今年観た舞台を振り返る

 こんにちは、雪乃です。もうすぐ2023年が終わりますし、今日は今年観た舞台を振り返っていこうと思います。

ジキル&ハイド

 言わずと知れたフランク・ワイルドホーンの代表作。相変わらず曲が!!!!良い!!!ワイルドホーンらしい音楽、そしてオーケストラを堪能できる作品です。
 3代目ジキルである柿澤さんの日に行ったのですが、等身大の青年としてのドラマがより色濃くなったジキルでした。
 昨年の年末のホリプロのコンサートで聞いた初代ジキルである鹿賀さんと3代目ジキルである柿澤さんの「対決」。ジキル役の継承を観た上での観劇は感慨深いものがありました。

白橡の森

 こちらはモノムジカの作品。ミステリー要素もあり、切なく苦しく美しいミュージカルでした。
 小劇場ならではの距離の近さが生み出す没入感がとにかくすごい。小説の中に入ったような感覚になったのを覚えています。
 この作品をきっかけにエドガー・アラン・ポーの「大鴉」を初めて読み、とうとう岩波文庫のポー詩集を買うに至りました。

アルジャーノンに花束を

 「アルジャーノンに花束を」の舞台版は2012年にキャラメルボックス版を観ているのですが、こちらはミュージカル版。どのキャストも原作から抜け出てきたかのようで、特に北翔海莉さん演じるキニアン先生はイメージ通りでした。
 主人公であるチャーリィの「経過報告」という形で書かれた原作に対し、ミュージカル版はチャーリィの経過報告を読んでいるキニアン先生の視点で描かれているような印象を受けました。チャーリィの理解者だったキニアン先生の視点だったからこそ、「チャーリィ・ゴードンに花束を」ともいうべきラストシーンに繋がったのかなと思います。
 原作は中学生の頃からずっと読み続けている大好きな作品ですが、ミュージカル版を観たことでチャーリィ・ゴードンという人間に出会い直したような感覚を覚えました。

エリザベス・アーデン vs ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-

 化粧品メーカーの創業者であるエリザベス・アーデンとヘレナ・ルビンスタインに焦点を当てたミュージカル。衣装がとにかく華やかで楽曲もよく、見応え十分でした。
 この作品の特徴は、エリザベスとヘレナの人生の絶頂期から始まるところ。競合他社の躍進、戦争、女性の価値観の変化と、エリザベスとヘレナを取り巻く状況は目まぐるしく変わっていきます。2人の経営者のサクセスストーリーとはしないことで、2人の軌跡、そして「美しさ」というテーマがより鮮明に描き出されていました。

ノートルダムの鐘

 ディズニーの中でもトップクラスで好きな「ノートルダムの鐘」、今年ようやく舞台版を観ることができました。
 アニメ版よりも原作に寄せたシリアスなストーリーにクラシカルな演出、そして音楽と、すべてが好きなミュージカルです。
 舞台版の特徴はコーラスを担当するクワイヤがいること。音楽面でもより重厚になった「ノートルダムの鐘」を体感できるのは生の舞台だからこそです。
 

ダーウィン・ヤング 悪の起源

 初めて観た韓国ミュージカル。厳格な階級制が敷かれた架空都市を舞台に、名門校に通う少年ダーウィンの苦悩や葛藤、そして彼が辿る運命を描いています。
 あまりにも面白すぎて、シアタークリエからシャンテに直行し原作を買って帰りました。
 舞台ではカットされてしまったシーンも多く、舞台を見て真相を知った上でも原作は楽しめました。緻密に作り込まれた世界観も詳細に描写され、舞台以上に心を抉られましたが面白かったです。

