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異常な興奮を覚えて人生をかけた千円札のひと
毎年12月10日は、華麗な晩餐会風景がテレビに映し出される。今年のノーベル平和賞は、被爆者の立場から核兵器廃絶を訴えてきた日本原水爆被害者団体協議会が受賞した。核兵器のない世界・・・そもそも争いがない世界のほうが住みやすいし、幸せなのだけれどもそうなっていない現状をみると、人は争わずにはおれない生物なのかなと悲しく思う。
とニュースを見ながら、財布の中身を整理。
というのも、ようやっと「AA」が揃ったのだ。キャッシュレス生活に慣れ、なかなか現金と触れ合うことが少ないものの、やはりまだ現金のみのお店は多い。
で「AA」とは、一時期流行っていたが、前後に「AA」が並んだ紙幣は最初に発行された証だそうでレア紙幣なそう。前後というのをスルーし、前にAAがあればいいのだと思い込み、「意外とあっけなく揃ったな」と思っていたら、後ろも「AA」が必要だったとは。だからレアだったのだ。ということで、集めた前AAのみはレアじゃないので使うことにする。前の「AA」は簡単に集まったものの、新札出回ってからチェックし続けたので、ひとまず記念撮影でもしようと引っ張り出したのだ。
渋沢栄一、津田梅子・・・は!この北里柴三郎さん、ノーベル賞と何か関係があったような・・・
と調べると、やっぱり!
1901年 第1回ノーベル賞受賞したエミール・フォン・ベーリングと共同で論文を書き、最終候補に残ったものの、ベーリングのみが受賞。しかし、ベーリングは「北里のおかげである」と語ったという。
「近代日本医学の父」であり「細菌学の父」。伝染病克服に生涯をささげた人。日本のみならず、世界の医学の確率に貢献した人。一言でいうとこんなすごい人。だからお札にもなるのだ。
初めて覗いた顕微鏡の世界。微生物が動いている様子を見て、異常な興奮を覚え、この道に進もうと決意したのが18歳。東京で遊び惚けてた自分とは偉い違いだ。だからお札になるのだ(←すごい人だから2度いう)
そこからは、東京医学校、ドイツ留学、世界初の破傷風菌の培養に成功、帰国後、伝染病研究所を設立。と華麗な人生を歩んでいたが、戦争の荒波にもまれ、設立した伝染病の研究所は国にとられ、それでも、私財を投じて、自分の研究にまい進する。
権威よりも研究、いやただの研究ではない、人命を救うための研究。そのためにまっすぐに研究し続けた人だった。
私財を投じて作ったのが「北里研究所」。伝染病という名前をとったのは、今までの研究のほか、さまざまな研究を広くやるという意味合いがあったのだそう。独立するときに伝染病研究所にいた仲間(職員)に伝えた言葉がある。
「わたしは職を辞するが、皆さんには約束された将来がある。研究所に残り、研究に励んでください。国家のため、学問のために頑張ってください」
なぜ連れて行かなかったかというと、伝染病研究所は東大の傘下に入り、研究費も給与も約束される。しかし自分とともに独立するとそれらがなくなってしまう。だから、自分は自分の研究をするために辞するが、みんなは残ってほしいと伝えたのだ。
ところが、北里の一番弟子が、翌日職を辞す。
「北里所長からいただいた恩がある。だから、一緒に辞して、北里研究所にいく」
今の時代、そんな弟子が何人もいるだろうか。そのまま研究所に残れば地位も名誉も得られ、生活も安定する。それを捨てても先生についていくなんて、考えられない。さらに、医学者と技師、実験動物の飼育係、ワクチン製造の職員もあとに続き、結局、研究所のほぼ全員約100人が北里のもとに走った。
しかも、弟子たちは北里の辞職を予測し、ワクチン製造の許可を国から得ていたというのだからどれほどの人望だろうか。弟子が大将がやることを読み、先回りをし、さらにほぼ全員がついていくって、よっぽどの人徳がないと無理だし、現代でこれほどの人徳を得られる人がいるだろうか。やはり生活もあるしとついていきたくてもついていけない人もいるだろう。そのリスクがあったとしても、この人についていきたいと思わせるそんな人だったのだ。
結局、日本というのはパトロン文化がないのが問題。うまくいっているものにはお金を投じるが、まだ研究段階のものには、それはもうかるのかもうからないのか?と損得ばかり考える。コロナ禍で芸術関連に補助金を出すのを渋ってたのは日本くらいじゃなかろうか。
とにもかくにも、この3枚の新しい新札をみて、
「おれも、わたしも、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎のようになりたい」と思う子どもが増えたら、まだまだ日本はすてたもんじゃないと思う。
人生折り返し地点のおばばではあるものの、わたしも北里さんのように、なにかに異常に興奮して、残りの人生をかけられる何かに没頭する、一心不乱に自分のアイデアを具現化するべく、まい進したいと思ったのである。
まずは、パトロンもいないので、補助金をえるべく、自分の思いを伝える文章を書きまくる師走。
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