オープンDの音色を追って 32
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朝夕はだいぶ涼しくなってきました。
いよいよGAROが『みんなのうた』で歌った『どこまでも駆けてゆきたい』が似合う季節です。
GAROに関するものはずっとチェックを続けています。
夏には一度神保町の古書店街にも行きました。
古書店街はどの店も思いのほか閉店時間が早かったので、あまり見られませんでした。
暑さが完全に去ってからまた行くつもりです。
そして先月、disk unionで見つけたのです。
『HAIR』のサントラCDを!
GARO以前のマークがおそらく初めて正式にレコーディングした歌が含まれているCDです(元の盤はもちろんLPレコード)。
前々からAmazonマーケットプレイスで見てはいたのですが、あまり数が出ない上に高値で躊躇していたのです。
いちばん高いときで一万円弱していました。
ところが、先月フラッと入ったdisk unionに、なんと置いてあるではありませんか。
マジか! 目を疑いながら棚から引き出してみると……。
3,450円です。
マジか!
内心取り乱しながら会計をして、信じられない気分で持って帰りました。
『HAIR』は、1960年代後半から1970年代初頭にかけて上演されたミュージカルです。
ベトナム戦争を題材にニューヨークのヒッピーたちの生態を描くもので、オフ・ブロードウェイからブロードウェイへ進出。その後もリバイバル上演されたり映画になったりしています。
日本版は1969年に上演されました。
出演者を募る大がかりなオーディションが行われ、若い役者やミュージシャンがつめかけたといいます。
合格者の中には小坂忠、のちにミスタースリムカンパニーの代表となる深水龍作、そしてトミーに誘われて参加したマークもいました。
トミーは残念ながら受かりませんでしたが、マークは芸名・堀内麻九でウーフという役にキャスティングされます。
ダブルキャストで同じ役になったのがボーカルでした。
のちにGAROになる三人が、ここで初めて縁を結んだのです。
『HAIR』主役の一人、召集令状を受け取る青年・クロード役は、ザ・タイガースを脱退した後の加橋かつみ。
そのときのことが加橋かつみのオフィシャルホームページに書かれています。
加橋かつみはマークととても親しかったようですね。
マークのblogに何度か登場していますし、マークfromGAROのアルバム『時の魔法』にも参加しています。
マークとトミーは加橋かつみのアルバム『パリⅡ』(1972)に曲を提供しています。
加橋かつみのblogの一回目がマークへの追悼なのがまたなんとも言えないです。
知り合った時のまま「堀内マーク」と呼んでいるところに、本当に仲が良かったんだなと感じました。
『HAIR』で一緒だったからだと思っていましたが、ある時、動画投稿サイトでザ・タイガースの演奏を見ると、加橋かつみってリードギターだったんですね。しかも、ものすごく上手い。
ギターで響き合ったのか。そりゃ仲良くもなるわ。と納得しました。
では、『HAIR』のCDを聴いてみることにします。
『アクエリアス(輝く星座)』から『フレッシュ・フェイリュア(輝け太陽) Let The Sunshine In』まで、全17曲。
日本語詞:川添象太郎・加橋かつみ・寺田稔(ドイツ公演でバーガーを演じ、日本版でも同役)
全体的に歌が粗削りで、舞台でのライヴ録音風な仕上がりです。
歌詞に「東京電力」が出現したり、文部省唱歌『茶摘み』を取り入れたりと、思い切ったローカライズがされています。
GAROのアルバム『GARO2』のラストを飾った『グッド・モーニング・スターシャイン』も入っています。
ということですが。
GAROファンであれば『僕は黒い~何もない』という曲にボーカルのソロ部分があることがすぐにわかります。
深水龍作については知らなかったので、ミスタースリムカンパニーを調べてみると……。
CDのブックレットではミスター・スリム・カンパニー表記でしたが、中黒はないようです。
東京キッドブラザーズ→前身のキッド兄弟商会にボーカルが参加。
ミスタースリムカンパニーの過去の所属俳優→鈴木雄大(現在ライヴでボーカルがGAROの曲を歌うとき、サポートとして共演していることが多い)
ここでもまたGAROとの関連が判明しました。
世間は狭いと考えて良いでしょうか。
『人のすべて』は、その前の『3-5-00』という曲とシームレスになっています。
「トライブ」と呼ばれるアンサンブルの合唱が終わり切らないうちにかぶさるチェット・フォーチュン(オフ・ブロードウェイ経験者)とマークとのデュエット。
最初から美しくハモっていて、ソロ部分もあります。
このときのマークはGARO時代とは違ったスタイル。
声を張って歌いあげています。
黒人キャストを相手に、堂々たる歌いぶりです。
讃美歌のような詞の内容とも相まって、心に染み入ります。
マークは自分のことはギタリストだと思っていて、歌は松崎しげるとトミーに出会ってから頑張ったと言っていました。そうでしょうか。歌……上手だと思うのですが。それ以上にギターが上手かったから、自分でも気が付かなかったのかな。
加橋かつみ、マーク、どちらもボーイソプラノと言っても良いほど声が瑞々しく、『HAIR』に出て来る若者たちのモラトリアムを描くのにピッタリだと感じました。
(つづく)
(文中敬称略)
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