ムーラン・ルージュ

 帝劇に入った瞬間から「ムーラン・ルージュ」に浸ることのできる装飾と舞台装置、華やかなレビューシーンと、物語を彩る名曲の数々。とにかく凄かった、としか言えなくなる作品。今年どころか今まで観た中で最も豪華な作品でした。そしてチケットも今までで一番高かった……!
 一番好きなシーンは1幕ラスト。恋をした人間の目を通して見えるキラキラした世界を演出の力で作り出したエッフェル塔のシーンは圧巻です。

生きる


 黒澤明監督の映画「生きる」を原作としたミュージカル。これを機に原作映画を観てトルストイの「イワン・イリイチの死」も読みました。
 官僚主義やお役所仕事への批判というテーマも持っていた原作映画に対し、勘治と光男の2人を通して、親子のドラマとして仕上げたミュージカル版。映画と比較するのも面白かったです。
 勘治が「ゴンドラの唄」を歌いながらブランコを漕ぐ原作の名シーンは舞台においても健在。モノクロ映画だった原作に対し舞台では舞台でしか出せない新たな色彩が加わり、生死を超越した境地に至った勘治を表現していました。
 また今年はキャストが一部変わり、音楽座に所属する高野菜々さんがとよ役で出演。高野さんを外部のミュージカルで拝見できることに驚きましたが、とにかくお役にぴったり!溌剌とした明るさとシビアさを持ち合わせたとよがとても印象的でした。

辺獄に花立つ

 今年のモノムジカの本公演。男性だと思われていた大正時代の詩人・立花潮は女性だった。その事実を知った学者が辿る、女性である「斉藤潮」と男性である「立花潮」の人生。それらが交互に描かれるミュージカルです。
 詩人が主人公ということもあり、モノムジカの核とも言える「ことば」が極限までに突き詰められた作品でした。立体的な人間ドラマを軸としながら宗教的・思想的な奥行きも持つ名作です。

シャボン玉とんだ宇宙までとんだ

 音楽座の言わずと知れた代表作。今回は音楽座創設から35周年というアニバーサリー公演ということもあって、悠あんちゃん役として畠中佑さんがご出演されました。オタクが死ぬ間際に見る夢か?みたいなキャスティングが実現して嬉しい……。
 東宝版の「シャボン玉」は観ましたが、音楽座版「シャボン玉」を観るのは約10年ぶり。一番好きなナンバーである「あなたはいない」がなくなってしまったのは辛いですが、それでもなお色褪せることのない魅力を湛えた日本オリジナルミュージカルの金字塔です。

Jailbird

 モノムジカによる男役4人のミュージカル。会場は「白橡の森」と同じワニズホールでしたが、「Jailbird」では客席までを芝居のフィールドとしてフル活用し、「白橡の森」とはまた異なる没入感がありました。舞台の形を変えられるフレキシブルさは小劇場ならではの魅力です。
 今年観た中で一番濃かったです。人間関係の濃密さはとにかく作品を観てくれ!としか言えない。1月31日まで配信されてます。

東京ローズ

 今年のダークホース。2023年も終わろうかというこの時期に上演されたロンドン発のミュージカルです。
 日系アメリカ人として生まれて日本に渡り、戦争の影響でアメリカに帰国できなくなった主人公のアイバ・トグリ。日本が連合国向けに放送していたラジオ番組「ゼロ・アワー」のアナウンサーとなったアイバは、その後「日本のプロパガンダに加担した」としてアメリカで罪に問われ……というストーリー。
 6人のキャスト全員が入れ替わりながらアイバを演じるというイレギュラーな作品でもあります。この「6人1役」のおかげで、各ミュージカルナンバーに最も合った声質のキャストが歌うことができる、という効果が生まれていたように思います。

 これで今年観た作品は全部かな〜。ジャンル問わず観ることができて楽しかったです。
 また「白橡の森」をきっかけにポーの詩集を買ったり、「生きる」をきっかけにトルストイの「イワン・イリイチの死」を読んだりするなど、舞台をきっかけに読書の幅が広がった1年でもありました。

 来年の観劇も楽しみです。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。