僕がママのところに来た理由は。17
十七 新しいお家
これから、ママと二人で暮らすお家。
初めて嗅ぐ匂い。いろんな匂いが混ざってる。ママの荷物の匂い、僕のサークルの匂い。このお家の新しい畳の匂い、前に住んでいた人の匂い・・・。
部屋の中には、段ボールがいっぱいある。
ママは僕をサークルに入れると、段ボールの片づけをしている。とりあえず、今夜寝られるように布団を敷くスペースを作らなきゃ。僕もママも眠れない。
このお部屋の探検は明日にして、とりあえずママの邪魔にならないようにおとなしくしておこう。
次の朝。
ママはいつもと同じ時間にお仕事に行った。僕は新しいお家でお留守番だ。ゆっくり探検しよう。
前のお家から持ってきたものは、僕のサークルとテーブルと椅子。ママの洋服を入れる小さいロッカーとパソコンの机。あと、ママのピアノ。本当に少しの荷物だけど、少しだけ前のお家の匂いがするから安心だ。
夕方、ママがお仕事から帰って来た。
「ハピ、お留守番ありがとう。」
ママは、服を着替えてから僕とお散歩に行く。
新しいお家の周りは、知らない道、知らない景色、知らない匂いがして、知らないワンコがお散歩してる。
僕は、知らない世界にドキドキしたけど、なんだかとても楽しい。
お散歩から帰ると、外はすっかり暗くなった。新しいお家では、いろんな音が聞こえるんだ。
お隣りに住んでいる人の話し声もよく聞こえる。
「ハピ、お隣の人、よく話すね。電話してるみたいだね。それから、歌も歌ってる。いつまで歌うんだろうね・・・」
ママも僕も、こんなにお隣りの音が聞こえるのは初めてでびっくりしたんだ。
「安い家賃のお家って、こんなんだね。その点、前のお家は良かったね。
でも、何も誰にも気を使わないで、ゆっくりできるから、今のお家もいいよね。
ハピと一緒に寝られるなんて、ママはとっても嬉しいわ。」
この家に来て、僕は産まれて初めて、ママと一緒のお布団で寝たんだ。
ママにくっついて寝ると、温かくてフワッとして、とても安心するんだ。
「ママも、ハピと一緒に寝られてとっても嬉しいわ。もっと早く、一緒に寝れば良かったね。」
これからは、毎日ママと一緒に寝るんだ。
少しずつ荷物が片付いて、段ボールが減っていった。ママも僕も、新しいお家にすこしずつ慣れていった。けど、まだまだ自分のお家っていう感じはしないね。ママ。
「そうね。ママは、お仕事からの帰り、車から降りてこの古い階段を上りながら、どうしてこんな所にいるんだろう?これは、本当にママが住みたかったお家なのかな?って、不思議な気持ちになる時があるのよ。本当にここなのか?本当にこれなのか?って。
でもね、誰にも何も言われないで、好きなように生活出来るって幸せだよね。ハピといつでも遊べるし。」
朝ごはんも夜ご飯も、ママと一緒。お散歩も寝るのもママと一緒。僕は今のお家に来てとても幸せだ。
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