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読んだことのない本の感想を書きたい

 以前アマゾンのレビューで、「この本はまだ読んでいないのだが」という言葉から始まるレビューをみたことがある。そのときは読んでもいない本のレビューをこんな大勢の人が見に来るアマゾンに書き込むなんて一体どんな神経の人だろうと思った。その思いはいまでも変わっていないけれど、そのレビュワーはその作者の今までの作品の傾向から今回もおそらくこんな内容であろうと決めつけ、そうでなければ是非新境地を見せてほしいものだというような締めで星一つをつけていた。世の中いろんな人がいるなと感心した。
 食べたこともない料理をさも食べたことがあるように書く。訪れたことのない場所をさも訪れたかのように書く。創作ってそういうものだから、ある意味嘘をついていることと同じだよねというような話を友人としたことがあった。でも創作はこれは作り話であるという前提があるから嘘ではない。ノンフィクションだと謳って架空のインタビューをでっち上げたりしたらそれは嘘だと思う。嘘というか捏造というか。
 じゃあ読んだことのない本の感想文を書くというのはどうなのだろう。まだ読んでいないという前置きがあれば嘘にはならないはず。前置きも無くさも読んだかのようにペラペラと誰かが書いたコメントを適当に咀嚼して書くのはルール違反だろうと思うけれど。
 で、読んだことのない本の感想文を適当に書いたら面白いだろうかと思って、まだ読んでいない「成瀬は天下をとりに行く」の感想を書こうと思って書き始めてやめた。真面目な(真っ当な)人から作品を冒涜していると言われるかもしれないと思ったからだ。
 でも十年以上前に2ch(たしかなんJ)でまだ観たことのない映画の感想を書こうというスレがあったような記憶がある。スレ民みんなが寄ってたかっていい加減で適当な感想を出し合っていく。するとなんとも奇妙な、観たこともない奴らが適当につくった、例えばミッションインポッシブルがうっすらと浮かび上がってくる。それが滅法面白かった。だから、読んでもない本の感想文を書く企画、誰かやらないかなって思っている今日この頃である。私はミルコさんの教え通り、やらないかい?と言うけど自分では動かない。って一体なんのはなしですか。