選挙だって、マーケティングだ。
昨日行われた、統一地方選挙。私の住んでいる地域では、区議会議員と区長を決める4年に1度の機会だった。
20代のころは、どこか遠い世界の話だった選挙。30代も半ばになると、見知った顔の人が出馬するようになる。区議会など、狭い単位での議会選挙であればなおのことだ。
実際に私も、とある議員の選挙活動の一貫として、Webコンテンツの制作を手伝った。彼女は私が住む区とは別の区の候補者だったが、区内にも、直接の知り合いの候補者が数人いた。
知人が複数いて、その中から誰かひとりを選ぶということは、ほかの誰かを選ばないということ。だから、それぞれの候補者がどんな情報発信をしているのか、政策や普段の活動、発言をちゃんと知った上で、この区の将来を託せる人に一票を投じよう。そんな気持ちで、いつになくしっかりと候補者の発信をチェックしていた。
ターゲットとメッセージの大切さ
「高齢者にやさしい」「子育て世帯に寄り添う」「独身者に快適」——
どれももっともだし、いいところどりして全部盛り込みたくなる気持ちもわかる。
だが、主語が多ければ多いほど、言いたいことがぼやける。この人に何を期待したらいいのか。この人にできて、ほかの候補者にできないことは何なのか。
やはり心を掴まれるのは、グッと絞り込んだターゲットに対してど真ん中の直球でボールを投げてくる言葉だ。
ターゲットは狭ければ狭いほどいい。たとえば「子どもを持つパパママが暮らしやすく」よりも、「共働き世帯、働きたいママの課題を解決」の方が、当事者に近い私には突き刺さるものがある。
そして、その思いと、その人の原体験がどこまで交わるのか。
一口に「子育て政策の改善」といっても、実際に複数人の子育てをしながら何百人ものママの相談に乗ってきた人が発するのと、特別それに思い入れはない人が政策としての必要性を感じて発するのとでは、重みが違う。
今住んでいる地域における、すべての課題を解決できるスーパーマンなんていない。だとしたら、自分の経験やスキルは、この区のどの課題解決において生かされるのか。
正しいターゲットに正しく情報発信をしている候補者は、たとえ無名の新人だったとしても、強いと感じた。
選挙カーは正解か
今回色々なところで目にした、「選挙カーがうるさい」問題。私自身、煩わしくなかったといえば嘘になる。
たとえば、私の住む区でダントツのトップ当選を果たした議員は、「選挙カーを使わない」「選挙事務所を作らない」の2つをモットーとして選挙活動をしていた。この結果だけを見れば、「選挙で勝つためには選挙カーは必要ない」との捉え方もできるだろう。
だが、ほかの当選者の顔ぶれを見てみると、現職ではなく新人で当選している人ほぼ全員が、この1週間どこかで名前を耳にしたことがある人。つまり、選挙カーでかなり派手に選挙活動をしていた人だ。
現職だったりもともと著名人だったりで、ある程度名前が売れている人であれば、選挙カーに頼らず街頭で地道に挨拶をするのが良いのかもしれない。でも、認知度に自信がないのであれば、選挙カーを使うなり、広告を打つなり、SNSを活用するなりして、まずは認知度を上げなければならない。
どのターゲットに何を伝えたいのか。そのために、今の自分に足りないものは何なのか。それによって、使う手段やチャネルを選んでいく。
となると、選挙カーは、顔と名前を多く広くの人に覚えてもらう意味では有効であると認めざるを得ない。
だからきっと今後も、こうして選挙カーで選挙活動をする候補者はいなくならないんだろうな、と思う。
区議選、市議選こそ「マーケ戦略」が大事?!
国政、都政レベルになると、様々な政界のしがらみもあるし、当選に必要な得票数もその分多くなる。戦略だけで太刀打ちできるものではないのかもしれない。
だが、都内自治体での投票数を見ていると、区議会や市議会の当落ラインはだいたい1000をちょっと超えるほど。これって(決して誰もがとは言わないが)、発信や活動を戦略的に一生懸命頑張れば超えられるラインなのではないかという気がしてくる。
現在仕事で、中小企業(もはや個人事業主に近い人もいる)のマーケティング支援をしているのだけど、選挙をマーケティングと捉えて戦略を考えていくのも、かなり面白そう。
次回の選挙の時には、心から共感できる候補者のサポートに立候補してみようかな。