カナダで泣きながらお寿司とアイスを食べた18歳の夏
はるか昔、短大生の頃。カナダのバンクーバーで、語学研修プログラムに参加しながら、3週間ホームステイをしました。
初めての海外でと~っても楽しみだったのですが、「感受性が強く内向的な私が英語と仲良くなれた7つの理由」メルマガに書いた通り、日本人だけの英語クラスもアクティビティも、全然楽しめませんでした…。
ある日、英語クラスが終わってから、一人でダウンタウンの日本食レストランに行ったんです。数日前にクラスメイトと行って美味しかったお店で、お値段もリーズナブル。あちらの食事があまり口に合わなくて、天丼とかお寿司とか、和食が恋しかった!
一人だったせいか、アジア系カナダ人の店長さんにカウンター席を案内されると、目の前には日本人の板前さんが。父親の年くらいの、愛想良さげな方でした。
久々の和食にウキウキの私は
「こんにちは。夏休みで英語を学びに来てるんですけど…カナダはまだ〇日目で…。日本食が食べたくて来ました」
思わずご挨拶。
「へぇ、留学生ってことですか?どこの大学?英語の勉強なら、最低でも4年くらいは留学するんですよね?まさか1年とか半年じゃないですよね」
笑顔でまくしたてられました。
海外で英語を学びに…といっても、1年くらいの交換留学から、現地の大学に入学するものまで、色々あります。そして当時バンクーバーは、1か月程度の短期留学で日本から来る学生がものすごく多かったんですね。特に夏休みは。現地在住の板前さんなら、それも分かっているはず。その上での発言だったと思います。
口ごもる私に、カウンターに乗り出すようにして
「あっ、英語の勉強というからには大学院かな。まさか短期留学なんかじゃないですよね?」
ニコニコしながら、言葉は丁寧だったけれど、明らかな嫌味。私は恥ずかしさと悔しさでカーッとなった。
「食事は結構です。帰ります」
オーダーもせず席を立ちました。
とにかく早くレストランを出たかったけれど、入口でさっきの店長さんに引き止められました。優しく声をかけられ、私は思わず泣きじゃくりながら
”That chef is very rude to me...I'm leaving.”
「あの板前さんがとても失礼なことを言うので帰ります」と、拙い英語で伝えるのが精いっぱい。
店長さんは「ちょっと待ってて」とレストランの奥へ行き、例の板前さんを連れてきました。板前さんは、「すみませんでした」と渋々頭を下げた。
私は黙ってうなずくのが精いっぱい。店長さんに促され、元のカウンター席に戻りました。
色々な思いでまだ頭がゴチャゴチャ。涙が止まらないでいると店長さんが、"It's on the house"(お店からのサービス)と立派なお寿司を持ってきてくれました。
ヒックヒック泣きながら、一貫ずつお寿司を食べる私。
さすがカナダ、サーモンのお寿司が美味しかったのを覚えてます(笑)
…悔しかったのは、もし、私が家族(大人)と一緒だったら、板前さんはあんなこと言わなかっただろうなってこと。
そして、もし日本人男性客が
「カナダには休暇で来てるんです」
と言ってきたら、
「へぇ~、休暇というからには、最低でも3か月くらいは滞在するんでしょう?まさか1週間とかじゃないですよね?フライトはビジネス?ファーストクラス?まさかエコノミーじゃないですよね?」
なんて、絶対言わないはず。
でも、目の前にいるのが十代の私だったから、失礼なことを言っても大丈夫だろう、嫌味のひとつでも言ってやれ、とでも思ったのでしょうね。そうやって人を選んで、自分より弱そうな相手を攻撃するなんて。自分の父親の年代の日本人のおじさんにそんな仕打ちをされたことも、とてもショックだった。
…お寿司を食べ終わり、少し気分も落ち着くと、例の店長さんが、
”Would you like some Canadian maple ice cream?"
カナダのメープルシロップのアイスクリームを食べる?と、聞いてくれました。
…あんなに悔しい思いをさせられて、アイスクリームなんかでごまかされない!!アイスなんかいらないよ!!!
強がる思いと、
えっ、カナダ特産メープルアイス?!食べたい♡
という思いが入交じり、気が付けば、泣きはらした顔で"Yes please"とお願いしていました。笑
初めて行った海外で、店員の態度に怒りを感じ、泣きじゃくりながら店長に訴え、お詫びに出されたお寿司とアイスを泣きながら食べる18歳の私。
今その姿を思い出すと、感情むき出しの子供っぽい言動に笑ってしまう。今だったら、笑顔で嫌味を言い返します(笑)
そして今考えると、あの板前のおじさんは、単身(かどうか知らないけれど)カナダに渡り、異国の地で働き、大変な思いをしていたのかもしれない。ストレスが溜まっていて、つい私に当たってしまったのかもしれない、とも思う。
でも、あの時「失礼なことを言われた!」と感じて、席を立ってよかった。拙いながらに自分の思いを伝えられてよかった!とすごく思います。
いちいち色々なことに噛みつく必要はないし、スルーする力も大切だとは思うけれど…でもやっぱり、自分の中の小さな違和感や気持ちを尊重すること、自分のために行動することは大事と思う。
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