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#014 「デザイン思考」ではなく「デザイナー思考」と呼ぼう

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こんにちは。中小企業診断士見習いの多田と申します。

先日、Webにこのような記事が掲載されていました。

デザイン思考とは何か、なぜ必要か 「社内に浸透」わずか5%:日経クロストレンド
https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/18/00097/00002/?P=1

「デザイン思考」は、特に先の見通せない不確実性の高い時代において、自社がどこを目指すべきか見出すのに非常に優れた手法だと思います。
一方で、「デザイン」という言葉に引っ張られて、プロダクトデザインやサービスの質を向上させることである、と誤った解釈をされることも多いです。

私は、こうした誤解を招く原因の一つに、「デザイン思考」という言葉自体のわかりにくさがあると考えています。

そもそも「デザイン思考」とは何か

上記の日経XTRENDの記事では、デザイン思考について以下のように説明されています。

「イノベーションへの期待が高まるにつれ、デザイン思考を導入する企業が日本でも相次いだ」
「デザイン思考は優秀なデザイナーやクリエイターの思考法を学び、新たな発想につなげることができるとして、多くのビジネスパーソンから賛同を得たはずだった。」

すなわち、デザイン思考とは、
・イノベーションを起こすことを主な目的としている
・優秀なデザイナーやクリエイターの思考法を参考にしている

ということが言えると思います。

ちなみに、この note の第1回、

#001 「イノベーションセンター」はなぜうまくいかないのか
https://note.mu/yukio_tada/n/nd65f77150c09

でも書いたとおり、イノベーションについて語るときは、そのイノベーションが「破壊的イノベーション」「継続的イノベーション」「効率化イノベーション」のどれかをきちんと認識した上で議論することが重要です。
なぜなら、これら3つのイノベーションは、それぞれ必要とされる施策やマインドセットがすべて異なるからです。

「デザイン思考」の4つのマインドセット

では、「デザイン思考」が重要視しているマインドセットとは、どういうものでしょうか?
ここに関しては、富士通総研さんの以下の記事が大変参考になります。

「デザイン思考」がうまくいかないのはなぜか?―“システム×デザイン”思考のすすめ― : 富士通総研 https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2018/2018-9-2.html

この記事では、IDEO の例をあげて以下の4つのマインドセットがデザイン思考である、としています。

(1) 常に人間を意識して考える(Human-Centered)
(2) 多様性を生かすことによる恩恵(Collaborative)
(3) どのような状況でも自分たちはできるという信念(Optimistic)
(4) 早く、たくさん失敗して経験から学ぶ(Experimental)

これらのマインドセットに共通するのは、答えは常に自分の外にあるから、外部とあらゆる手段を使って観察・対話することを重視する、という心構えです。

ちょっと話が抽象的になってきましたので、逆の例を考えてみるとわかりやすいかもしれません。
例えば、

・使う人の事を考えずに、自社の持っている技術だけを積み上げて答えに近づこうとする
・同質性のあるメンバーが集まり、これまでの限られた経験の中から答えを出そうとする
・できない理由や言い訳が先行する
・内部で議論を繰り返すばかりで、外部とコミュニケーションを取ろうとしない

といったことは、「デザイン思考的でないマインドセット」といえると思います。

「デザイン思考」がわかりにくい理由

このように見てくると、デザイン思考というのは、「考え方」や「心構え」の話であって、決してプロダクトデザインの良し悪しではないことがおわかり頂けると思います。
たまに「商品やサービスの魅力価値を高める活動を通して企業の価値を高める」という文脈で紹介されていることがあります。デザイン思考のプロセスの一つとして顧客観察を行った結果、プロダクトのデザインやUXそのものがよくなることはありますが、必ずしもそこだけを目指しているわけではありません。

このような混乱を招いてしまう理由の一つとして、「デザイン思考」という言葉そのもののわかりにくさ、があるのではないかと思っています。「デザイン」も「思考」もそれぞれ抽象的な言葉ですので、どうしても人によって捉え方が変わってきてしまいます。そして、それが2つ繋がってしまっているため、更にわかりにくくなってしまっている。

「デザイナー思考」と呼ぼう

抽象的な言葉が原因でわかりにくいのであれば、より具体的な言葉で表現してあげれば、もっとわかりやすい言葉になるはずです。
ということで、ここでは、「デザイナー思考」という言葉を提案したいと思います。

「デザイナー」という言葉は、「デザイン」よりも具体的なイメージを持ちやすいと思います。人によっては、佐藤可士和さんとかジョナサン・アイブのような有名なデザイナーの名前を思い浮かべるかもしれませんし、Webサイトの構築を行った経験があれば、一緒に仕事をしたWebデザイナーの顔を思い浮かべるでしょう。
ああいう人たちが、お客さんに対してよりすぐれたデザインを提供するためにどのような思考プロセスやデザインプロセスを取っているかを想像し、それと同じ「やり方」を自分の普段の仕事に適用することを考える。このやり方がデザイン思考(デザイナー思考)である、と理解すれば、腹落ちしやすくなるように思います。

このように、「デザイン思考」を「デザイナー思考」と言い替えることで、より人の「行動」にフォーカスした言葉になり、理解しやすくなるように思うのですが、いかがでしょうか?

おまけ

デザイン思考型(当時はデザインアプローチ、と呼んでいました)のプロジェクトとして、私が過去に関わらせて頂いた内容が以下の Web ページにて紹介されています。
自社の技術から積み上げていくのではなく、まずあるべき理想の姿を描いた上で、様々な顧客観察や実証実験を行いながら、抽象化と具体化を繰り返すことで現実的な解を見つけていく、というデザインアプローチの手法がきれいにはまった事例になります。
もしよろしければこちらもご覧下さい。

ヤマハと富士通のデザインアプローチによる IoTビジネスの共創 : FUJITSU JOURNAL(富士通ジャーナル)
https://journal.jp.fujitsu.com/2017/06/13/01/

まとめ。

(1)「デザイン思考」とは、答えが常に自分の外にあることを意識し、外部との対話を重視することで答えを導き出すというマインドセットの事です。プロダクトデザインを良くする、という作業とは直接は関係ありません。
(2) 言い替えるなら、「デザイン思考」とは、優秀なデザイナーの思考プロセスやデザインプロセスを自分の業務にも取り入れていこう、ということになります。
(3) 「デザイン思考」という言葉がわかりにくいのは、「デザイン」という言葉の抽象性の高さが原因だと思います。「デザイナー思考」と言い替えることで、より人の行動にフォーカスした言葉になり、理解しやすくなるのではないでしょうか。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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