この一年
年の瀬に近づいてきて、一年前の同じ時期のことを思い返している。
その時期、自分にとって覚悟を決めて読んだ本と、聴いた音楽がある。
本は「夜と霧」。
音楽はキリンジの「ダンボールの宮殿」。
どちらもものすごく惹きつけられながら、怖くて長い間避けていた。
「夜と霧」は、どういう本かというのは知っていて、書店で何度も手に取って中身をパラパラと見はするものの、書棚に戻していた。
「ダンボールの宮殿」は数年前にたまたまYouTubeで聴いて、この歌で歌われているのは自分だと瞬間的に感じ、そのとても喜べない内容に抉られたような衝撃を受け、つい続けて何回も聴いてしまった後ずっと封印していた。
けれど、自分と向き合う中で、どうしても受け入れ難い自分も受け入れなくてはいけないところまで来た時に、この二つを取り込んでみるしかなかった。
と同時に、この二つの助けを借りる感覚だった。
「夜と霧」と「ダンボールの宮殿」は、それぞれが強烈に素晴らしくて、一緒にして同時に語れるようなものではないのだけど、今は一緒にしてしまう。
どちらも、私にとって救済だった。
どちらも、苦しんだ後に見出せる自らの光と、新しい始まりが示されていた。
抗いようのない世界の流れに巻き込まれた「夜と霧」も、自分自身であるからこその抗えなさの「ダンボールの宮殿」も、その渦中から自分自身を受け入れる変化を教えてくれていた。
私はそういう感じ方ができたことが、ものすごく安堵だった。
何とか大丈夫かもしれないと思った。
この時と一年経つ今は、しっかり繋がっていると感じる。
しんどいことはたくさんあるし、生きづらさもいつも感じているけれど、そんな時に「あ、そう言えば」と思い出して支えにできる自分なりの小さな確信が持てている。
美しい作品がこの世の中に生み出されていること、出会えること、本当にありがたい。