オープンDの音色を追って 88 ~GAROからのお年玉~
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暮れです。
今週の驚きは、これです。
ポールとリンゴが元気で良かった!!!
それしか思いません。
リンゴ・スター、めちゃめちゃかっこいいし。
ベースとドラム、リズム隊が健在ってことですね。
『Now and Then』ではジョンとジョージの映像も使われていましたね。
そういうのを見ると泣いてしまうほど私も年をとりました。
暮れです。
1975年のお正月には、GAROからファンの方々へ声のお年玉がありました。
ソノシートによる「新年のご挨拶」です。
ソノシートというのは、塩化ビニールなどで作られた薄くてやわらかいレコードのことです。
コストが安く大量生産に向いていて、1970年代の子ども向け雑誌などの付録に多く使われていました。
私も子どもの頃、ソノシート付きの小学館の学年誌を持っていました。
内容は「ドリフターズが新幹線に乗って大阪へ行く」という声のドラマです。台詞も覚えているほどお気に入りでした。志村けんではなく荒井注の時代です。
ソノシートには現在残っていない音源も多く、当時の音の文化を知る上で貴重な資料となっているようです。
ソノシートは1959年、コダマプレス株式会社が日本初の「音の出る雑誌」として月刊誌『歌う雑誌KODAMA』、隔月刊誌『音のデラックス誌 AAA』を創刊したことから始まりました。
意外なことにコダマプレスは『六法全書』を手掛けた社会科学系出版社・有斐閣の編集者らが設立した会社なのです。
法律からエンタメへ。華麗な転身です。
コダマプレス編集長には、もと六法編集室にいたIさん(この情報を教えてくださった方の御尊父)が就任されました。
事業内容にはコミックスや新書の出版もあり、オークションサイトを見るとソノシートだけでなく、手塚治虫、白土三平、石森章太郎等の単行本が出ています。
コダマプレスに続いて朝日ソノラマがスタートします。
朝日ソノラマはその名の通りソノシート付きの本を売るための出版社で「ソノシート」の登録商標を持っていました。
この項では全体に一般的な呼び名としてわかりやすい「ソノシート」と記述していますが、厳密に言うと朝日ソノラマ以外の出版社が出したものは「フォノシート」「シートレコード」と呼ぶのが正しいのです。
以下のHPに、コダマプレスや朝日ソノラマのことが詳しく書かれています。
朝日ソノラマは、私にとっては秀作SFを多く擁するソノラマ文庫、特撮の雑誌「宇宙船」を出していた思い出の出版社ですが、2007年に廃業しています。
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GAROからのお年玉はファンクラブ「YOURS GARO」会員が対象で、3:30のお喋りです。
お屠蘇を飲んでご機嫌だという設定のトミーがトークのイニシャティブをとっている珍しいシチュエーション。
トミーの音頭で「かくし芸大会」が開催され、3人のモノマネが聴けます。
GAROってそんなことをするグループだったんだ? 意外です。
でも、テレビに出まくっていたイメージはあるので、妥当なのかも?
それと、お正月のテレビからいつの間にか「新春かくし芸大会」なくなってるじゃありませんか。
お正月の夜、かくし芸を見るのは何よりの楽しみだったのに。
調べてみると、かくし芸の企画とディレクションは椙山浩一。
当時フジテレビの社員だったすぎやまこういち(『学生街の喫茶店』作曲者)です。
またここでもGAROとの縁が見つかりました。
ところで、GAROは『新春かくし芸大会』には出たのでしょうか。
ソノシートは、前年に出た2枚組のLP『プリズム』(ベスト盤のような編集もの)の宣伝と、この年5月に出す予定のアルバムの制作にとりかかることを告知して終わります。
75年のアルバムは『吟遊詩人』ですから、実際の発売は6月にずれ込んでいます。
「今度のアルバムは僕らのオリジナルで」というトミーの意気込みも聞けて頼もしい限りです。
それなのに、75年の12月25日にはラストアルバム『三叉路』。
76年1月1日にはラストシングル『さいごの手紙』です。
75年のお正月がGAROファンにとって最後のHappy New Yearだったとは……。
(つづく)
(文中敬称略)