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織田 由紀夫
2024年6月6日 20:52
1気が付くと私は、ここに居た。ひどく頭が痛い。太陽も無いのに、燃える様に熱い。月も無いのに、凍える様に寒い。私は、今何処に居るのだろう。辺りを見渡しても、何も見つからない。ただ、うっすらと一面にモスグリーンが広がっているだけだ。例えるなら、留置場の様な色彩だった。私は、昔見た映画を思い出した。看守と囚人が仲良くなる映画だ。私の記憶が正しければ確か、あれはハッピ
2024年6月11日 02:50
1「まっ、私が居なくても世界は回るわな」ケイコはこの日、8本目のタバコにキスをしながら、独り言を呟いた。その日丁度、雇用契約が切れる日だった。キャメルの14milli gramはケイコの口腔を媒介し、肺の中に充填されていく。子供の時に飛ばした風船の様に、瞬く間に絶望で一杯になる。眠れない夜は決まって、東京の街を練り歩く。今日のケイコは池袋に来ていた。東武から程よい所の赤提灯で一