「国境のエミーリャ」1巻~6巻感想
こんにちは、雪乃です。以前から気になっていた漫画「国境のエミーリャ」、ようやく全部読めました。
「国境のエミーリャ」は、第二次世界大戦後、ドイツのようにもしも日本が分割統治されていたら?というifの世界線を描く作品です。
「国境のエミーリャ」の主人公は、東トウキョウで暮らす女性エミーリャ。彼女は十月革命駅(上野駅)の人民食堂で給仕係として働く一方、東側から西側への亡命を請け負う「脱出請負人」としての顔も持っています。
物語はエミーリャのもとを訪ねてくる依頼人とのエピソードを中心として展開されていきます。
私、もともと「東独にいた」が大好きなんですよ。そこで「東独にいた」を調べていた時に、たまたま「東独にいた」の宮下先生と「国境のエミーリャ」の池田先生の対談記事を見つけまして。そこで「国境のエミーリャ」を知りました。その後読みたいな~と思いつつなかなか買えてなかったんですが、6巻が発売したタイミングで全巻揃えました。
「国境のエミーリャ」、まずタイトルにもなっている主人公のエミーリャがめちゃくちゃカッコいいんですよ。どんなときも冷静で洞察力や判断力に優れ、アクションもこなし、プロの脱出請負人としての仕事をまっとうする。ヒーロー然とした中でも、兄を失った哀しみを背負いながら生きる姿はすごく人間らしい。
そしてすごいのが世界観の作り込み。単行本には世界観や用語の解説が載っているのですが、その解説部分だけでも読み物として読みごたえがあって面白いんですよ。しかもその設定が、全部作中でちゃんと「世界」として息づいている。東トウキョウが単なる舞台装置にはならず、そこに人間が生きている世界だと感じさせてくれる。架空の東京であるはずの東トウキョウの作り込みと史実を反映した展開のマッチ具合が、絶妙に「SF」としての完成度を上げているんですよ。既知の延長戦上に未知があるのがSFの醍醐味だと思っているので、こういうのすごく好きです。「東独にいた」しかり、こういう史実を反映しつつの創作、みたいなのに弱い。
ちなみに私の推しは民警(ミリツィヤ)のウラゾフ警部です。敵キャラのように登場したと思いきや、1本筋の通った人柄を見せてくれます。
この「国境のエミーリャ」を題材としたコンセプトアルバムがあります。TWEEDEESによるアルバムが配信で出ていたので聞いてみたのですが、ウラゾフの曲がよりにもよって一番好みでした。もう運命だわ。劇中に登場する曲も実際に聞けるし公式でこういうのを出してくれるの、福利厚生がしっかりしているジャンルで良い……。
この作品の舞台は1962年。1985年から物語が始まる「東独にいた」とは20年の開きがあります。しかし壁のない世界を望む人の思いは同じ。「東独にいた」が好きな人は「国境のエミーリャ」も読んで欲しいし、「国境のエミーリャ」が好きな人は「東独にいた」も読んで欲しいです。
7巻の発売も楽しみです。本日もお付き合いいただきありがとうございました。