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snafu_2020
水の粒子
君の目に見られいるとき私は
こまかき水の粒子に還る
歌人、安藤美保による「水の粒子」、きっと少女に違いない、想いを寄せる「君」の眼差しに、恥じらいのあまり飛び散って、水の粒子に還るとある。ドキドキして紅潮すると思いきや、無色透明濁りなきさわやかな水に還るとは、その想いの清冽さと一途さが現れているようにも。「還る」とあるからには、この人は元々水分子でできていたのだろう、実に清廉な歌である。
女性をこうもさせる「君」が羨ましい限りだが、はて、自分もかつてこんな恥じらいの局面があったような。でも思い通じず撃沈して、木っ端みじんの塵となって跡形もなく砕け散ったのは私のほうだった。
お茶大大学院で、「きりぎりす」の一首で有名な後京極摂政良経を専門とした歌人は、不慮の事故であまりに若くして泉下の帰らぬとなった。でもきっと、本来の水の粒子に還ったのだと、私は思う。