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自作の掌編・短編

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自作の掌編・短編
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#ショートショート

シンシア【掌編】

 うだるような暑さだ。フレッドの視界の先に陽炎が揺らいでいた。その陽炎の向こう側には蒸留…

椋鳥

 金沢に着きホテルにチェックインした頃には、街はもう薄い藍色の闇の中に沈みこもうとしてい…

コニシさん、熱を測ってあげる【掌編】

 おもしろいカレー屋があるんですとミルコ係長が言った。部下の鳩尾くんもそのカレー屋に行っ…

ねえ、口元についた米粒とってあげる【掌編】

 おもしろい定食屋があるんだよといつもダンディな小西課長とミルコ係長が盛り上がっているの…

ゆったんのミルクスタンド【掌編】

 おもしろいカフェがあるんだよとパンダのような愛嬌があるオジサン上司が言った。課長のコニ…

夜が明けるのをまっている【掌編】

 初夏の訪れを感じ始めたころ、久しぶりに会う友人と食事にいった。  鴨川の向こう側に見え…

龍は本当にいるんだよ【掌編】

 みるみるうちに黒い雲で空が覆われ、まだ昼過ぎだというのに夜のような闇が迫っていた。生ぬるい風がわたしの頬を撫でて髪の毛を揺らした。いまにも雨が降り出しそうな空模様だった。  「急ごう」  鄭強が言った。そう言うや否や、鄭強が私の手を握った。それはとても自然な動きだったから、私は鄭強に手を握られたことに気づく暇もなかった。  狭い路地裏を小走りで進む。道端の露店は店じまいを始めている。  角を曲がったところで急に目の前の視界が開けた。  空が映画館のスクリーンのよう