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129. 選手が絶対に知っておくべきこと

スポーツにおいて、最も注目されるのはいつだって選手たちだ。

これはきっと、誰が見ても明確なことだろう。いつも脚光を浴びるのは、その試合のアナウンサーでもなければ、チームドクターでもない。いつだってスポーツの中心にいるのは、間違いなくフィールドで戦うプレイヤーたちだ。

だからこそ、その選手たちが知っておくべきことがあると僕は思う。今日はそのことについて話していきたい。

競技が成り立つわけ

これはあくまで僕個人の考えではあるけれど、全ての競技に関わるアスリートは、「なぜ、自分が競技を続けることが出来ているか」を考えるべきだと思っている。それはもちろん、自分の突出した身体能力や、日々積み重ねてきた鍛錬の成果であることは間違いないけど、そもそもそういった部分に周りの人から目を向けてもらえるのは、自分がその成果を発揮できる環境を他の人たちが用意してくれているからだ。

テクノロジーやソーシャルメディアが発達した今、自分自身でコンテンツを作り、それを大衆に向けて届けることは、昔に比べたら簡単なことになったかもしれない。でも、本当に自分自身の力のみでその道を切り拓いている人はごくわずかで、きっと多くの人が何かしらの組織やリーグ、団体に所属することで自らの力を披露する機会を得ているのではないだろうか。

僕も、その一人だ。

このことを強く実感したきっかけが、コロナ禍での試合開催だった。先の見えない状況の中で、多くの人が「何とか現役選手たちに試合をさせよう」と奮闘してくれている。リーグを運営する人、チームのフロントスタッフ、コーチ、メディカルドクター、地域スポンサーや大学施設関係者など、本当にたくさんの人たち、それも、表舞台にはなかなか出ることのない人たちが、たくさんの知恵を絞り、時間とリソースを割き、リスクや批判と闘い、リアルタイムで様々な障害と並走しながら、「試合開催」を実現してくれている。きっと、端から見たら気づかれないことかもしれない。誰にも褒めてもらう事のないまま時が過ぎるかもしれない。それでも、「試合を見たい」と思う人のため、そして、「試合をしたい」と思う人たちのために全力で奮闘してくれている。

一方、選手はどうだろう。これはあくまで僕の個人的認識ではあるけれど、どちらかと言えば、

・用意してもらった場所で
・用意してもらった手順で
・試合をする(競技をする)

ということが当たり前になってはいないだろうか。

もちろん、選手として何らかの組織やチームに所属する以上は、最大の役割は「勝利に貢献するプレイをすること」が大前提になる。試合で最高のパフォーマンスを発揮することが最大の目的である以上、選手は試合以外の部分で労力を消費するようなことはすべきではない、という意見が一般論だろう。それに対して僕は反対するつもりはない。

ただ、だからと言って、自分がプレイできる環境を作り続けてくれている人たちのことを忘れていいわけではない。

というより、絶対に忘れてはいけない。

「競技スポーツ」の中には様々な役割があり、それぞれの果たすべき目的は、自分がどんな形でその組織/リーグに所属しているかで変わる。先ほども述べたように、選手であれば結果を出すこと、監督であれば試合に勝利すること、ストレングス&コンディショニングコーチであれば選手のパフォーマンスを最大限発揮するための取り組みをすること、フロントスタッフであれば試合日程を調整したりチームの予算運営をすること、審判であれば公正に笛を吹くこと、ファンであれば自分の好きなように応援しそれを他人に強制しないこと、遠征先のホテルであればチームが安心して宿泊できる施設を提供すること、スタジアム管理をする人であればピッチを清潔かつ良い状態で保つこと...

などなど、言い出したらきりがないほど、様々な形でスポーツに関わる人たちがいる。その中で、選手だけに脚光が当たるからと言って、選手が一番偉いわけではない。

スポーツにおいて、主役はいつだって選手であることは間違いない。ファンが一番見たいのは、選手であることは当然だ。でも、その選手たちも、一競技というプラットフォーム上においての、一つの「機能」であることに変わりはない。

とってもべたなことを言うようだけど、選手がいるから試合ができるのではなく、試合ができる環境があるから選手としてその場に立つことが出来るということだ。審判、相手チーム、リーグ運営、試合を見てくれる人、そのほかにも本当に多くの人たちの情熱や行動が終結した結果、選手はゴールを決めることが出来る。(ゴールを決める機会を得ることが出来る)

だからこそ、常に表舞台に立ち続ける選手たちは、光の当たりづらい方々に感謝し、賞賛するべきだと思う。何か行動で示すことが出来ればきっとベストだろうけど、たとえそれが難しくても、スタジアムでそういう方々を見かけたら一言「いつもありがとう」と声をかけるとか、常に心の中で感謝しながらプレイするとか、とにかくそういった方々を思う気持ちを常に持ち続けることは当然の礼儀なのかな、と僕は思う。そしてこれは、選手の実力、経験年数、業界内での立場など、そういったものに左右されるべきでもない。どんな選手も、持ち続けるべき信念だと僕は信じている。

アイスホッケー界に限らず、一人の競技者として、この状況において何とかスポーツを動かし続けてくださっている方々、何とか困難を乗り越えようと奮闘されているすべての方々に心から御礼を言いたい。

本当に本当に、ありがとうございます。

今僕が受けている大きな恩を、もっと大きな形で返していけるような人間に必ずなる。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希



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