乗り合いタクシーで帰りたい理由
前回までのブータン旅行記はこちら。
アカホシカメムシを踏んづけてはいないとは思うが、万が一のためにウェットティッシュで念入りにふきふきして靴を履く。
「日本人ってキレイ好きよね。裸足でちょっと歩いただけでもちゃんとふくのね」
いや、違う。旅行時にそんなにいいスニーカーは履いてないし、潔癖症でもないし、普段だったら靴下はいて終わりだ。カメムシらしいものがあんなにうようよいて、もしかしたらヒンドゥー教徒の皆さんが朝早くきてお祈りにきたときに踏みつぶし、その液体が足についてたとしたら・・・これから乗り合いタクシーに8時間も乗るのに、乗り合わせた皆さんに「この日本人なにか匂うぞ」なんて思われたらたまったもんじゃないし、申し訳ない。だから拭いているのだといいたかったが、これも英語で説明するのがめんどくさくなり、笑って「イエス」とだけ答えた。
ゲレプからティンプーの移動手段
ティンプー(パロ)からゲレプまでは、国内線で通常は30分(こんなこともあり4時間くらいかかった)で、帰りも国内線で帰りなさいよと友人たちは口々にいうが、バスがあるならバスに乗りたいと言い張った。
「乗り合いタクシーならあるけど、8時間も山道をドライブするだけよ。すぐに帰ってこれる飛行機乗りなさいよ・・・あ!飛行機代高いなら出してあげるから」
いつまでも20代のころの貧乏バックパッカーのイメージが抜けないらしい。さほどの年収でもないが、1泊1000円以下の宿に泊まっていたあのころよりはある。
「飛行機だとあっという間に通過してしまう小さい街がみたいの。ブータン人の生活が見られるし、どんな風景がみられるのか興味あるし」
「な~んにもないけどな・・・この辺(ティンプー)の郊外とさほど変わらないけど」
なにもなくない。ブータンに初めてきただけでも楽しいのに、その田舎の街、7000m級の山々、さびれた山の上のカフェ、段々畑・・・
なにもないから楽しいということもある。地元の人にとってはなにもないが、旅人にとってはなんでもあるになるのだ。
乗り合いタクシーが断然安い
当たり前なのだが、乗り合いタクシーのほう断然安い。
今回は友達におんぶにだっこで、手配をしてもらったのだがただの旅行者が1人で勝手にブータン国内を移動したり予約するのはいろいろめんどくさいのだ。
まず国内線。ネットで予約をし、Eチケットをゲット。これは日本でJAL、ANAを予約するくらい手軽なのだが、クレジットカードがうまく機能せず、結局、デチェンに払ってもらい、両替をして現金で友人に渡した。
その際、ルートパーミット事件が発覚し、デチェンが奮闘したのは前の記事のとおり。そんな奮闘をよそに、のんきにターキンをみていたわたし。
乗り合いタクシーは、もっと大変。ネットの予約ではなく個人タクシーに電話をするのだ。大型バスはなく個人タクシーオンリー。しかもFBで探したというのだ。
飛行機は12000ニュルタム(約21600円)。飛行時間30分を考えると高い。バンコクーブータンもかなりのお値段だったから、飛行機代は総じて高いとみた。
乗り合いタクシーはといえば、乗る人数にもよるが大体1600ニュルタム(約2880円)。8時間の山越えドライブを考えるとかなり安い。チップは払っても払わなくてもよいそうだ。
わたしが乗った日は私をいれて3人とのことで人数少なめによりスタート時の値段は1600ニュルタム。だが、途中から誰か乗ることがあれば価格が下がっていくという。高くなるなら心配だが、低くなる分には問題なし。これ以上は値上がりしないので安心。
頻繁にコミュニケーションをとってくるドライバー
〇日の夕方にはティンプーに着きたいといっただけで、特になにもオーダーもしてなかったから一体、何時にどこから出発するのか全くわからなかった。
前日には、10時に出発だったのだが、当日、どこからか電話がかかってきて10時半になり、またすぐに電話がかかってきて待ち合わせ場所が変わって、家から少し遠くなったからドライブしようということになって、前述したヒンドゥー教寺院にいったという顛末。
乗り合いタクシーとはいえ、場所も時間も二転三転するとは、大変だこと。
「そう?いつもこんな感じだけど。」
特に意に介す様子をみせないチュキ。といっている間にまた電話をかけ、なにか話をしている。
「また変更?」
「いや、車止めるなら別の場所のほうがいいなと思って変えてもらったの」
かなり柔軟に対応してくれるらしい。
「助手席に乗せてと頼んでおいたから、景色楽しんで」
「助手席値段とかないの?」
「そんなのないわよ。あなたは日本からきた旅行者と伝えたらOKだって。わからないことあればドライバーにきいて。英語話せるから」
「昨日からだいぶやりとりしているみたいだけど、知り合いなの?」
「いや、FBで調べて電話かけただけだからみたこともないけど」
なんだか細かく手配をしてくれているようでありがたい。とここで、ティンプーの降車場所が気になった。
「ドライバーにデチェンの電話番号を教えたから、ティンプーに近づいたらドライバーから電話するはず。途中で誰か乗ってきたら、その人の行先によって降車順が前後するかもしれないしね」
そういうことね。ものすごい連携プレーでわたしを送り届けてくれるらしい。運転をしながら、降車場所の連絡をしなければいけないとは乗り合いタクシーのドライバーは大変である。
助手席に乗り込み、わくわくどきどきの乗り合いタクシーの旅がスタート。これが想像以上に面白くエキサイティングなドライブだった。だから一人旅はやめられないのだ。
つづく・・・