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#073 最近話題の「Go To キャンペーン」と「マイクロツーリズム」

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こんにちは。中小企業診断士の多田と申します。

最近ニュースなどでも話題ですが、旅行代金などが割引になる「Go To キャンペーン」がもうすぐスタートします。
コロナによる自粛で冷え込んでしまった観光業などをサポートするために、かなり大きな金額の予算が組まれています。

あまり知られていないのですが、実はこの「Go To キャンペーン」、お得に旅行にいける「Go To Travel キャンペーン」の他にも、いくつかキャンペーンが予定されています。

Go To キャンペーンとは

「Go To キャンペーン」とは、

新型コロナウイルス感染収束後に日本国内の人の流れを創り出し、地域の再活性化につなげる事を目的として、観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業などを対象に、補助金の支出により需要喚起を目指すキャンペーン施策

のことです。

今年4月30日、緊急事態宣言中に開催されていた予算委員会で成立しました。
当時の安倍首相の会見の動画が以下にあります。

令和2年4月30日 令和2年度補正予算成立及び緊急事態宣言の延長についての会見 | 令和2年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202004/30bura.html

以下のリンクは、今年4月に経済産業省が作成した、令和2年度補正予算の事業概要資料です。
この資料の20ページに、「Go To キャンペーン」に関する説明があります。

令和2年度補正予算の事業概要(PR資料)
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei_yosan_pr.pdf

資料によると、Go To キャンペーンは以下の5つの取り組みからなることがわかります。

(1) 観光キャンペーン(Go To Travel キャンペーン(仮称))
(2) 飲食キャンペーン(Go To Eat キャンペーン(仮称))
(3) イベント等キャンペーン(Go To Event キャンペーン(仮称))
(4) 商店街キャンペーン(Go To 商店街キャンペーン(仮称))
(5) 一体的なキャンペーンの周知

この事業の総予算額はなんと1兆6,794億円。かなり大きな金額の予算です。
ちなみに、去年、台風15号・19号などの災害で被災した14都県の観光復興のために実施された「東日本ふっこう割」の予算は24.5億円でした。桁が違います。

(その1) Go To Travel キャンペーン

では、それぞれのキャンペーンについて、どういう割引が受けられるのか見ていきましょう。
まずは一番有名な Go To Travel キャンペーンから。

このキャンペーンは、旅行業者等経由で旅行商品を購入した消費者に対し、代金の1/2相当分のクーポン券 (宿泊割引・クーポン等に加え、地域産品・飲食・ 施設などの利用クーポン等を含む)を付与するというものです。
最大で1人あたり2万円分/泊まで。

もうちょっとわかりやすく書くと、

・補助金額
→ 旅行代金の最大半額、補助金の7割が割引、現地クーポン3割
・条件
→ 1泊あたり2万円、日帰りの場合は1万円
・例: 通常の旅行代金が 40,000円の場合
→ 補助金として 20,000円(旅行代金割引14,000円、クーポン6,000円)がもらえます。

となります。かなりお得ですね。

ちなみに、これらの割引は、このキャンペーンに参加している旅行会社や宿泊予約サイトから申し込まないと駄目らしいので注意して下さい。
今のところ7月下旬から開始予定とのこと。ただし、新規感染者数が増え始めている今の状況で、本当に開始するのかどうかはこれから再議論が行われるのではないかと予想します。

(その2) Go To Eat キャンペーン

2つ目は、飲食業の活性化を目的としたキャンペーン。
このキャンペーンに参加しているオンライン飲食予約サイト経由で飲食店を予約・来店したお客さんに対し、飲食店で使えるポイント(最大1人あたり1,000円分)、もしくは、登録飲食店で使えるプレミアム付食事券の2割相当分の割引等をもらうことができます。

