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わたしがくるりを好きな理由ーtiny desk concerts JAPANくるりー
急に寒くなってきました。
外気温に心が追いついてないせいで、ポツンと取り残されている衣替え。
恨めしそうにぶら下がるペラペラのブラウスたち。ごめん。
そうこうしているうち、あと2か月で40歳になる私。
日々の忙しい仕事だとか、きなくさい世界情勢だとか、気がかりな家族の体調問題だとか、外出についてこなくなった子どもの思春期(これは成長。喜ばしい面もしっかり感じてます)だとか。
頭を占領しているのは、ほんの5ミリ目の前の現実的なあれやこれや。
衣替えがどうも優先順位の第1位にやってきてくれないから仕方ない。
広島に生まれ育ち原爆の悲惨さを身近に感じてきたからか、じいちゃんのシベリア抑留体験の話を聞いて育ったからか、小学生の時にはだしのゲンを読破しているからか。
最近のニュースを目にするたびに暗い気持ちになります。
全世界、せーので命や人の尊厳を守るにはどうすればよいの。
この夏、姉家族が帰省したので一緒に宮島に行き平和公園へも足を延ばし。
せっかく来たのだからと、何十年ぶりに原爆資料館にも入ることに。
目をそむけたくなる惨状の断片。
被爆した子どもたちの日記やその後の人生の記録も特別展示されていて、それはもう改めて胸に迫りました。
だけどこれは、今まさに、リアルタイムで起きていること。
どんな時も、平穏な暮らしや命・人間性が戦争によって奪われてしまうことのむごたらしさを忘れたくありません。
いつもの悪い癖で前置きが長くなりました。
そんな物憂い物思いにふける秋の入り口。
日頃ゆっくり音楽を聴けるのは通勤の道のりくらい。
それも最近はコテンラジオばかり聞いていました(歴史に学ぶのはとても大事)。
家族のドライブでは娘が好きなMrs. GREEN APPLEを聴くことも増えたし。
藤井風をエンドレスリピートしていた時期も長かった。
ハンバートハンバートは変わらず心に染み入るわけで。
だからというわけではないけど、なんとなく、ここ最近、くるりを聴いていなかったのだけれども。
昨日くるりがNHKのtiny desk concerts Japanに出演していました。
控えめに言って・・・超絶最高でした。
もしまだ観ていない人がいたら、どんな手を使っても(多分NHKオンデマンドという手や見逃し配信という手があるよう)観てほしい。聴いてほしい。
本当に、すごいぞくるり、だから。
ここから内容に番組のセットリストを含みます。
楽しみにしている人はご一読を止めていただき、先に番組をご覧いただきたいと思います。では、ネタバレ含んで感想を一気に書いていきます。
最初の曲『La Palummella』は、この10月に出たばかりの新曲だったようで、存じ上げませんでした。
でも、フルート(イタリアのすごいアーティストさんだった!ダニエレ・セーペ氏)とマッチしていてとても素敵だった。
久々に聴いた岸田氏の声は、ぐっと円熟みが増したような気がしました。
若い頃の岸田氏の声は、味がありつつも少しとがっていたと思う。
でもさ。変わらぬこの味が、いいのだよ。
個人的には、ホーミーを思わせる振動と深みに何とも言えない中毒性があるのだろうとにらんでます。
次の曲『ブレーメン』で心が震え、続けざまに『奇跡』で。
もうね、涙腺が崩壊しました。
岸田氏の言葉って、本当にささやかな幸せを歌ってる。
いつまでもそのままで 泣いたり笑ったりできるように
曇りがちなその空を 一面晴れ間にできるように
来年も会いましょう。そういう距離感。でもそれこそが大切なの。
うっかり捨て置かれてしまいそうなくらい、小さくて、弱くて、不格好な幸せ。
大事にできてるかい?と問いかけてくれるし、それでいいんだよって肩をさすってくれる。そういう歌なんだなと改めて。
そしてこの2曲は、言うまでもなくバイオリン・ヴィオラ・チェロとの相性が良いのなんのって・・・筆舌に尽くしがたし。
ギターも泣いてる時があるけど、弦楽器にしか発せられない切なさがあると思う。私は何も弾けないけれど。
何年後になるかわからないけど、いつか私もチェロを習いたい。
おばあちゃんが弾いてるチェロってかっこよくないですか!
次の曲、『Time』も実はちゃんと聴いたことなかった。
調べてみるとRemember meのカップリング曲だったのかな。2013年発売なんですね。
『言葉はさんかく こころは四角』を聴いた時と似たような、無条件の愛おしさと切なさが広がったのは、私だけでしょうか。
いつもそこにあるはずだけど、はかない「今」を感じさせる天才。
『琥珀色の街、上海蟹の朝』もおしゃれなメロディライン、リリック。ボイスパーカッションの人もカッコよかった。
バンドメンバーみなさんがひしめき合いつつ奏でる豊かな音楽に酔いしれ、あっという間にラストの曲になってしまいました。
最後は『ばらの花』。
言わずもがなの、大名曲ですが、2024年に聴く『あいづち打つよ 君の弱さを探すために』は、”やばの極み”であります。
愛のばら掲げて 遠回りして また転んで
相づち打つよ 君の弱さを探すために
安心な僕らは旅に出ようぜ
思い切り泣いたり 笑ったりしようぜ
僕らお互い弱虫過ぎて
踏み込めないまま朝を迎える
スタンディングオベーション!「最高」の一言。
高校生の時に聴いた「君の弱さ」には、ちょっと「僕」のずるさが見え隠れしたような気がしたんですけど。
40歳を目前にして聴いた「君の弱さ」は、まぎれもなく「僕の弱さ」でもあるんだなって。
「分かり合いたい」そう直感的に響きました。
アウトロのバイオリン・ヴィオラ・チェロが『Baby I Love You』のメロディアレンジだったのがまた泣かせました・・・。
声が聴きたいな 名前を呼んでよ
時間が止まって このままがいいよ
いつもはにかんで気にしているけれど
岸田氏がMCで「少人数で来ようと思ったんですが、友達が多くて」と。
いつでもオープンで柔軟に変わり続けてきたくるりにふさわしいコンサート。
所狭しとぎゅうぎゅうになって奏でるのは、ロック・ポップス・クラシック・マルチジャンル融合で、唯一無二の「くるり」という音楽でした。
感無量。この30分間の満足感をたくさんの人に見てほしい。
なんとも贅沢な音楽の時間が、私の忙しくてこんがらがった頭の中をほぐしてくれました。
音楽聞いて涙を流せるって、なかなかないこと。
やっぱり、すごいぞくるり、でした。
それにしてもベース・佐藤さん、いつまで経っても若くて。
佐藤さんの周りの空気だけ時が止まっているはず。
くるりと出会ったとき高校生だった私が、いつの間にか佐藤さんを爆速で追い越していった感覚さえあります。
というわけで。ありがとう、tiny desk concerts JAPANくるり。