〜だっせん〜13 父の絵日記を紐解く“少年の昭和史”② -みまさかぞく#029
父の夏休み絵日記シリーズ第2弾。昭和33年、小学2年生の時のものです。
1.夏休みの宿題
みなさんが小学生の頃、夏休みの宿題はどんなものがありましたか?私の小学校は「夏休みの友」と「ラジオ体操カード」が基本で、絵画や自由研究、計ド、漢ド…などなど。
調べてみたら、「夏休みの友」は大正時代から存在しており、戦後は都道府県単位で制作されているそうです。
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絵日記は、その日の一場面を切り取って絵と文にしているところが興味深いです。特別なことがあった日もなかった日も、心や五感はいつも動いているんだなと思います。
今回も2日分の絵日記を紹介します。
2.7月23日(水)曜日 天気(晴れ)
《原文》
おまつりにいきました。
みんなきていました。
ぼくは、大きなすずをならして、おばあちゃんのびょうき、はやくなおりますように、といいました。
《先生より》
かみさまが、やさしい、きょうちゃんのねがいをおききになるでしょう。
《解説コーナー》
このお祭りが、どこのお祭りだったのかわかりません。父が病気の回復を祈った“おばあちゃん”は、母方の祖母で津山に住んでいました。昭和34年に亡くなったそうです。
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3.7月27日(日)曜日 天気(はれ)
《原文》
やぎがびょうきになりました。おとうちゃんが口をあけて、にいちゃんが、くさのしるをのませました。
《解説コーナー》
私…「お父さんが前に、うちでヤギを飼っていたって言よったけど(そんなこと言ってない)、それはどこで?」
父…「おばあちゃんがおった離れじゃ」
この離れは、私の祖母が生前、使用していました。今は父のシアタールームになっています。
↓↓父の絵にある、この木なんの木、気になる木。
↑この大きな木はたぶん…
金木犀の木かな?昔からある大きな木は、この木だけど。父によう訊けずにいます。
もうひとつ気になる“くさのしる”。これは、ドクダミだと思います。私の家の周りには6月ごろからドクダミが生える生える。
ドクダミは「毒痛みを消す」から名付けられた説があり、別名「十薬」。十種の薬に相当する効き目があるそうです。
当時、ヤギの乳は大切なタンパク源だったので多くの家で飼われていたようです。
↑かわいくて。たまに仕事帰りに会いに寄ります。
4.昭和30年代の美作を回想する②
上記(7/23)のお祭りはどこのお祭りだったのか…。
おそらく近くの神社のお祭りだと思うけど、職場の先輩(父と同年代)2人に訊いてみました。すると「よぅけぇ(大勢)人がおるなぁ。昭和30年代なら、柵原鉱山の祭りじゃないん?当時の柵原鉱山はそりゃすごかったんじゃけん」と口を揃えて言われました。
柵原町(現在の美咲町)に私の親戚がいます。車で15分ほどの距離。もしかしたら、そこのお祭りに行った可能性もなきにしも?
その先輩方が話される、昭和30年代の柵原鉱山の話がとても興味深かったので、今回はその話をしたいと思います。
柵原鉱山の歴史をごく簡単に。
1882(明治15)年、硫化鉄鉱の採掘を開始したのが始まり。大正末期には日本を代表する硫化鉄鉱の鉱山に成長する。1950(昭和25)年〜1960(昭和35)年代にかけて最盛期を迎え、月産7万トンを達成していた。しかし、1985(昭和60)年以降の円高の影響で、外国から安価な鉱石が輸入され始めると、柵原鉱山は急激に縮小され、1991(平成3)年3月に閉山した。
柵原には鉱山で働くために、全国から人が集まり、昭和30年代には、鉱山町として賑わった。
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鉱山は閉山しましたが、1998(平10)年に整備された、柵原ふれあい鉱山公園内に柵原鉱山資料館があります。
GWに見学に行きました。
先輩方の話の続きです。
「鉱山の祭りには美空ひばりや、都はるみが来たこともあって。そりゃぁな、津山がよう呼ばんような人が来よったんじゃけん。私も観に行ったわ」
「キーハンター(丹波哲郎・千葉真一・野際陽子らの出演による)のロケ地にもなったんじゃ。キーハンターを、ゆきこさん(私)は知らんわなぁ。土曜日の夜、楽しみでな、みんな見よったんじゃけん」
「それに、当時、柵原の人は税金を払う習慣がなかったんで。住民税とか公共料金も全部、柵原鉱山がもって(払って)くれよったって聞いたで」
と話されていました。そんな時代もあったのですね。
父が描く絵日記から、温故知新の良さを改めて感じています。
読んでくださりありがとうございます。
また次回お会いしましょう♫
参考文献
『津山美作真庭の昭和』樹林舎 2020
『津山美作今昔写真集』樹林舎 2013
『美作町史 写真編』美作町 平成15
『美作町史 地区誌編』美作町 平成16