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好き以外の感情が死ぬ時

戦時中のような緊迫感が日常に溢れる中、
私は幸せの絶頂にいる。
今年に入ってから急に制作への情熱が溢れ
スタートダッシュを決めるボルト選手のように
作品のアイディアが閃き

これまでなかなか動かなかった手が
ウソみたいに動き出し
あらゆる可能性を探って
実験的なことを試したり、
誰かの言葉に惑わされなくなった。

これまでは芸術家というポジションに戸惑いつつも
その職業に固執していたのかもしれない

私のキャリアは大学4年生からスタートした
東京ミッドタウンアワードで入賞したことによって
あらゆるメディアが注目していただき
何もせずとも作品が売れ、仕事が来た

最初は嬉しかったがこれが足かせとなってしまった
それは夜景作品以外描いてはいけないのではないかという呪縛だった。

当然そんなことはない
でもそれ以外の作品を仕事で描こうとすると
依頼してきた方は夜景を望んでいるので
夜景を描かざるを得ない。
またプライベートで妊娠出産があったために
そのほかの題材で勝負する余裕もなく
求められることに応じるだけの日々が当たり前になってしまった

苦しかった。
本当はこれがしたいあれがしたい
でも自分はまだまだ若手だし
あれもこれもよりも地盤を固めることが大切なんだ
そうやって我慢してきた数年間だった。

しかし我慢すればするほど、作品を作ること自体が苦しくなってしまった。
夜景を見るのも嫌になり
アトリエに入る頻度が減り、多くの時間をリビングで過ごし
アートのことを忘れるかのように編み物に熱中した

なぜ今その呪縛から解放されたのかはっきりとした理由はわからないが
両親との関係に一旦区切りをつけ
子育ても少し余裕ができ
自分と向き合う時間がようやく出来たからかもしれない
ゆえに今年から始めたnoteの更新は
自己内省として本当に役に立っている(不定期更新がすごいけど)


作品を描く時
好き以外の感情が死ぬ
自分の中から湧き上がる包み込むような愛が手を走らせる

癒したい、愛情を与えたい、幸せになってほしい

ただこれらのことを祈りながら描く
おそらくこれがこの世界で私ができる唯一のことなのだと思う
時に猛烈に愚直だと思い自分の行為に反発してしまう
でもこれが私なんだ、ということを
手放しで祝福してみたら
夜景を心から愛せるようになった


しかしまだ私は模索している。
今度は、絵のことから離れると
好きだけの感情が死ぬようになってしまった。

子供がいようと夫がいようとご飯が美味かろうと
幸福感のシナプスが絶たれる
麻痺させるために酒やタバコに溺れそうになる
もしかしてこれが芸術家のカルマなのかしら

ふとチャールズブコウスキーが脳裏をよぎって冷やついた
ろくな死に方しないだろうなと


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