労働移動と国内の所得格差

Maria F. Hoen, Simen Markussen, Knut Røed, "Immigration and economic mobility" Journal of Population Economics
https://doi.org/10.1007/s00148-021-00851-4
Received: 27 May 2020 / Accepted: 16 April 2021
© The Author(s) 2021

 国外からの移民が、国内の所得格差にどのような影響を及ぼすのだろうか。この論文は、ノルウェーのデータを用いて、その影響を分析したものである。結論は簡単である。すなわち、「低所得国からの移民は世代間移動を低下させ、したがって社会的格差を拡大させるのに対し、高所得国からの移民は平準化させる」というものである。この結論は直観的に十分に明らかである。

 所得格差が縮小するのは、低所得層の所得が高所得層よりも相対的に早く増えるからである。ところが国外から低賃金の未熟練労働者が入ってくると、未熟練労働の供給が過剰になり、その賃金はいつまで経っても上昇しない。つまり、格差は維持されたままである。

 それに対して、先進国からの労働の流入は高所得層への参入と考えられる。つまり、高所得層のタイプの労働が供給過剰になり、その所得水準を引き下げ、所得格差は縮小する。

 この結論は、クズネッツの逆U字仮説で十分に検討されていた。それは日本の所得格差の変化によっても跡付けることができる。この証明は論文の形にまとめて発表したいと考えている。


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