今のところ8月初旬開始予定とのこと。

(その3) Go To Event キャンペーン

チケット会社経由で、イベント・エンターテインメントのチケットを購入した消費者に対し、2割相当分の割引やクーポン等を付与するキャンペーンです。音楽コンサート・スポーツイベント、演劇・伝統芸能、映画館、博物館、美術館、遊園地、展示会、等に適用されます。
8,000円のライブなら最大1,600円分の割引ということになりますね。

現時点(7月13日)では、まだ委託先の公募を行っている段階で、いつから開始するかは決まっていない状況のようです。
個人的には、チケットを買う側へ割引として還元するというよりは、チケット代を2割相当分値上げして、主催者側にたくさんお金がまわるようにして欲しいなと思います。

(その4) Go To 商店街キャンペーン

商店街等への誘客や、商店街等での購買に繋がるイベントなどの取り組みを支援することにより、商店街等による需要喚起を図るキャンペーンです。
1つの商店街あたり最大300万円を上限として支援。
また、商店街等が広域でプロモーションする場合や、観光商品開発等を実施する場合は、最大500万円を上乗せ可能としています。

こちらも、現時点では委託先を公募している最中。今後どうなるかはまだ未定だと思います。

令和2年度「需要喚起キャンペーン事業(Go To 商店街事業)」に係る委託先の募集(企画競争)について
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2020/200701goto.html

観光業の復活は「マイクロツーリズム」から

さて、先週あたり、特に東京都の新規陽性者数が増えてきました。
(以下の図は、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト<https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/>より)

新規陽性者数

このような状況で、本当に Go Toキャンペーン、特に Go To Travel キャンペーンを開始するべきなのかについては賛否両論あろうかと思います。

今、日本がとろうとしている戦術は、新しい生活様式を守ることで、都市全体のロックダウンはせずに、徐々に経済活動を活発にしていくということだろうと思います。
幸い、もともと日本は解雇規制が厳しい(その分景気のいいときの社員への還元も少ないわけですが)こともあり、アメリカなどのように大きな失業者を出さずに済んでいます。
なんとかこのまま、極端に景気を悪化させることなく、観光やエンタメなど「不要不急」と言われた業界のダメージを回復させていくことが大切だと思います。
各業界それぞれにおいて、できるだけコロナを広めないようにすることを第一に、そして同時にお金はきちんと回るように知恵を絞っていかないといけません。

そんな中、今観光業で注目されているのは「マイクロツーリズム」という、大きな移動を伴わない観光の形だそうです。
3密を避けながら、地元の方が近場で過ごす旅のことで、目安として自宅から30分〜1時間程で行けるところで観光や宿泊を行うスタイルのこと。

星野リゾートの「マイクロツーリズム」近所旅行のススメ|星野リゾート https://www.hoshinoresorts.com/sp/microtourism/

たとえば静岡県西部に住んでいる私の場合、浜名湖近辺の舘山寺温泉あたりに1泊して、美味しい料理を食べて帰ってくるという感じでしょうか。

日本の場合、ちょっと調べれば、どの地域にもこうした観光名所はあるように思います。
観光業界においては、補助金や Go To キャンペーンを上手く使って「マイクロツーリズム」でお金を回すのが当面の経営の重要なテーマになってくるでしょう。

まとめ。

(1) 今年4月30日に成立した補正予算で、総額1兆6,794億円の「Go To キャンペーン」予算が成立しました。過去にあまり例を見ない、超大型の補正予算です。

(2) 「Go To キャンペーン」は、観光、飲食、イベント、商店街、の4つの分野に対して、料金の割引を行ったり事業補助金を出すことでそれぞれの業界を活性化していこうという取り組みです。今年7月下旬くらいから徐々にスタートすることが予定されています。

(3) コロナウイルスを広げないことと、経済活動を活性化させることを両立させるのは難しいため、それぞれの業界がこれらジレンマをどうやって解決するか知恵を絞っていかなければいけません。特に観光業においては、いきなり海外旅行や県をまたいだ遠くへの旅行を避け、地元の観光業にお金をおとす「マイクロツーリズム」が当面の経営テーマになるのではないかと思います。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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