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地方国公立大学の再生へ どうすればいい? 将来的な定員割れの回避に希望あるか?


我が国における地方国公立大学の現状

国立大学が法人化されてから20年が経過しました

当初は教育や研究の活性化を目的として行財政改革が行われましたが、
残念ながら多くの大学で教育・研究環境が悪化しました。

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THE「アジア大学ランキング2024」
1位「清華大学」中国
2位「北京大学」中国
3位「シンガポール国立大学」シンガポール
4位「南洋理工大学」シンガポール
5位「東京大学」日本
・・・
13位「京都大学」
20位「東北大学」
28位「大阪大学」
29位「東京工業大学」
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出典:

東大は5位であり、日本のアジアにおける大学の地位は低下しています。

それゆえ現状は理想像からかけ離れており、
日本の研究力は低下し、現場は閉塞感に満ちています。

だからこそこの間の失敗を検証し、見直しの機会にすることが必要です。

法人化の影響と現状評価

朝日新聞の調査では、国立大学の全学長のうち、
その約7割が悪化したと評価しました。

経営や人事の自由化には一定の評価があるものの、
運営費交付金の減少と競争的研究費への依存が大きな問題として
指摘されています。

運営費交付金の推移は図表1のとおりである。2004 年度の国立大学法人化以降、減少傾向にあり、近年はほぼ横ばいである。金額としては、制度創設当初(2004 年度:1兆 2,415 億円)に比べ、約1割減少している。

なお、この背景としては、国が、法人化前後から、「選択と集中」と呼ばれる競争政策を 導入してきたことが挙げられる。「選択と集中」は、効率的に研究成果を引き出すことを目的に、基盤的経費である運営費交付金を削減し、代わりに、研究者が応募・審査を経 て獲得する競争的資金(例:科研費、補助金)を手厚くする政策である。

出典: 参議院常任委員会調査室・特別調査室  2019. 6 国立大学法人運営費交付金の行方 ― 「評価に基づく配分」をめぐって ―

これにより、人件費の抑制が行われ、多くの教員が任期付き雇用となり、
本来の研究者の職務である研究時間の確保が難しくなっています。

特に若手研究者が影響を受けており、
将来の学問の発展に重大な障害となる可能性があります。

さらに、競争的資金の多くが短期的な事業に焦点を当てているため、
研究者たちは安易に成果を得やすい研究に流れやすくなっています。

【対策案】
・長期的な投資のできるファンドやファンドの拡充
・学生ボランティアに対する一部賞与と雇用の保障拡充
・若手研究者とディープテックスタートアップの協業

この結果、申請書類の作成に時間を取られ、
本来の研究に費やす時間が減少していることが指摘されています。

なぜ雑務を研究者に押し付ける文化が生まれたのか?
検証は必須でしょう。

これにより、研究の質が低下し、
注目度の高い論文数が減少している現状が生まれています。


研究力低下の現状

研究環境の悪化は明確に数値で現れています。
注目度の高い論文数は2004年の4位から現在はG7最下位にまで落ち込みました。

過度な競争が本来の学問に注ぐべきエネルギーを削いでいるといえます。

この政策の失敗を国は直視する必要があります。

AERAの記事を読んでみましょう。

「学生が何を学びたいかではなく、とにかく大学運営の財源を確保するために国からの予算が取れそうな学部再編計画を作成して提出するようなことが、全国の国立大で頻繁に行われている」

 と指摘。山口教授自身の教育研究費もこの20年で3分の1になり、今年度はわずか十数万円だという。

「学会に研究費で行くのはあきらめました。大学全体にお金がなくて、夏場はエアコンを28度に設定し、さらに使用を制限するなど涙ぐましい努力をして、なんとか運営している状態です」(山口教授)

出典:2023/10/22 AERA 地方国公立大、深刻な財政難に直面 教育研究費20年で3分の1になった教授「大学全体にお金がない」

また、学長たちのアンケートでは、教職員の意欲の低下も指摘されており、
現場のモチベーションの維持が大きな課題となっています。

私立大の定員割れ、国公立に波及させないには?

私立大学の半数以上が定員割れを起こしており、
特に地方の小規模大学が厳しい状況にあります。

地方の衰退は地域全体の衰退に直結するため、
地方私立大学の再生も重要な課題です。

・特定地方大学(学部指定)における奨学金返済の免除
・地方の若者居住者の支援拡充
・編入及び再入学者の枠拡充

特に地方の小規模大学では、定員充足率が低く、
92.62%にとどまっています

需要不足は否めません。

このような状況は、地方の学生が大都市圏の大学に流れる傾向を強めており、
地方の教育機関の存続に重大な影響を及ぼしています。

国公立大学の経済的メリット

国公立大学への進学は経済的な負担を軽減する大きなメリットがあります

私立大学の学費は約450万円、生活費を含めると1000万円近くになりますが、
国立大学の学費は約250万円、公立大学では約260万円と大幅に低いです。

【年間の平均学費・目安】
私立大学(文系):約400万円
私立大学(理系):約550万円
国立大学:約250万円
公立大学:約260万円

さらに、地元の国公立大学に通うことで、
賃料を抑えられます。

これは、地方の学生にとって大きな魅力であり、
経済的な負担を軽減するだけでなく、地元での就職にも有利な条件となります。

地元での就職と大都市圏での就職

地方国公立大学出身者は地元での就職に有利ですが、
東京などの大都市圏では情報の非対称性から不利になることがあります。

地元企業はその地域の国公立大学出身者を積極的に採用するため、
地元での就職は競争力が高いですが、
大都市圏での就職活動には情報の面で課題があります。

・地方国公立大の学外地域での就職状況の改善
・地方における雇用の拡充と外資工場の誘致

研究力の再評価

文部科学省が公表した専門分野ごとの科研費採択数は、
大学の研究力を客観的に評価する新たな指標となっています。

科研費はわが国最大の競争的資金であり、
その採択数は大学の実力を示す重要な指標
です。

地方国立大学にも多くの「宝の山」が存在し、
これらを活用することが地方創生の鍵となります

地方国公立大学の再生に向けて

政府は地方国公立大学の再生に向けて、
交付金削減による財政難を改善し、
少子化の影響を受ける大学に対しても支援を強化
する必要があります。

そして地方の貴重な教育・研究拠点が取り返しのつかない状況に陥る前に、
特定の首都圏の大学に偏った政策の見直しを早急に行うことが求められています。

また、大学自体も地域社会との連携を強化し、
地域のニーズに応じた教育プログラムや研究活動を推進することが重要です。

地方国公立大学は、地域社会の中核として重要な役割を果たしています。

地域の課題に対する研究や、地域経済の活性化に寄与する人材の育成など、
地方大学が果たすべき役割は多岐にわたります

このため、地方大学への支援を強化し、
地域と共に成長する大学を目指すことが必要です。


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