
オープンDの音色を追って 16
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先日、高橋幸宏が亡くなったことを知ったときも悲しかったですが、今度はデヴィッド・クロスビーが。
これでCSN&Yの再結成はなくなったわけですね。
元々そんなに仲良くもなかったみたいですが。
GAROの原点が失われつつあります。
私は映画『いちご白書』が好きで、主題歌の『サークル・ゲーム』も好きなのです。
その曲を作ったのがジョニ・ミッチェルで、クロスビーとお付き合いしていた時期があったんですね。

ごく最近のニュースでは、ジョニ・ミッチェルは、米国議会図書館から、「ガーシュウィン賞」を授与されたということです。
ポピュラー音楽で世界の文化に大きな影響を与えた作曲家・演奏家に贈られる賞で、ミッチェルは「非常に名誉ある賞で、私に栄誉を与えてくださり感謝しています」とコメントしています。
また、調べたところ、ジョージ・ハリスンにシタールという楽器の存在を教えたのがデヴィッド・クロスビーだそうです。
シタールといえば

さて、今日はアルバム『サーカス』の感想です。
この前の『GARO4』をもってナンバリングのアルバムは終わり、ここからはコンセプトアルバムになっていきます。
というわけで、『サーカス』のモチーフは、もちろんサーカスです。
『団長のごあいさつ』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
サーカスの開幕をはなばなしく告げる曲。
『空中ブランコ』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
心の揺れを空中ブランコになぞらえて描いた愛の歌。
『オートバイの火くぐり』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
トミーのご機嫌なロックナンバー。
「やりそこなりゃ丸こげ」なんて、シリアスな状況をコミカルな歌詞で。
『猛獣使い』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
引き続きトミーのロックナンバー。
「さかだちしてみろ」とライオンに言うことをきかせる歌ですが、歌詞のわりにはメロディがやさしい。
『ピエロの恋唄』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
ピエロって、メイクで目の下に涙を描いたりしていることがあって。
おどけてはいるけれど、物悲しいよね。
そんなイメージを歌った曲です。
『曲馬団』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
二度とアフリカには帰れないシマウマの歌。
ピエロに続いて物悲しい曲です。
『なぞの女』
作詞/作曲:大野真澄 編曲:深町純
このアルバムはサーカスというコンセプトで詞が先に書かれ、ボーカルには「飼育係」という作品が割り当てられたそうです。
が、ボーカルは気に入らなかったのか、「勝手に」この曲を作ったらしい。でも、サーカスは「見世物」なので、一座の中にこんな風な「なぞの女」が居ても全然おかしくはないですね。
なぞの女の笑い声が入っている演出がちょっとしたホラー。
『大男の歌』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
トミーもマークに負けずに物悲しい曲を作ります。
「大男、総身に知恵がまわりかね」という意地悪なことわざを歌ったものです。
『綱渡り』
作曲:日高富明 編曲:深町純
おそらくGARO唯一のインストゥルメンタル。
マークはこう言っています。
「綱渡り」 大好きな曲です
ステージでは、トミー&マークが舞台の左右の角に立ち...
ギターを長いバランス棒に見立て...一本のロープを危なげに渡りながら、互いにツインリード♪でゆっくり舞台の中央に向かって歩く...
そして...ステージのセンターで出逢った時...正面客席に向き直し...マイクに向かい♪あ~あ~♪と言う演出でした♪...
因みに...この演出を考えたのは、マークです。えっへん!(笑)
空中...ロープ一本を危なげに渡る二人の姿を想像してみてくださいね...
『この世はサーカス』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
一曲目『団長のごあいさつ』と同じ曲の歌詞違い。
これをもってLPのA面は終わります。
本編をプロローグとエピローグで挟む小説のような構成です。
じゃ、サーカスというコンセプトなのはA面だけ?
と思いますが、B面の方も「旅から旅へ」という感じの曲が揃っているので、サーカスを想起させます。
やはりLP全体で「サーカス」なのだと思って間違いないでしょう。
『風にのって』
作詞/作曲:堀内護 編曲:深町純
ファーストアルバムの時点でできていたのに、なぜかこれまでアルバムに入らなかった曲。
アップテンポでさわやかで、GARO結成時からライヴの締めによく演奏されていたそうです。
『演奏旅行』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
月に20本もコンサートがあったというGAROなので、その実感で書かれた曲でしょうか。
『酒びたり人生』
作詞/作曲:大野真澄 編曲:深町純
ボーカル作の突然のソロ曲。
コミカルですが「俺には酒しかない」という歌詞は危険ですね。
アル中まっしぐら。
左とん平によるカバーも有。
『通りすがり』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
マークのフォークソングっぽいソロ曲。
この曲と後出の『絵ハガキ』とは主人公が同じで、時間的にはこちらが後、かもしれない。
『旅人が眠る丘』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
トミーによる物悲しいソロ曲。
臨死体験? みたいなメロディとアレンジ。
『絵ハガキ』(歌詞カードのみ『絵はがき』表記)
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
ボーカルがメインで歌う、静かな諦観に満ちた曲でアルバムは終わります。
曲が終わってしばらくすると、動物たちの騒ぐ声が遠くに聞こえます。
きっとサーカスの動物たちなのでしょう。
このアルバムについて、プロデューサーのミッキー・カーティスはこう語っています。
相当実験したよ。特に「サーカス」ってアルバム、大変だったよ。
オレが 「オートバイの音を持って来い」って言ったら、「出前のカブが来ました」だって。
まさか「プルプルプル」なんて音じゃ情けないし。
まだ台数も少なかったんだけど、友達に「ハーレー」を持っている奴がいてね、結局そいつから借りてさ。
エンジニアに「後ろのシートに乗って、バイクの音を録音してくれ」って頼んだら、恐がっちゃって仕方がないんで、オレがテープレコーダーかついで、後ろのシートに乗っかってね、そのときに録音した音を使っているよ。
動物の鳴き声も、オレがありものの効果音が嫌いだから、録音するために実際のサーカスを探したんだ。
で、サーカスを見つけたんだけど、いたのはけっこうヨボヨボのライオンでさ。
鳴き声のタイミングにしても、レコードを聴いている人が「もう終わった」と思って、レコードプレイヤーの針をあげにいく、それにかかる時間をはかってさ、ちょうどそのタイミングで鳴き声が聴こえるようにしたり、ね。とにかく手間のかかるアルバムだったね。
(つづく)
(文中敬称略)