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110. 親が子どもにかけるべきたった一つの言葉

今日、大学の授業で興味深いデータを見ました。それは、

アメリカでは毎年約4000万人のこどもがスポーツをしているが、そのうちの70%が13歳になるまでにドロップアウトしており、4人に3人のこどもは高校入学前にスポーツをやめている。Every year in the united states, about 40 million children play youth sports yet 70 % of those kids drop out and quit by the time they are 13 years old. Three out of four children are done with sports before high school. 

というものでした。高校に入学するまでにスポーツをやめるこどもが一定数いることはなんとなく知っていましたが、まさかここまで多いとは思っていませんでした。これはアメリカのデータなので、日本はどれほどの割合なのかは詳しくは分かりませんが、おそらく、中学高校に入る以前にスポーツをやめるこどもたちは決して少なくないはずです。

それではなぜ、こどもはスポーツから離れてしまうのでしょうか?

きっとそこには様々な要因があるかと思いますが、最も大きな理由の一つが「親」という存在です。

本当に競争しているのは誰?

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僕は、3歳の時に初めて氷の上に立ちました。そして、幼稚園年長の時に地元のアイスホッケークラブに入りました。現在は24歳になるのでアイスホッケー人生はもう20年近くになるのですが、今まで一度も「ホッケー楽しくない。辞めたい。」と思ったことはありませんでした。これはきっと、元々自分はアイスホッケーをすることが大好きだったこともありますが、それ以上に、僕にアイスホッケーをずっと好きでいさせてくれた両親の影響が大きいと思っています。

元々プロアイスホッケー選手だった父は、私に多くのことを教えてくれました。チームのコーチでもあった父は、練習中や試合中に厳しい口調で私に注意をすることはたまにありましたが、それをするときは「アイスホッケー選手になりたいと自分の意志で言っている僕が、それにふさわしい気持ちや態度を伴っていない時」だけで、決して「僕が下手だから」という理由では怒ることはありませんでした。そして母も、僕に対して否定的な言葉をかけたことは一度もなかったと思います。(ちなみに叱られるときは死ぬほど怖かった…ってこんなこと書いたらまた怒られそう)

両親二人は、小さい頃からずっと、僕にアイスホッケーをのびのびとやらせてくれました。

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僕は日本に帰国したときなどに、自分が小学生や中学生だった頃の試合を見返したりします。そこには、観客席から子どもたちに向かって叫ぶ様々な父兄の声が入っていることがよくあります。そしてそのほとんどが、

「なにやってんだよ!」

「早くパス出せ!」

といった怒鳴り声であることが多いです。

そうなんです。
試合をしているのは、子どもたちであるように見えて、実は「大人たち」なんです。そして、これはユーススポーツの様々な現場で現在も起きている現象です。

まだ10歳近くの子どもたち。彼らにとって試合とはきっと楽しい時間のはずです。普段の練習とは違う感覚が味わえる貴重な機会。それを「大人たち」が自分の都合で「意味無き競争」に変えてしまっています。

親が子どもに対してこのような声をかけている理由は、子どもに期待しているからです。それは、いい意味でも悪い意味でも。自分の子どもには誰よりもうまくなってほしいと思うし、だからこそ、それが思い通りにいかなかったり、やってほしいプレイが出来てないとイライラしてしまう。そして、「もっとこう動けよ!」と怒鳴ってしまうわけです。

そしてこれは、試合中だけではありません。このほかに、子どもを追い詰めてしまう時間があります。それは「家への帰宅時間」です。

帰り道

まずは、こちらの映像を見てみてください。

練習からの帰り道。父が子どもに対して話を始めます。原文と意訳を簡単に載せます。(意訳なので多少の翻訳の違いは悪しからず!)

So not your best practice, Can we agree on that? It seemed like you wanted to hang out with your friend more than practice. And that's fine. That's what you wanna do. You know, just tell me because you can do that any time. Maybe we can skip your next game, hmm? Because choosing to waste your time that's one thing. But wasting my time and your coaches time? That's selfish. You don't care about other people, you don't care about hard work, you don't care about teamwork. That's why you are always on the bench every time it matters. so if you wanna keep playing, you need to take a good hard look at yourself, and think about that. 
良い練習じゃなかったよな?どうだ?
お前は練習よりも友達と遊びたかったように見えたぞ。まあ別にそれは構わないよ、もしそれがやりたいことならね。でも、そうしたいなら俺に言いなさい。そんなことはいつでもできることだろう。
もう、次の試合は行かなくてもいいんじゃないか?
自分で自分の時間を無駄にすること、それは別に構わないさ。でも、俺の時間やコーチの時間はどうなる?それは自分勝手だと思わないか。
お前は他の人のことを気にしない、一生懸命練習しようとしない、チームワークも持とうとしない。だからいつでもベンチメンバーなんだ。
もしこれからもプレイし続けたいなら、よく自分を見直してみなさい。いいな。

といった感じです。

そして、動画の後半には、

70% of kids quit sports before high schoo because it isn't fun
70%のこどもが高校生になるまでにスポーツをやめる。なぜなら楽しくないから。

という字幕が出てきます。ビデオの最後には父親が "you need to take a good hard look at yourself"(よく自分を見直せ、反省しろ)と子どもに伝えていますが、コマーシャルの中ではこれは父親自身に向けられた言葉となっています。

子どもはビデオの中で一言も発しませんが、その表情には悲しさがあふれています。

僕は、子どもがスポーツから離れてしまう理由の一つとして、「楽しくない」という感情と同時に「親をがっかりさせたくない」という思いもあると思っています。

自分が全力でプレイしたとしても、うまくいかず怒られる。そして、そんな行動が続けば続くほど、親のストレスは高まっていく。こういった悪循環も生まれてしまっているはずです。

そしてそれが、子どもたちへのプレッシャーとなっているのです。

親が伝えるべき、たった一言とは

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それでは、親はこどもに対して何と声をかけてあげるべきなのでしょうか。それは、この一言です。

"I love watching you play!"
あなたがプレイしているところを見るのが大好きだよ!

たったこれだけです。今振り返ると、幼いころに母から似たような言葉をたくさん聞いていました。一緒にビデオを見返しながら、「優希のプレイは見てて本当に面白いねえ!」と何度も言われていたことを思い出します。

これはもはやスポーツに限らずすべてに共通することですが、上手い下手に関係なく、「あなたがスポーツしているところを見るのが私たちは好きなんだよ」という気持ちをしっかりと子どもに対して伝えてあげるべきです。これこそ、親が最もすべきことなのかもしれません。

「ここをもっとこうしなさい」

「この時はこうやって動きなさい」

ということを言いたくなる気持ちは確かにあるかもしれません。実際にそうやることで上達はするかもしれない。一方で、どんどんそのこどもが重圧に縛られていく可能性もあります。

プレイや技術に関することを言う前に、まずは、子どもへの愛をしっかりと伝えること。これは当たり前のようで、意外と見落としてしまいがちなポイントなのかもしれません。

最後に

「この子にスポーツで成功してほしい」

この気持ちを持つことは、決して悪いことではないし、親であれば誰よりもわが子を応援したくなる気持ちが湧いてくるのは当然のことだと思います。

でも、それがあなたのエゴになってはいけない。

それが、子どもから楽しさを奪うものになってはいけない。

僕はそう思います。

少しでも、スポーツから身を引く子どもたちが減ることを願い、この文章を書かせていただきました。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希

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⇧もしよければ、こちらの動画を見てみてください!"I love watching you play"という言葉はこの方が言っていたものです。

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