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【詩集】憂う装飾

No.11

曇りのあとには青い煙
飛行機は白いままの線
空港に、から、の、スーツケース
重力の消えた日には、みんな靴を捨てた
逆さまになっても、指さきで土をさわっても、
起きたまま、相かわらず、
夢のなかを歩いている人類、

自由は雲、青く塗りつぶされた、白い雲

【無我夢中、旅をする】




No.12

ふしぎだけを見つめていたい時、
わたしは、現実を、なにとこころえる?
ふしぎは、鏡みたいな、宇宙であって
これからも、観測されつづける、事実である。
わたしの現実は、羽衣みたいに、いつも空に浮く
ふしぎは、顕微鏡をきらう。曰く、失礼だから。
わたしの現実は、時間にわらう。
いつか、なにもかも、知ってしまう時、
わたしは、ふしぎを、なにとこころえる?

【すがたかたちを嘘にして】



No.13

共同でありましょうよ、背中から声がした。
わたしは、遊びましょうを、待っていた。
気がする
もう来ない
つながり、定義なんていらない?
なかよく、辞書なんていらない?
気持ちの発露、それはうそ。
言葉で説明される好き、それはうそ。
表現される愛だけを、信じてみたい。
うそをつく相手はだれであっても
うそをつく行為がきらいだったから
言い聞かせながら耳を塞いでいる人の影を、
わざと、踏みながら、すすむ、
痛みのない侮蔑。
わたしだけの、いばらのみち、
理解されない受難。
ひつような言葉を用意しているだけ。
ポケットから出して与えて、去るだけ。
けれども、この生き方の鳥瞰図を、
だれも、見ていられないでしょ?
すべての、意識にわたしが集まる時、
わたしの、破滅は、わたしが、守るだけ。


【根元的なエラーコード】




No.14

煙は何色にもなれるから、
いつもかくれんぼは、一等章
連れてって、鬼に向かって、わらう
奇特な君、わかってた、わたし
おしなべて、世を捨てられないまま

煙は空に、地に、這うようにして泳ぐ
連れてかない、鬼は笑わない、そしてひとり
奇特なわたし、それはいない、そしてひとり
空へ地へ、浮かび、潜り、煙は肺に戻り

おしなべて、世を捨てられないまま
わたしはひとり、ときにはふたり
花吹雪いた頃、このゆびにとまり
無邪気さも棄てて、鬼を待つ


【目隠しされて吸殻は増えて】




No.15

昨夜の風は朝まで部屋に居残り
僅かな冷気を保っている

身の丈に合わない感傷に飽きて
次のフレーバーを探す毎夜毎夜

憂いは一等美しく見える飾りであった
身の丈に合わない悩み、
弾んでばかりの言葉、
落ち着きのない不幸、

影が濃くなることで、光を飛ばしていた
そういう小細工に頼って、わらっていた
身を寄せ合うための、ドレスコードに、
ほんとうは、疲れ切っていた筈なのに、

夜風をまといながら、明け方の街を歩く
今日もきっとひとり、僅かな冷気を離せずに

【憂う装飾】



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