うわっ…旋頭歌、少なすぎ…?

 こんにちは、雪乃です。突然ですが、私、結構旋頭歌が好きなんですよ。そもそも旋頭歌というのは、5・7・7・5・7・7の6句で構成される和歌の形態の一つ。古代の歌謡に見られる問答から始まったのではないか、とする説があるようです。

 古事記におけるヤマトタケルまでさかのぼれる、とても古い歌の形式「旋頭歌」。しかし、そんな旋頭歌が多く収録されているのは万葉集。今手元の電子辞書で改めて調べているのですが、万葉集ですら中期ごろまでのものがほとんどだそう(ブリタニカ国際百科事典より)。

 現代においても、短歌に比べたらどマイナーで数も少ない旋頭歌。試しにツイッターで「#旋頭歌」で検索したところ、短時間ですべて見終わってしまうほどの歌数しかありませんでした。ちなみにnoteでも同じように「#旋頭歌」で検索したところ、ヒットした記事は私の記事(下に引用したものです)含めてわずか3件。ハッシュタグでしか調べていないので実際はもう少しあってもおかしくないですが、それでも短歌より圧倒的に少ないのは事実でしょう。

 私自身、卒論でも短歌を選びましたし、何より万葉集の旋頭歌は詳しくありません。ですが、現代口語旋頭歌増えてくれ~という思いを込めて、今日は書いていこうと思います。私自身のサンプル数が少ないので薄いかもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです。

旋頭歌楽しいよ①字数が短歌より多い

 短歌は5・7・5・7・7の合計31文字。それに対して、旋頭歌は5・7・7・5・7・7の38文字。短歌より7文字、あるいは7音多く詠むことができます。

隣にはブラックホールを束ねたような
君の髪私が梳かす朝日に溶ける

 上記の歌は自作の旋頭歌で、以前noteにもアップしました。この歌、元は短歌にするつもりだったのですが、どうしても音数が合わず、旋頭歌にしたらどうにかなりました。
 旋頭歌、前述したように片歌を2つ組み合わせたものなので、本来は3句で一度切れるのでしょうけど、これは4句で切れます。現代口語旋頭歌としてはそんなにこだわらなくてもいいのかな~と思いながら作っています。

 さて、ここで私の短歌の方の過去作を引っ張り出します。

さくらんぼいつもあげたくなるような笑顔が透けるクリームソーダ
例えばさ君をソーダとするのなら私はアイス溶けて消えてく

 この2首はクリームソーダを歌題としたもの。世に出す気はなかったのですが引っ張り出しました。なぜクリームソーダかはここでは割愛しますが、私がオオサカ・ディビジョンのリーダー推しであることから察してください。そういうことです。 
 で、この2首を連作と言うにはなんかもう一歩足りない気がして、でも1首にまとめようとすると分量が多すぎる。「何か違う」と思いつつ旋頭歌に改作したのがこちら。

その笑顔クリームソーダを透かして見える
さくらんぼいつもあげたくなるような君

 2首目の要素が消えてはしまいましたが、1首目で取りこぼした覚えのある要素は入れることが出来ました。

 短歌だと字数が足りない、音数が合わなかった歌がある。そんな経験をお持ちの方は、ぜひ旋頭歌にいらっしゃってください。

旋頭歌楽しいよ②2人の掛け合いを1首の中でできる

 私が一番言いたかったのはこれです。旋頭歌は前半3句が5・7・7、後半3句も5・7・7。同じ分量をもつ2部構成です。ところで、ブリタニカ国際百科事典で「旋頭歌」と調べると、旋頭歌が廃れてしまった理由について、こんな解説が出てきます。

それは、この歌体が歌謡の世界に生れ、歌謡独自のかけあい的対立様式を濃厚にもっており、そのため短歌のように個人の抒情詩へ転換することが困難であったためと考えられる。

 いや、分かるんです。分かるんですよ、この解説も。でも現代の旋頭歌をSNSを通して調べれば、必ずしも問答の形式で詠んでいない方だっていますし。まあ古典の世界ではどうしてもそういう風には行かなかった面もあるのでしょう。

 で、私が旋頭歌良いなって思ったのが、「かけあい」の構図を持っていることでして。2人の人間の感情や台詞を、1首の中で同じ分量ずつ入れることが出来る。これは短歌にはなくて旋頭歌にはある大きな特徴だと思います。そんなことを考えながら作ったのが、4首の旋頭歌からなる連作「人造人間くんと管理人さん」です。

人間のように一つの名前が欲しい
番号をやろうそれなら満足だろう
たまにはさ話してみたいよあんた以外と
設計のミスだなそんな口をきくのは
抱きしめて欲しいよこんな体だけれど
その爪で誰かの体を引き裂いてもか?
綺麗だとあの子は言ったこの髪を見て
その髪を操り何をする気でいるのか

 これらは、前半3句に「人造人間くん」の台詞、後半3句、前半に対応する「管理人さん」の台詞を配置して1首としたもの。世界観としては、異形や特殊能力もちの人造人間を生み出す極秘研究施設……的なイメージです。本当は4首で終わらせる気はなかったんですけどね、ネタがなくて4首で終わってます。
 贈答歌だったら問答は作ることが出来ますが、あくまで2首で一対。贈答歌も和歌のロマンであり、特に中古の贈答歌は上代に相聞という形で蒔かれた種が大輪の花を咲かせた様子を感じることが出来ます。私も贈答歌大好きです。
 ただ、自分で作るのは正直キッツイ。しかも2首作らないと同じ分量の贈答にならない。そこで手を出したのが旋頭歌です。

 1首の中に2人の感情。これ、二次創作に応用できると思いません???二次創作に限らず、一次創作でも推しコンビがいる人はマジで旋頭歌作って。推している2人の概念を1首の中に閉じ込めて飾っておける言葉のハーバリウム、それが旋頭歌。互いにかけた言葉、互いが抱いている感情。そういうものを詰め込むことが出来る旋頭歌、大変すばらしい歌体だと思います。ありがとう、上代の人。
 もっと皆の推しコンビとか推しCPとかの旋頭歌読みたいので作ってほしい。ちなみに私も推しコンビの旋頭歌作ってるんですが、キャラの解説だけで5000字くらいかかってしまうので割愛。私の二次創作旋頭歌は、問答や掛け合いよりも原作から抽出した互いに向けている感情を詠む感じです。一次創作でそれっぽいものができたらまたアップしようと思います。

おわりに

 旋頭歌は、私自身大学で万葉集について学ぶまでほとんど知りませんでした。本当は万葉集中の旋頭歌や、芥川龍之介の連作旋頭歌の話も入れてみたかったのですが、いかんせんまだまだ勉強不足のため今回はやりませんでした。

 それでは、旋頭歌が増えることを願いつつ、今日は筆をおこうと思います。本日もお付き合いいただきありがとうございました。