランティアとしての立場での参加が可能になります。
企業内診断士にとっては、ありがたい話かと思います。
(2) 社会に貢献しているという達成感が得られやすい
もともと、中小企業診断士の資格をとろうと思う方は、「自分の知識や経験をもっと世の中を良くすることに活かしたい」という想いをもっている方が多いように感じています。
(逆の言い方をすると、とても能力が高い方ばかりなのに、その能力を自分の会社の中では十分活かし切れていない、とも言えます。)
こうした方にとって、社会的使命の達成が最優先事項である NPO 法人の経営支援に関わることは、自己実現の一環として非常に魅力的であるように思えます。
本格的なスタートは来年あたりから?
さて、私がイベントに参加させて頂いたボタンラリーネイバーズさんでは、来年あたりから NPO 法人に対する診断士による支援の取り組みを本格的に進めていく予定、とのことでした。
私も、良いお話しがあればぜひ積極的に参加していきたいと考えています。
まとめ。
(1) NPOとは、Non Profit Organization の頭文字を取った略語で、日本語では「民間非営利組織」と訳されます。
非営利といってもまったくお金をやりとりをしてはいけないこということでは無く、そこで働く職員さんに給料を払ったり、ボランティアで参加してくれる方に交通費を支払うことなどは認められています。
(2) 令和元年7月より、NPO 法人が中小企業診断士の実務従事ポイントの対象に含まれることになりました。また、最近は、これまで主に中小企業を対象にしていた政府の補助金が、NPO法人でも使えるようになってきています。
(3) 特に一般企業に勤めている企業内診断士にとって、診断士として NPO 法人の経営支援を行うことは、実務従事ポイントの取得のしやすさに加えて、社会に貢献しているという達成感が得られるという利点があると思います。今後、企業内診断士が NPO 法人の支援をおこなうという取り組みが増えていくと予想します。
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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)