
オープンDの音色を追って 11
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今日はGAROの曲について感想を書いていきます。
まずはファーストアルバム『GARO』から。
『一人で行くさ』
作詞/作曲:日高富明 編曲:GARO
記念すべきファーストアルバムの一曲目。と同時にデビューシングルのB面。
1971年の夏に、まず『一人で行くさ』が、何かのTV番組のテーマに使うからと、この一曲だけが別個に最初にレコーディングされた。
GAROファンの皆さんが「鈴鳴り」と呼ぶきらびやかなギターの音。
アコースティックギターってこんなにきれいな音色なんだ! と驚きました。
ギターがハモり、続く見事な三声のコーラス。
圧倒されるよりほかありません。
聞き惚れるとはこのことです。
時期的にトミーがおそらく20歳になったばかりくらいのときに書いたであろう詞も、とても生き生きとしていて、ちょっと気負いもあり、ほほえましいです。
完璧じゃないですか?
『たんぽぽ』
作詞:大野真澄 作曲:堀内護 編曲:GARO
続いて、詞にはマークの意見も入っているらしい作品。
デビューシングルのA面でもあります。
ドノヴァンの『ラレーニア』に想を得て書かれたとも言われていますね。
静謐で、心象風景を歌ったような曲です。
『一人で行くさ』とはまた違った、ジャラーン……と鳴るギターのイントロが印象に残ります。
もちろん良い曲なのですが、ヒットを狙うなら、シングルのA面は華やかで初々しい『一人で行くさ』の方が良いかな、と思いました。
『たんぽぽ』というタイトルも、フォークソングだと誤解される原因になったのでは?
『二人の世界』
作詞:大野真澄 作曲:堀内護 編曲:東海林修
むずかしい。こんな難曲をよく作れるものだ。それを歌ってしまう御三方もすごいが。
トミーも「なんかむずかしい曲だよね」と言っていたそうです。
実力を見せつけ過ぎて「マネして弾いてみよう、歌ってみよう」という気になれないのが、GAROが初手からは売れなかった理由の一つだと私は思っているのです。それを感じる一曲。
『何もかも遠くに』
作詞/作曲:堀内護 編曲:GARO
「裏声が出ない」と自己申告するボーカルの、地声を張ったソロが聴けます。
アップテンポでイキが良いですが、別れの曲です。
間奏のギターにしびれます。
『花の伝説』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:GARO
静かなギターがひたすら美しい。
これも、タイトルからGSやフォークと間違われそう。
ネットで「この曲でスリーフィンガーの練習をした」という書き込みを何度か見かけ、ギターのことがまったくわからないので調べてみました。
スリーフィンガーは4本指を使う通常のフィンガーピッキングとは異なり、ひとつの奏法として確立されたものです。単純に指が3本だからスリーフィンガーと安直にネーミングされてるわけではありません。
もともとアメリカのカントリー音楽のノリから発展してきたスリーフィンガーピッキングは、日本では70年代のフォークソングブームに乗って一気に広まりました。
通常のピッキングが4本指だということすらも知りませんでした。新しい知識です。
さらに驚いたことには、YouTubeのコメント欄に「よく聞くと分かりますが、実は2フィンガーなのです。」と!
GAROのやることにはマニアックな技術が多過ぎませんか。
『暗い部屋』
作詞/作曲:堀内護 編曲:GARO
CSNの『Suit:Judy Blue Eyes』に匹敵する大作。
「CSNいいよなぁ。あんな風にやってみたいよなぁ」と思って、できてしまうのがGAROのすごいところ。
LP(昔の言い方)ではマークが歌っているソロ部分の一部を、ライヴではボーカルが歌っています。その方が変化があって良いと思いました。
イントロには本当はトミーの弾いたリードがあるのですが、トラックダウンのミスで入っていません。完全版のイントロは、後に出るライヴ盤で聴くことができます。
『水色の世界』
作詞/作曲:堀内護 編曲:東海林修
これもまた難しい曲。マークの大失恋が元でできたらしい。
アレンジにハープが入っているのは珍しい。
間奏の泣きのギターはかまやつひろしから借りたリッケンバッカーをマークが弾いたもの。
二枚目のシングルのB面。
『小さな恋』
作詞/作曲:日高富明 編曲:GARO
題名通り、とてもかわいらしい曲。
私は、歌の上手い人が軽く歌っているのが大好きです。
これはそういった意味で理想の一曲。
トミーはギターがっつり、歌も目いっぱい、みたいなのが好きなのかもしれません。GARO後期の『吟遊詩人』などを聴くと特にそう思います。
しかし、こういうwhisper voice的なのも、すごく良いです。
『地球はメリー・ゴーランド』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:東海林修
二枚目のシングルA面。
パイロット万年筆のCMソングとしてヒット。
ご本人たちも出演したというCM、見てみたいものです。
とてもゆったりとしたトミーのボーカルが心地良い。
鈴木雅之が初めて人前で歌った時の一曲だといいます。
2005年にも飲料のCMに使われており、人気の高い曲だと思います。
これは、自分でも歌ってみようかな? という気になるような一曲ですね。
『人は生れて』
作詞/作曲:堀内護 編曲:GARO
アルバムのラストを飾るにふさわしい曲。
なぜ20歳そこそこでこんな諦観に満ちた詞を書けるのかは謎です。
才能、ってことですか?
マークは優れた曲を書ける上に、数もこなせるのがすごいです。
ファーストアルバムの10曲中、7曲も書いているのですから。
それも、デビューするにあたって「CSNのコピーだけじゃレコードは出せない。オリジナルがなければ」とプロデューサーのミッキー・カーチスから言われて、数ケ月で作ったというのです。
インタビューでは「必死で作ったのか?」と訊かれて「必死になっちゃうとあまりいい曲って作れないんですよ(笑)」と答えています。
……天才では?
(つづく)
(文中敬称略)