「出禁のモグラ」1巻 感想

 こんにちは、雪乃です。江口夏実先生の最新作である「出禁のモグラ」、1巻を読んだので感想文を書いていこうと思います。

 当方、中学生の頃から「鬼灯の冷徹」が大好きで、それだけに最終回を見届ける際にはやはり寂しいものがありました。ので、最新作を読むことが出来てめちゃくちゃ嬉しいです。

 「鬼灯の冷徹」の舞台は地獄でしたが、今作の舞台は現世。主人公は「世にも珍しい仙人」を自称する謎の男・百暗 桃弓木(もぐら・ももゆき)。彼は「あの世から出禁くらってる(本人談)」がゆえに死ぬことができない特殊な存在。彼と出会ってしまったために見えなくて良かったものが見えるようになった大学生の真木と八重子を中心に物語が進んでいきます。

 百暗は幽霊があの世に辿り着くための道標として持っている魂からもれる「鬼火」=灯を集めてあの世に行く(逝く?)ことを目標にしています。幽霊から鬼火を集めるためのアイテムがカンテラなのめっちゃ好きです。こういうね、ガジェットに私は弱いんです(何の話)。

 死ぬことができないために灯がカンテラにたまるまでは生き続けなければならず、しかし生きるためには金がいる。金のためには働き続けなければならず、しかし働く体を維持しつつ金を使わない生活をしようとするなら灯を消費して健康を保たねばらなない。しかしそうすればますますあの世へ逝くのが遠のく……と、百暗に課せられた制約がかなり重め。しかし百暗の状況を理解した真木・八重子コンビや、八重子のバイト仲間で幽霊に憑かれやすい高校生・詩魚の登場により、百暗があの世へ逝く望みを見出し始めたところで2巻へ続きます。

 コメディタッチですがシリアスパートもあり、何より百暗に課せられた制約がシビアで良いです。昭和の時代に住民票を買ったために召集令状が来た経験を語るシーン。銃弾に対して「あれはな……当たったら酷く痛いぞ」と言うコマの百暗の表情がもう壮絶です。たった1コマで彼の生きてきた、生きざるを得なかった時間の解像度が上がるシーンで震えるほどに凄まじかった。

 詩魚と同じ高校に通う化け猫憑きの祓い屋・猫附梗史郎もすごくいいキャラ。大幣の先に猫じゃらしがついてるのがツボ。(なお私は大幣の名称がマジで出てこなくて「神主 振るやつ」でググりました。語彙力が無。)
 猫附家は代々化け猫憑きの家柄なので梗史郎の父親である藤史郎も化け猫が憑いているのですが、このお父さんに憑いている化け猫が丸っこくて可愛いです。首はありえない方向に曲がってたけどね!まあ化け猫だからね!

 他にも百暗が入りびたる駄菓子屋「ぎろちん本舗」の店主と思しきキャラクターも、彼岸花の髪飾りをつけた女性だったりと好みの予感がするので早く喋ってほしいです。

 そして何よりも主人公である百暗。影もありつつでも基本的にはそれなりにダメなところも良いところもある、ある種「普通」の人なので安心して読めるし応援できます。あの世に「帰れる」という台詞があるあたり、あの世から出禁をくらう以前もそもそも人間ではないんだろうなあという感じがするので、彼の正体も含めて今後が楽しみです。

 余談ですが、「鬼灯の冷徹」の主人公である鬼灯は人間の肉体に鬼火が宿ったことで生まれた鬼。一方「出禁のモグラ」の主人公である百暗は鬼火を奪われた存在。そこがまた対照的で面白いなあと思います。

 2巻の発売は来年のようです。楽しみ。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。

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