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オープンDの音色を追って 11

(約5分半で読めます)
 今日はGAROの曲について感想を書いていきます。
 まずはファーストアルバム『GARO』から。

『一人で行くさ』
作詞/作曲:日高富明 編曲:GARO
 記念すべきファーストアルバムの一曲目。と同時にデビューシングルのB面。

1971年の夏に、まず『一人で行くさ』が、何かのTV番組のテーマに使うからと、この一曲だけが別個に最初にレコーディングされた。

GARO BOX アルバム解説(大野真澄)

 GAROファンの皆さんが「鈴鳴り」と呼ぶきらびやかなギターの音。
 アコースティックギターってこんなにきれいな音色なんだ! と驚きました。
 ギターがハモり、続く見事な三声のコーラス。
 圧倒されるよりほかありません。
 聞き惚れるとはこのことです。
 時期的にトミーがおそらく20歳になったばかりくらいのときに書いたであろう詞も、とても生き生きとしていて、ちょっと気負いもあり、ほほえましいです。
 完璧じゃないですか?

『たんぽぽ』
作詞:大野真澄 作曲:堀内護 編曲:GARO
 続いて、詞にはマークの意見も入っているらしい作品。
 デビューシングルのA面でもあります。
 ドノヴァンの『ラレーニア』に想を得て書かれたとも言われていますね。
 静謐で、心象風景を歌ったような曲です。
『一人で行くさ』とはまた違った、ジャラーン……と鳴るギターのイントロが印象に残ります。
 もちろん良い曲なのですが、ヒットを狙うなら、シングルのA面は華やかで初々しい『一人で行くさ』の方が良いかな、と思いました。
『たんぽぽ』というタイトルも、フォークソングだと誤解される原因になったのでは?

『二人の世界』
作詞:大野真澄 作曲:堀内護 編曲:東海林修
 むずかしい。こんな難曲をよく作れるものだ。それを歌ってしまう御三方もすごいが。
 トミーも「なんかむずかしい曲だよね」と言っていたそうです。
 実力を見せつけ過ぎて「マネして弾いてみよう、歌ってみよう」という気になれないのが、GAROが初手からは売れなかった理由の一つだと私は思っているのです。それを感じる一曲。

『何もかも遠くに』
作詞/作曲:堀内護 編曲:GARO
「裏声が出ない」と自己申告するボーカルの、地声を張ったソロが聴けます。
 アップテンポでイキが良いですが、別れの曲です。
 間奏のギターにしびれます。

『花の伝説』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:GARO
 静かなギターがひたすら美しい。
 これも、タイトルからGSやフォークと間違われそう。
 ネットで「この曲でスリーフィンガーの練習をした」という書き込みを何度か見かけ、ギターのことがまったくわからないので調べてみました。

スリーフィンガーは4本指を使う通常のフィンガーピッキングとは異なり、ひとつの奏法として確立されたものです。単純に指が3本だからスリーフィンガーと安直にネーミングされてるわけではありません。
もともとアメリカのカントリー音楽のノリから発展してきたスリーフィンガーピッキングは、日本では70年代のフォークソングブームに乗って一気に広まりました。

モリタギター教室ホームページ ギター講座(13) スリーフィンガー・ピッキング

 通常のピッキングが4本指だということすらも知りませんでした。新しい知識です。
 さらに驚いたことには、YouTubeのコメント欄に「よく聞くと分かりますが、実は2フィンガーなのです。」と!
 GAROのやることにはマニアックな技術が多過ぎませんか。

『暗い部屋』
作詞/作曲:堀内護 編曲:GARO
 CSNの『Suit:Judy Blue Eyes』に匹敵する大作。
「CSNいいよなぁ。あんな風にやってみたいよなぁ」と思って、できてしまうのがGAROのすごいところ。
 LP(昔の言い方)ではマークが歌っているソロ部分の一部を、ライヴではボーカルが歌っています。その方が変化があって良いと思いました。
 イントロには本当はトミーの弾いたリードがあるのですが、トラックダウンのミスで入っていません。完全版のイントロは、後に出るライヴ盤で聴くことができます。

『水色の世界』
作詞/作曲:堀内護 編曲:東海林修
 これもまた難しい曲。マークの大失恋が元でできたらしい。
 アレンジにハープが入っているのは珍しい。
 間奏の泣きのギターはかまやつひろしから借りたリッケンバッカーをマークが弾いたもの。
 二枚目のシングルのB面。

『小さな恋』
作詞/作曲:日高富明 編曲:GARO
 題名通り、とてもかわいらしい曲。
 私は、歌の上手い人が軽く歌っているのが大好きです。
 これはそういった意味で理想の一曲。
 トミーはギターがっつり、歌も目いっぱい、みたいなのが好きなのかもしれません。GARO後期の『吟遊詩人』などを聴くと特にそう思います。
 しかし、こういうwhisper voice的なのも、すごく良いです。

『地球はメリー・ゴーランド』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:東海林修
 二枚目のシングルA面。
 パイロット万年筆のCMソングとしてヒット。
 ご本人たちも出演したというCM、見てみたいものです。
 とてもゆったりとしたトミーのボーカルが心地良い。
 鈴木雅之が初めて人前で歌った時の一曲だといいます。
 2005年にも飲料のCMに使われており、人気の高い曲だと思います。
 これは、自分でも歌ってみようかな? という気になるような一曲ですね。

『人は生れて』
作詞/作曲:堀内護 編曲:GARO
 アルバムのラストを飾るにふさわしい曲。
 なぜ20歳そこそこでこんな諦観に満ちた詞を書けるのかは謎です。
 才能、ってことですか?
 マークは優れた曲を書ける上に、数もこなせるのがすごいです。
 ファーストアルバムの10曲中、7曲も書いているのですから。
 それも、デビューするにあたって「CSNのコピーだけじゃレコードは出せない。オリジナルがなければ」とプロデューサーのミッキー・カーチスから言われて、数ケ月で作ったというのです。
 インタビューでは「必死で作ったのか?」と訊かれて「必死になっちゃうとあまりいい曲って作れないんですよ(笑)」と答えています。
 ……天才では?

(つづく)
(文中敬称略)

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