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寝かせないタクシー

前回までのブータン旅行記はこちら

象の看板だの、インド国境の謎の白い石だの、ホワイトマンキーだので前半から鼻穴をふくらませて興奮しまくっていたせいか、激しい睡魔がやってきた。

道中、サルや羊、毛並みがいい野良犬もちらほら見られるが、山道くねくねドライブが永遠と続き、ほどよい揺れと日差しの温かさがあいまって、ウトウトしてきちゃうのだ。

もう落ちちゃったよ、一番気持ちいいよというときに、ドライバーが腕をちょんちょんと突っついて来た。

薄目をあけてなんだい?という顔を向ける。

「Are you sleepy?」

ええええ?みればわかるだろ。眠いから舟こいでたんじゃないか。

「い、いえす」

「そうか、じゃあ寝てな」

なぜ起こした?なにをしたかったのだ?という疑問符が頭の中でいくつか出てきたが、そんなことはもうどうでもいい。やはりまた眠くなる。

いい感じに舟をこぎはじめると、また腕をちょんちょんと突っついて来た。

今度はなんだよ!と思いつつも起きると、

「ここは写真スポットだ」

といって車を止めた。その写真スポットがこちら

滝・・・か?一筋に流れ落ちている感じは確かに・・・写真スポットかもしれないが、シャッターを切りたいほどのスポットではない。が、せっかく止まってくれたのでパチリ。

もういいのか?というが、特段、

「きゃーーーー!なにこれなにこれ!絶景すぎるーーー」

と興奮するほどの滝でもなく、とはいえ、好意を無碍にはできぬ。

「うん、ありがとう」

とお礼をいった。が、これが間違いだった。このあとから滝に遭遇しそうになると毎回起こされ、車を止めるもんだから、これは社交辞令をいってはいかんと気づく。

「もう滝は大丈夫。ありがとう」

といってやんわりと断った。客がわたしだけならいざ知らず、他の乗客もいるのに、こんなにストップしたらティンプーにいつつくやらである。

これでゆっくり眠れるかと思いきや、くねくね山道で必須のクラクションをブップーと鳴らしながら走るもんだから、寝られない。

しかも、眠いよアピールどころか、がっつり寝ているのに

「おい、聞いてるか?」

なんて確認したりする。助手席はありがたかったが、ゆっくり車窓をみることもできなければ寝ることもできない。その点、後部座席の二人は、スマホをみたり、イヤホンをつけてお気に入りの音楽を聞いたり、ゆっくり眠ったりと、なんだか心地よさそうに見える。

週6はティンプーとゲレプを往復しているというドライバー。毎度同じコース、景色で飽きるだろう。そこへありとあらゆるものが珍しく、すぐに興奮する日本人が乗ってきたとあれば、あれもこれも教えてやろう、俺の全部を語ってやるぞ!となり、楽しくなっちゃったようだ。

全行程8時間のうちまだ2時間。どこまでも続くよドライバートーク。

車で揺られて寝るのが気持ちいいのに、寝落ちする絶妙なタイミングで声を掛けられるもんだから、半分寝ながら聞いていたせいかドライバーの話をほとんど覚えていない。あんなに一所懸命に話してくれたのに申し訳ない。ここでお詫びさせてください。



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ゆきんこ
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