言い訳は要らない。やるのか、やらないのか。ただ、それだけ。

むかし。保育関係の事務局長をしていた頃。

28歳のとある所属の男性職員Hくんが、時々2、3分の遅刻をする。

何度注意しても直らない、とその所属のA主任が相談してきた。

ましてや、単車で猛スピードでやって来るので、近所の住民から

『あの先生は危ないが、どんな教育をしているのか?』と、

苦情を私に言ってきたのが、ほぼ同時のタイミングだった。


私は、この話を聞いた時点で A主任をまず叱った。

何故、何度もそうなる前に報告しないのか。

もう彼の中では、2分遅刻した分、2分遅くまで居ればいいと、勝手になってしまっているだろう。

指導しても繰り返されるという事は、Hくんにとっては、結果として痛くも痒くも無い指導になってるのではないか。

子どもの日常を守る仕事をしている人間が、猛スピードで単車を走らせるという事が、どれほどの説得力に欠ける行動であるのか、己が子どもを単車で轢いてしまいかねないリスクもある事さえも指導できないのか、と、かなり厳しく叱った上で

 A主任とHくんを事務局に呼び出した。

仕事は熱心にやる子だ。だからこそ、指導をきちんとせねばならない。

他の事が良くても、時間を守れないのは社会人の基本中の基本ルールとして通用しない。


彼は、 A主任とひたすら謝ってきた。

 A主任は、厳しく言ってるが聞かないの一点張り。

私は、叱っても来れる事実があるのだから、それはHくんも結果として聞かないだろう、大した懲罰でもないから、同じ事を繰り返すのだ。と厳しく切り捨てた。

私は、その謝罪もそこそこに、2つの指導をした。

一つは、Hくんが法定速度で家から勤務先まで通う事を徹底する事。逆算して、所要時間を把握し、自宅を出る時間を決める事は勿論。

2つ目は、次にHくんが遅刻をしたら、残念だが即解雇にすると通達した。

これが初めての事ではなく、相談に来るまでに、既に何度か繰り返してしまっていた事が理由だ。

遅刻が慣習化されている事への危機感を持ちなさいと、2人へ告げた。

社会人として、拘束時間を守って勤務出来ていないのだから、当然の事。

普通の企業でも同じ指導をする。


それは厳しくないですか?と2人が反論してきた。

残念ながら、私が事務局長に着任するまでの間、マイルールで勝手にやってきた感覚が抜けない人達であるため、この反論も想定内だ。


私は淡々と伝えた。

時間も守れない保育士が、子供に向かって遅刻をするな、時間を守れとは言えないだろう。

〜をしてはいけません、と諭す事も説得力に欠ける。当然である。

私へ反論するならば、保護者に、この対応を

“厳しいんですよ、ハルに何とか物申してくれ”と相談してみればいい。

近隣の住民から苦情まで来ている状態で、恐らくそんな展開にはならない。仮に物申されたとしても、この処分は変わらない。と告げた。

厳しいが、この処分でもワンクッション置いた対応をしているつもりである。

言い訳や、愚痴は要らない。それでもやるのか、やらないのか。

どのように克服し、通勤すべきかは先程処分の中で伝えた通りだ。それ以上もそれ以下もない。

という内容。



指導をされているにも関わらず、言い訳だけをして、対策を講じない人間が多すぎると感じる。

この条件で無理ならば、何処に行っても無理。

そこまで伝えるのは、逆に優しいくらいである。


結局、Hくんは同じ事を繰り返してしまったので、解雇となった。

 A主任も、長い間マイルールを作って勝手に運営をしてしまっていた事を重く見て、時期はずらしたが違う施設へ異動とした。

異動になるかも知れないとは彼女へ伝えていた。

しかし、またまた、これが大騒ぎとなった。


単車で通うが、遠くなるから無理だ、だの

通勤で危ない目に合わせるのか、だの。

確かに、元の施設よりは遠くなるが同じ市内である。しかも、大きい道路も路地も沢山あり、どのようにしても行ける道は沢山ある。

異動が無理ならば、辞めるしかない。課題があるからこそ、異動先で学ぶのである。成長のチャンスだ。それを断るなら仕方ない。

やるのか、やらないのか。

彼女は、やる事を選択した。


ならば、はじめから反論せずにやれば良い。

決して、何事も全く寝耳に水ではやっていない。

にも関わらず、愚痴や否定的な批判だけをして、どうするのかも言わないのは卑怯極まりない。

結局やるなら、やっていく中で、冷静に問題点と自分が思う解決策を提案すれば良い。


仕事に言い訳は要らないのである。

結局は、やるのか、やらないのか。

こんな事でいちいち足止めに合っていては、どれだけ身体があっても足りないというものだ。


社会人として、基本的なルールをきちんと理解出来ていない人間が多過ぎると判断し

全員に、一から仕事をする事とは、という常識的なルールの研修を2年に渡り、行った。


その話は、またの機会に。






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