東独にいた 5巻感想

 こんにちは、雪乃です。本日は「東独にいた」5巻の発売日です。このために今日は午後だけ休み取りました(マジ)。

 そんなわけで、感想を書こうと思います。核心部分に触れるネタバレは避けるつもりですがご注意を。4巻の感想はこちら↓から。

 5巻の表紙は4巻の感想記事で予想していた通りイシドロ大尉。推しなので嬉しいです。今のところ奇数巻はMSG、偶数巻はフライハイトのキャラクターが表紙になっているので、6巻の表紙はノアゾンになる気がします。

 4巻でアナを中心としたMSGによる、反政府組織フライハイトのアジトへの襲撃が展開されました。そして5巻では、4巻の終盤で登場した殺し屋「違う顔」が本格的にストーリーの本筋に絡んできます。「違う顔」を雇ったフライハイトの目的は、MSG創設者であるフォン・マイザーの暗殺でした。

 ……というのが5巻の核なのですが、他にもCIAやKGBが絡んでさらに展開が広がりそうです。特にソ連からやってきたKGBに所属するヴェラは今後もいろいろしてくれそうな新キャラですが、まさかの催眠術を駆使するキャラ。彼女も結構なチートですが、このチートの層の厚さと、チートっぷりに冷戦下の不穏さや閉塞感が絡むことでキャラがインフレを起こしていないところがすごく推せます。

 そして4巻終盤で登場した「違う顔」陣営。4巻の段階では登場した部下はユーロパイオのみでしたが、他の部下3人も登場。それぞれのキャラクターが「長女ユーロパイオ」「長男ソルレソル」「次男チキュードーゴ」「次女ネオ」と紹介されるので、部下というより、疑似親子に近いんでしょうか。ユーロパイオは3人に対し「私の可愛い弟妹たち」と言っているし、チキュードーゴやネオから「姉貴」や「お姉ちゃん」と呼ばれていましたし。

 最初にユーロパイオの名前を見たとき、「ドイツ語圏の名前ではなさそうだな」と思っていましたが、チキュードーゴもどこの言語圏のものかわからない名前です。もしかしたら「違う顔」がつけたのかな。「違う顔」は独自の言語を話す場面があるので、「違う顔」の言語の単語から取られていてもおかしくない独特な響き。

 ソルレソルという字の並び、どこかで見たことがあると思っていたら同名の人工言語「ソルレソル」がありました。音階を使ってコミュニケーションを取る人工言語ですが、ソルレソルというキャラクターという関連性があるのかは謎です。
※8月24日追記:「地球同語」「ユーロパイオ」という人工言語が存在するようです(ユーロパイオはかつて存在した言葉を復元する取り組みに近いようですが)。ので、「違う顔」一味の部下たちの名前は人工言語の名前から取られているのかもしれません。

 あと、今巻も安定して演出がカッコイイですね。アナが襲撃の犯人を瞬時に探し出すシーンでは、犯人でないキャラ一人一人には「否」という文字を配置してその上に「シロウト」という文字を重ね、犯人が視界に入ったコマに配置された「合」には「クロウト」という文字を重ねる。言葉でうまく表現できないので実際に読んでいただきたいのですが、この演出によってアナの思考回路というか、どうやって視覚と思考を結び付けているかが可視化されていて唸りました。

 文字を使った演出といえば、「違う顔」の台詞。「違う顔」がフライハイトの会議に出席するシーンでは、「違う顔」の吹き出しにだけ、うっすらと違う文字が書かれています。この薄く書かれた文字こそ「違う顔」だけが話す特殊言語でした。「違う顔」が同時に二つの声を発しているように聞こえることを「見せる」のは漫画ならでは。

 一つの喉から二つの声といえばモンゴルのホーミーのような喉歌が真っ先に思い浮かぶのですが、「違う顔」は喉歌どころの話ではなさそうです。

 5巻で地味に好きなのが、ネオとフライハイト情報部のビアンカが並んでパン食べてるコマですね。1巻でジャムを瓶から食べるアナとか、3巻のサンドイッチ食べるクロードとか、同じく3巻のアナとユキロウの食事シーンとか、「東独にいた」で登場する食事のシーンが大好きなんです。純粋に人間が何かを食べている感じがして。食べる姿や手つきや、食事中の会話に人間味を感じるので、これからも定期的に食事シーンは挟んで欲しい。

「東独にいた」5巻もすごく面白かったです。受け止めきれない展開も多々あって初読後はかなり落ち込んでしまったのですが、それはそうとストーリーもキャラクターもバトルも最高でした。6巻も楽しみです。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。

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