ディスクヒット奮闘記〜リングフィットなアドベンチャー
少し前から、switchの「リングフィットアドベンチャー」を同居人氏とプレイしている。
リングフィットは実際にフィットネスをして敵を倒しながら進めていくRPGだ。ドラクエのコマンドが全部スクワットやプランクになったと思ってくれればいい。実際の(肉体的疲労感以外の)プレイ感は慣れ親しんだコマンド式RPGそのものだ。
最初は自分一人で進めていたが、途中で同居人氏が加わり代わる代わる遊ぶスタイルとなった。同居人氏はゲームをほとんどやったことがないが、それでも慣れれば問題なく遊べるので(肉体的疲労感以外の)ゲームとしての難易度はそれほど高くない、むしろ易しいゲームだと思う。まだ攻略中だが、基本的に頑張ってフィットネスをこなせばクリアできるゲームだと思っている。
いや、思っていた。思っていたが、突然高い壁が立ちはだかった。
ミニゲーム「ディスクヒット」だ。
注を付けるとあくまでミニゲーム、かつゲーム内で任意に受注できるミッションなので別にクリアできなくてもいい。できなくてもいいのだが、私はRPGで洞窟内を探索するときに隅から隅まですべて踏破しないと気が済まないタイプだ。ルートが二手に分かれていて一旦正解のルートに進めたとしても、もう一方のルートに何があるのか気になってまた元の道に戻るタイプだ。
リングフィットはステージにつきどのくらい内容をコンプリートしたかが達成率となって表示されるので、いつも100%になるまでプレイしていた。そこに現れたのがミニゲームディスクヒット及び、ミッション「ロボを全て壊そう」だ。ロボを「全て」壊す。つまりはパーフェクトゲーム、完全試合を要求されている。
ちょっと待て。なぜいきなり難易度がグレンラガンしているのだ。
今までそんなテンションじゃなかったはずだ、8割以上でクリアとかそんな感じだったのに。なぜ突然完璧主義になった、教育ママか。
やってみると案の定3000点台だ。パーフェクトが7600点なので半分以下のスコアで、あえて言うとカスだ。ここからパーフェクトは無理じゃないか?私はひたすらレベルを上げるとかはぐれメタルを仲間にするとか加点方式のやりこみは好きだが、ノーミスクリアとかノーダメージプレイとか減点方式のやりこみになると途端に見る専になる。悔しいがここはスルーしておこう、すぐさま計算して見切りを付けようとしたが同居人氏は言った。
「雪美ちゃん、やろう」
まじか。私が失っていた、ゲームに対する素直な姿勢を同居人氏は持っていた。そして、私たちはやった。
右から左から飛んでくるディスクを、両腕をブンブン振ってハリセンではじき返し、ロボを破壊する。時にはカーブを描いて飛んでくる。一回でも失敗できない。ディスクがハリセンをかいくぐり自分にヒットするともう終わりだ。
はじめの内は4000、5000と徐々に点数が伸びてくるのでまだ精神に余裕があった。6000点で留まりだしてから、暗雲が立ち込め、イライラしだした。どれだけ正確に速く腕を振ろうとしても、無慈悲にディスクが突き刺さる。「ファック!」同居人氏がテレビに向かって中指を突き立てはじめた。私もナチュラルに舌打ちなぞしてしまう。その内二人で失敗するたびファックファック言いながらプレイしだすが、このゲームはフィットネスで激しく前後はするが洋物AVの世界観ではない。
7350点にまで到達するが、そこからノーミスがどうしても達成できない。もはや私の上腕三頭筋も限界に近かったので、もう同居人氏を説得して終わらせようかと思った。しかしその時は来た。
7600点、達成した。なぜできたか自分でも分からない。できたからできたとしか言いようがないくらい、特に何かを考えてながらやっていたわけではなかった。
これがあれか、炭治郎父が言っていた透き通る世界というやつか?力の限り踠いて苦しんだからこそ届いた領域なのか?終わってしばらくした後ふと思った。もしかして今の私なら猗窩座に勝てるかもしれない。
総プレイ時間は1時間半程度だった。1時間半ひたすら二人でディスクをヒットし続けた。もはやディスクがヒットしているのかヒットがディスクしているのか分からなくなった。実際一人でプレイしていたら絶対達成できなかったし、やろうとも思わなかった。
同居人氏と遊んだディスクヒットは、ゲームに飽きてしまった私にゲームの楽しさというか、初心とでもいうべきものを思い起こさせてくれた気がする。同居人氏には感謝したい、久方ぶりのエキサイティングな出来事だった。
それにしてもこの先こんな難易度のミッションがホイホイ出てくるのだろうか。もしそうなったら私の体は耐えられない、ボドボドになってしまう。私が私の知らない私になってしまう。ゲームクリアに向けて一抹の不安を抱きつつも、とりあえず先の事は考えないようにして、とにかく今は休むこととする。