真の京料理はこれやろ。一乗寺の”濃ゆい”ラーメン【天天有】【神来】
去年、ご好評をいただきました「京乃百年洋食 キャピタル東洋亭」の記事の続編として、再び”真の京料理”を追求してみます。
ステレオタイプの「京料理」の概念を打ち破れ。
おばんざいに代表される、昆布などのダシをふんだんに用いた”薄味で上品な味”。これも確かに京料理ではあるが、実際に京都に住んでいる人がそれを好き好んで頻繁に食べるか、と言われたら決してそうでは無いと言える。
実際、料亭の味が一般家庭で出てくるわけがあるまいし、増してや一般的なオカンがイチイチ鰹節や昆布から出汁を取って料理を作る煩わしいことをするはずが無い。そういうことをするのはさしづめお坊ちゃまの家のお母様ぐらいだろう。
私は高槻の住まいだが、子供の頃は京都在住の友達も沢山いた。そんな彼らの家庭では”おばんざい”みたいなおかずは出るはずがなく、朝は志津屋か進々堂のパンやし、晩御飯は週の半分以上で肉料理か中華。
友人宅では手作りの餃子パーティー、オカン達は餃子をアテにしてビールを飲みまくる。
「ラーメン行こっか」と友人のオカンに誘われ、向かった先は決まって天下一品か魁力屋。
―――――― 朝はパン、牛肉と餃子が大好き、ラーメンは濃厚背脂醤油が好き、うどんの出汁はだしパックで十分。
これが、私が肌で感じた京都の人達の食生活なのだ。
さて、本編。
京都発祥のラーメンには全国区で名の知れたチェーン店も複数あるほど、京都の街は「濃いスープが売りのラーメン」のメッカ。
天下一品
第一旭
新福菜館
魁力屋
鶏ガラドロッドロ、喉灼けるか想うぐらいの濃い醤油、そして背脂チャッチャ。バラエティ豊富だが総じて「味が濃い」のが京都のラーメンの共通点。
そんなラーメン大国の京都でも最も激戦区なのが一乗寺。
上述の背脂系から豚骨、果てには二郎系まで揃うラーメンパラダイス。
子供の頃から出入りしていた一乗寺の街は、どこの路地に入ってもダクトからのラーメンの匂いがしてくるため印象は鮮烈だった。二郎系ともなると「くっせぇ…」となるぐらい強烈だったけど。
そして10数年ぶりに一乗寺に帰ってきて、あの日食べた一乗寺のラーメンを再び味わうことにした……。
天天有 一乗寺本店
2023年の祇園祭宵山の日。
久々に一乗寺を訪れて、入ったのが天天有の本店。
気取らない感じの、昔ながらの佇まいな店内は鶏白湯スープの匂い。
ひとえに京都のラーメンと言えどただただ塩辛いってわけでもない、シルキーな舌触りの鶏白湯スープが如何にも京都ラーメンの流儀に則ってる感じがして良い。これも”濃いスープ”の要素の1つ。
そしてネギがこんもり。それが九条ネギであろうがなかろうが、大口径の青ネギを沢山のせてくれるお店は良いお店。それだけネギはこの手のラーメンにとっての生命線。
熟成麺屋 神来 一乗寺店
チェーン店か否かで価値が変わるなんてチャチな考え、そんなんどうでもいいんだ今は!!
きた。きました。京都が誇る背脂チャッチャの真髄。私が欲しかったのはこういうやつ。
一乗寺では割と新しい目のお店ではあるものの、穏やかなお人柄のおっちゃんとおばちゃんで切り盛りしてるお店。
スープは背脂醤油にしては白め、それはつまり「喉を灼く程の塩辛い醤油味」は無く、シルキーな舌触りの背脂が強調されたお淑やかな味。
博多ほどでは無いけど、京都ならではの硬めの細麺がとろみのあるスープに合う。
そして欠かすことのできないネギ。こちらは厚みのあるアタリ個体でございやす。
おわりに
京都のリアルというのは、世間の思っているイメージとは違ってかなり下町風味が強い。
洋食屋も、本格中華も、そしてラーメンも。先斗町にあるような本格割烹に負けないぐらい、ひとつひとつのの文化として洗練されてきた。
ラーメンに限った話では、現代ともなれば下宿している大学生も京都市内に沢山いるわけで、より一層ラーメンの文化が盛り上がっているのだ。
現に一乗寺周辺には大学が結構あるもんで、この街のラーメン文化を支えてくれているのは彼ら大学生なのかもしれない。
―――――― 若い兄ちゃん達や、地元のおっちゃん達に混じって食べる一乗寺の濃ゆ〜いラーメン。なかなかオツなもんですよ。
2025年1月9日
中井みこと