胃がない鯉の切なさ
小学生のころ、金魚すくいで大量に金魚をゲットし、家にあった水槽にいれ育てていた。
水槽に近づくたびに
「エサくれ、エサくれ」
とばかりに、口をパクパクさせて近づいてくる。
毎朝、毎晩、エサをあげているのにどんだけ食い意地がはっているんだろうと思うも、あまりにパクパクして、
「おなかすいてるよぅ~、エサくれよぅ~」
と言っているようで、ついエサを際限なくあげていた。
すると、数年後、もはやかわいい金魚ちゃんは姿を消し、水槽の中でうごめく気味悪い魚と化した。
太りすぎて、水槽が狭くなり、酸素不足でそのうち死ぬだろうと思いきや、それから何年も生きた。
そんなキモイ金魚の話を飲み会でしたら魚に詳しい人が
「金魚は無胃魚だからね」と。
その名のとおり胃がないのだ。
ご飯を食べても、ものの数十分で消化し、外に排出してしまう。だからいつもお腹をすかせ、24時間絶え間なく食事をする必要があるのだそうだ。
胃がないから満腹中枢もなく、再現なく食べられる。それはおいしいものをずっと食べられるのであればうらやましいようでいて、おなかいっぱいの幸せを得られないからかわいそうな気がする。
ちなみに金魚の他、メダカちゃんや鯉、サンマやイワシも無胃魚。その話を聞いてから、たまにいるどこかの池にいる巨大な鯉をみてもキモとは思わなくなった。
今年の大河ドラマ「光る君へ」の主人公、紫式部ゆかりの石山寺にいる鯉たちもほぼ全員、いや全鯉、太りまくっている。巨魚だ。
皆さん、鯉はおなかをすかせているわけではなく、単にずっと食べられる生き物なので、エサくれ、エサくれと口をパクパクしているが、際限なく与えてはいけません。
排出がおいつかないとこんな風に巨魚になってしまうのだ。
これ以上の巨大化を防ぐためにこんな立て看板も。
しかし、石山寺まできて鯉になんのエサをあげるのだろう。誰も鯉にエサをあげなくなったのか、近寄っても、エサくれと口をパクパクしない鯉たちが切なくなった。
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