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変なバイト①

 それは大学生の時のことだった。まだ二十歳になっていなかった斎藤は友人から、ホテルやリゾート施設のプールを貸し切って開かれる、リッチなオジサマ達が集まるパーティのコンパニオンのアルバイトをしないかと誘われた。

 夜職のバイトをしていた友人からの誘いだった。プールのイベントだから水着にならなければいけないが、接客はしないしおまけに拘束時間も短い。そのわりに高給だという。

 斎藤は美人でもなんでもないただの量産型女子大生だったから、自分がコンパニオンなどというアルバイトに縁があるなんて思ってもみなかった。それにプールサイドで水着になってする仕事というものが想像できなかった。おまけに少し怪しい感じもする。

 接客はないと言えどもコンパニオンなどという仕事が自分に務まるとも思えなかった。なにしろ水着になるといっても決して斎藤はセクシーバディの持ち主などではない。むしろ幼児体型である。でもこれはこれで結構な需要があったりもするのだが、それはさておき。

 そして、そんな具合に悩む斎藤に友人が告げた。

 「日給やねんけど、拘束二時間で◯万円」

 斎藤はギャラに目が眩んだ。

 アカン、そんな仕事あぶないわって思って断るひとも多いのではなかろうか。

 だが、きちんとしたイベントの企画会社が仕切っていること、お店のママが間に入っているということで友人は信用している様子である。それにお店のお客さんであるそのイベントの企画会社の社長のこともよく知っているという。

 正直、斎藤には裕福なオジサマが集まるパーティってどんな感じなんだろうという好奇心もあった。それに、中学校からの付き合いである友人を信じようと思った。この友人にはちょっと只者ではない感がある。おそらくあぶない仕事ではないだろう。

 そのパーティはある実業家の誕生日パーティであった。IT長者みたいな類の、ようはなり上がり者の見本市みたいなものであった。

 そのパーティの余興のコンパニオンを斎藤がやるというのだが、その余興とは、高額商品のかかったくじを参加者全員が順番に引いて、外れた人が水着の上に白いTシャツ姿の斎藤を小さな水鉄砲で撃つというものであった。つまり景品を外した憂さ晴らしの的になるということだと斎藤は判断した。

 パーティ会場のプールには三十人ほどの紳士と淑女の面々が集まっていた。もう少し多かったかもしれないが斎藤は十以上の数は数えてもすぐに忘れてしまうのである。

 そしてオジサマ方はみな三十代や四十代ぐらいに見える。それに気のせいか誰も彼も胡散臭さ満点である。

 そしてついに斎藤の出番がやってきた。いよいよ余興がスタートである。招待客が並んでくじを引いて高額商品をゲットするのだが、残念賞が水鉄砲の的になる斎藤である。

 ところがこれが大盛況。

 くじを外した方が盛り上がって興奮しまくるオジサマ達。 えっ!そんなに楽しいんですか?と驚く斎藤。

 水鉄砲で人を撃つのは楽しい。ただそれだけだと思っていた斎藤だったが、次第になんか違うということに気づく。

 オジサマのちっせぇ水鉄砲からピュッと水が出て、斎藤の身体にかかる。水が斎藤の着ている白Tシャツを濡らす。白だから水に透けて下に着ている水着や肌が透けて見える。

 濡れたTシャツが濡れた肌や水着に張り付いて、隠されている場所が半分だけ透けて露わになっていく。

 それをみてオジサマ興奮。つまりエロスなんである。なんだか裸よりもえっちぃ気がする。

 賞品を当てた人よりも外した人のほうがよろこんではしゃぐというカオス。恥ずかしがる斎藤を見てオジサマ余計に興奮。

 そしてくじの余興はあっという間に終了。

 いやー、きみ凄くよかったよー、楽しかったよありがとう、と笑顔で言ってくれたオジサマが何人もいたから、斎藤も嬉しかった。セクハラまがいなことを言ったりしようとしたりする人は一人もいなかった。

 ともかく、喜びや感動や感謝をお客さんが直接伝えてくれる仕事ってあまりないと思ったので、このバイトはやってよかったかもしれないと斎藤は思った。

 パートナーがいる男性女性の皆様方は水着の上に着た白Tシャツを着てパートナーの方と水鉄砲を撃ち合いながらじゃれ合ってみてください。是非おすすめです。


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