話を聞く事と、現象を見る事。

むかし。

保育系の事務局長をしていた頃。

個々で運営をしていた所から、市の委託によりある程度統合され、それにより職員の異動もできるようになった為、全職員と面談をし、面談各保育所の課題や人間関係のパワーバランスを考慮していく事となった。勿論、異動もあるという話を全職員に面談時に伝えながらの事であった。

パートアルバイト含めると約150名の大所帯。

普段の業務をしながらの事なので、面談時間を作る事は勿論、評価をしていく事もなかなか大変な作業ではあったが、全く苦にはならなかった。


私は、面談が好きだ。

突撃アポ無し現場訪問はもっと大好きだ。

どちらも、人の心理、行動、その職員の本気度、全てがその時の側面から垣間見えるからだ。


人事権を持つ管理者に多い失敗が、面談だけして普段の仕事ぶりや、アクシデント発生時の対応、誠実さを見ない為に、結局は異動による調整をはかっても上手く行かない現象を引き起こしたり、伸びしろのない人同士を置き、生産性が下がったり、悪くしなくても良い雰囲気を悪化させてしまうという事である。

勿論、ここをカバーリングしても人の気持ちはその本人にしかわからない為に、決して100%ではないのだが、きちんと考慮して対策しておく事により、ミスマッチをかなり防ぐ事ができる。


普段の行動は、野暮用を装った突撃訪問時に、さりげなくウォッチングしている。

訪問時の行動を思い起こしながら、面談で話を聞く事で何故その行動だったのか、何故この発言なのか、といった人の心理も垣間見える。

そのためには、面談だけではダメなのである。

勿論、訪問だけでもダメだ。

両方やって、はじめて効果的になる。

勿論、話を聞いてくれない、現場も見てくれない、何もわからない上司だと言わせない為の伏線でもあるのだが、私の中でのその伏線は、本当に薄いものであった。


そうとは思わず、職員達は、ほぼ全員が事務局長(私)よりも人生の先輩であるという盾を使い、心理戦を挑んでくる事も多かった。

本音を言わず、回りくどい事を言う人

本音は言うが、問題点を放置し解決なんざできる訳ないと諦める人

放置したくてしている訳ではないが、どうしていいか立場上わからず戸惑う人

私だけでなく、◯◯さんも言ってました、なんて言えば聞いてもらえると思っている人

なかなか面白いものである。

勿論、この面談も評価対象としていたので、其々のアピール方法さえも性格や性質が滲み出る。


私は、面談の時にダメ出しはしない。

それをしてしまうと、面談を拒否する人が出てくるからである。また、面談で思わず本音をこぼすという場面をなるべく作れる雰囲気作りも、大切にしていた。

その中で制限時間で話を切る、話が脱線しないようにするという事にも注意していた。

『フレンドリーな雰囲気だが、実際は厳しく評価をする』

これは、私が師と仰ぐ某大手介護グループのKさん、Mさんから踏襲している。

あくまでも、傾聴する事に没頭するフリをして、彼彼女らが何を言わんとしているのかを考察する事が大切なのである。

職員の評価は、マトリクス図でわかりやすくし、誠実さや業務遂行能力等、6項目にして私を含め4人の事務局幹部の評価を市に提出し、異動や人員調整の根拠とした。

今まで、無かった決まりばかりであったが、ルール設定としては順調に事が運んだと思う。

実用していく中での抵抗やトラブルは多少あったが。。。


私が突撃訪問をして、人間ウォッチングをしていた事は、退職までに殆どの職員に知れ渡った。

だからこそ、いい緊張感を持ち仕事をしてもらえていた。


人の能力は、五感があり

耳と目と口がある。

第六感も使って、人を見極め、適材適所に人員配置をする事こそが人事の仕事である、と私は思っている。

人事関係の仕事は、骨が折れるがやりがいがあり、会社の大切な屋台骨部分でもある。

いつかまた機会があれば是非やりたい仕事である。



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