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雪中キャンプの妙
「雪の中でキャンプ?ありえないでしょ!ただでさえ、寒いのにわざわざ寒いところにいく意味がわからん」
「雪中キャンプにはまってるのよね~」という友達に言ったのがかれこれ3年前。
20代のころはわざわざ寒いスキー場にいってスノボー三昧をしていたわたくしめも、寒さに弱くなり、大荷物を持って移動するのもめんどくさくなり、冬は家でぬくぬくごろごろ派になっている。
ぬくぬくどころかあっつあっつになる温泉には行くものの、あえてどこかに行きたいと思わない冬。
そんなもんだから、雪中キャンプは論外だった。
「テントの中はほんとあったかいんだってば。冗談ぬきで半袖でもいいくらいなんだよ」
信じられぬ。そんなことあるわけがない。
「暖炉があれば無敵なんだってば」
毎回会うたびに、雪中キャンプのよさを語られ、LINEに雪原にたたずむテント、火のゆらぎをバックにビール片手に飲む姿の写真がこれでもかと送られてくると、だんだん気になり始めてきた。
何事も食わず嫌いはよろしくない、一度行ってみるかと重い腰を持ち上げ、友人夫婦の車の後ろに詰め込まれたキャンプグッズの中にちょこんと乗せられ、ただでさえ寒いのにさらに寒い北の地に向かった。
寒い寒いと言いつつも、飯盒でご飯をたいて、もち豚を焼いて豚丼を作る、暖炉で焼き芋づくり、さらには雪の中でビールを冷やし、キンキンに飲むビール・・・・
車の中で、今から始まる雪中キャンプの予習をしていたら楽しくなってきた。しかも、半袖になるくらい温かいというのも、あながち嘘ではなさそうなので、暖炉の前で早くぬくぬくしたくなってきた。
旅も前の日の準備が嫌で、もう行くのをやめちゃおうかなと思ったりするが、実際、行ったらものすごい楽しい。雪中キャンプも食わず嫌いかもしれない。
とはいえ、北の地に向かうほど、荒れ狂う吹雪。
「いいね~、いい天気になってきた」
友人夫婦は、吹雪こそ雪中キャンプの醍醐味とばかりに、ニタニタしている。こんな吹雪の中、テントを設置して、火をおこして・・・やはり寒いじゃないかと、楽しい、いや、寒いの気持ちがいったり来たりする。
しかし、着いたらその懸念は払しょくした。
杉の木々を彩るような雪に、一面の銀世界。モノトーンの世界が静かな時を刻み、現実世界から異世界にいざなってくれる。
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風が吹く音に身をゆだね、雪原の中にひとり佇んでいると、心が浄化されていくよう。
と浸っている暇はない。
「設置場所決めるよ!」
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新雪なので、こんな感じで穴を掘り堀りし、踏み固めていく。
テントを広げて、はじっこの紐を広げて、長方形にし、土台を決めて、釘のようなものをうっていく。
何がすごいってこの夫婦の阿吽の呼吸。役割分担が決まっているのか、手術の機械だしのように、いろんな釘のようなものをさっさと手渡し、旦那さんがリズムよく釘を打っていく。中に入り、センターポールを設置したらあっという間に、テントの出来上がり。
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一応、わたくしめも固定するためのロープのようなものを設置させていただいた。車からイスやらテーブルやら食材やらをそりにのせて運搬していると、体がぽっかぽっかに。まだ暖炉に火はついてないものの、テントの中はほんのり温かい。
そういえば、かまくらも不思議と温かった。その原理か!と今更ながら気づく。
テントの中は段取りがあるだろうからと、飲み物の準備をさせていただいた。
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天然冷蔵庫の出来上がり!シャンパンから飲もうか、ビールから飲もうか・・・はやる気持ちをおさえられない。
とニタニタしていたら仕事を言いつけられた。
薪割りである。小さいころ、家の風呂が薪だったこともあり、薪割りの経験はあれど、もうかれこれ何年もやっていない。できるだろうかと一抹の不安を覚えつつも薪割り場に向かう。
そんな不安は必要なかった。今の世の中、便利なものがどんどん出てきているのだ。
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この台の上に木を置いて、トントンと刺さるまでたたく。そして力をいれてハンマーでたたくと、ぱっか~んとキレイに真っ二つに割れるのだ。これが面白くて、もういいよと言われているのに、桃太郎のおじいさんよろしく薪割に興じた。
そして待望の暖炉完成!
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ほんとに温かい。というより、スノボー用のジャケットを着ていたのだが暑すぎる。ビール缶を冷やすタンブラーをもらったときは、いらないでしょ?と思ったが、いるいる!いつまでも冷え冷えをキープするタンブラーのおかげで、おいしいクラフトビールをいただけた。
火の揺らぎを見ながら、昼飲みというのはなんとも贅沢。時折、テントが風で揺れて、バタバタという音を立てるがその寒そうな音さえ、心地いい。
極楽、極楽といっている間に夫婦は、米を炊き、豚肉を焼く。
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ほんとにすごい連携プレイだ。外で食べるご飯は協力してやらないと、一緒に食にありつけないのだ。
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至れり尽くせりである。一応、お手伝いしましょうかとは言ってみたものの、「いいのいいの、楽しんで」と言うもんだから、ほんとに楽しんでしまっているのである。
完成した豚丼はこちら。
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ただ、豚肉を焼いて、焼肉のたれをつけただけなのに、といういい方は失礼だが、とにかくシンプルな味つけながらも、これまためちゃくちゃおいしい。
外で食べるご飯はおいしいに決まっているのだが、雪の中、暖炉を囲んで食べる豚丼のうまいこと、うまいこと。
あっという間に食べつくした。
9時半に到着して、テントを設置して、暖炉に火をいれて、ビールを飲んで、豚丼食べただけなのにもう15時半。この日はデイキャンプだったのでもう撤収しなければならない。
早かった。時間は伸び縮みするという話を書いたが、まさに縮んだ日だった。楽しい気分のときは光陰矢の如し。
1泊じゃ足りなくて、最低2泊するというこちらの夫婦の言い分がよくわかる。設営して、宿泊して、また撤収してとなるとあわただしい。中一日はのんびりしたい。おっしゃるとおり。
これが雪中キャンプ。ハマりそうになったが、なにせギアを揃えるのがハードルが高い。
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消えゆく暖炉の炎を眺めながら、終わってしまう雪中キャンプに寂しさを覚える。
「また来ようよ!」
夫婦の笑顔がまぶしかった。
雪中キャンプは夫婦喧嘩をしている暇がないくらいやることが多い。というより、テントの中は静けさとやさしさに満ち溢れているから喧嘩する雰囲気にもならないのだと思う。
最近、夫婦の会話がないな、一緒にいてもつまらんな、共通の趣味がない、価値観があわないなどなど、不満を持っている夫婦の皆さん、ぜひ一度雪中キャンプを!帰りたくても、すぐに帰れないからじっくり会話ができますぞ。
さらに溝が深まったら・・・ごめんなさい。
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