見出し画像

オープンDの音色を追って 27

(約5分で読めます)

 前回、トミーとマークのことばかり書いて、ボーカルにほとんど触れていませんでした。
 ボーカルは、GAROの活動後期になるまでギターを持って出演することがあまりなかったからです。
 資料をあたっても、歌(「ボーカル」だけに!)やファッション(セツ・モードセミナー出身だけに!)、ビートルズ等洋楽についての話題はありますが、ギターをはじめとする楽器について言及しているものが非常に少ないのです。
 しかし、ボーカルはギターが弾けなかったわけではありません。

 GARO結成のきっかけになる1970年10月の突発ライヴ。
 カナダへ行くことになったフラワー・トラベリン・バンドの壮行会コンサートでのことです。
 会場であるサンケイホールのロビーで、休憩時間にマークとトミーが突然演奏をするという趣向でした。
 仕掛け人は渡辺プロダクションのマネージャー・中井國二。
 そのときのことをボーカルはこう振り返っています。

 マークとトミーがロビーでアトラクションをやることになったんだ。で、僕の12弦ギターを貸して欲しいと言われたので会場に持って行ったら“何か1曲、一緒にやろう”と言われ飛び入りで歌ったの。
 それを見ていたザ・タイガースのマネージャーで、僕にしたら日本のブライアン・エプスタインだと思っている中井國二さんから“この際だから3人でやろうよ”と背中を押されて、一緒にやることになったんです。

サイト: MonsieurKamayatsuFOREVER Talking About Monsieur #007 大野真澄

 同じときのことをマークとトミーは

【マーク】
 一番最初3人でのステージは、サンケイ・ホールのロビーにある、階段の途中で座って演奏したことが印象に残っている。

【トミー】
 ステージが階段だったこと。僕とマーク2人でガロとしてやってた。ちょうどその時ボーカルがきていて、12弦ギターももってきてくれて、借りた。
 ボーカルが青い目のジュディを覚えていて、階段の裏で合わせてみた。
 そしたら、いいネェーと3人でやることになった。

「ヤング・ギター」1973年5月号

 マークもトミーも持っていなかった12弦ギターをボーカルが持っていたことからも、間違いなくギターは弾けますね。
 ただ、それぞれ別のバンドでリードギターをつとめていたマーク、トミーよりは控えめだったという感じです。

 上記の「ヤング・ギター」では、マークとトミーだけがインタビューを受けています。
『学生街の喫茶店』がヒット中なのに、ボーカルは十二指腸潰瘍で入院中だったのです。
 インタビューの中で、「今、持っているギターは」という質問には

【マーク】
 マーチンD-45、ジャンボ、ハーモニー、エレキでは、ギブソン・レスポール・カスタム。

【トミー】
 マーチンD-45とD-28、イバニーズと云いスレイドも使っている、グレコのフランス向けの輸出専門ギターを工場見学の時もらってきた。
 レキントギターをバーゲンで買う。
 エレキでは、フェンダーのテレキャスターの最新型のスィンラインと云うモデル。グレコのニセポールで、まだセットネックでテスト・モデルなので、市販されていない。ハーモニーを僕が改造した、日本製のマイクをくっつけたもの、最高に気にいってスタジオなどにも持って歩いている。
 グレコのベース。家で録音したり練習するのにネ。

(文中表記は原文のまま)

 というお答え。
 トミーがマークの六倍答えています。
 ギターのこととなると情熱がほとばしってしまうのですね。
 私はギターのことをほとんど知りませんが、トミーが「バーゲンで買う」と答えたレキントギターだけはわかりました。
 テイチク株式会社に勤めていたとき、演歌の伴奏によく使われるものとして知ったのです。
 ムード歌謡のオムニバスアルバムで「魅惑のレキントギター」的な商品の申請書を書いた覚えがあります。
 東京ロマンチカの鶴岡雅義が使っていたギターを思い浮かべてください。
 ボディが小さく、全体的に音が高めのギターです。
 演歌やムード歌謡だけでなく、クラシック、民族音楽に使われるものだそうです。
 そんなところまでチェックしているとは。トミーの探求心はものすごいですね。

 ボーカルの長所短所は? ボーカルのいない心境は? という質問には、

【マーク】
 人が良すぎるところが、長所でも短所でもある。
 短所は神経質なところ。考えすぎて、つまるところがある。
 他は文句なし。
(ボーカルがいないと)
 心細い。早く、全快して一緒にやりたい。

【トミー】
 ボーカルのいい所は、こまかいこと。
 欠点も長所のこまかいところが、かえって神経質になりすぎて、短所となるのかなァ。
(ボーカルがいないと)
 ハーモニーも乗らないし、何かたりないですネェー。

 二人ともボーカルが神経質だと言っていますが、その気遣いがGAROというグループをまとめてくれているのでは?

『地球はメリー・ゴーランド』

 GARO二枚目のシングル『地球はメリーゴーランド/水色の世界』。
 珍しく三人とも笑顔で、好きなジャケット写真です。
 また、いつもとは逆でボーカルだけがギターを持っている、レアな写真でもあります。

一人で『学生街の喫茶店』を歌うボーカル

 GARO解散後の活動では、常にギターと一緒のボーカルです。
 エレキギターを持っているところだけは見たことがありません。
 エレキを弾くボーカル……見てみたいかも。

(つづく)
(文中敬称略)

いいなと思ったら応援しよう!