GAROへの道はなにで舗装されているか

その12：あの夢を乗せて　ボーカル＆his friends
（約5分で読めます）

緊急事態宣言に伴う自粛期間に時空を超えてGAROファンになった私。
昨今はファンではなく「推し」という表現も盛んです。
現存しないグループをどうやって推せばいいのでしょうか。
後追いしかできない私の、調査結果発表にお付き合いください。

ボーカルのアーティストへの第一歩が音楽ではなく、絵だったことは衝撃でした。
しかも私の大好きなイラストレーター・長沢節の学校「セツ・モードセミナー」に通っていたとは。
GAROは渋谷パルコのオープンのときにキャンペーンソングを歌ったり、写真展を開いたりしています。
記録映像で見る限り、場内にはメンバーが撮った写真ではなく、GAROのアーティスト写真が展示され、握手会が行われていました。
ファンサービスのようなイベントです。
その辺もGAROがアイドルに見られてしまった原因でしょうね。
写真展にいちばん親和性があるのは絵を学んだボーカルですし、どうせギャラリーを使うのだからボーカルの絵も飾ればいいのにと思いました。
もっといえば、GAROのレコードのジャケットにもボーカルの作品を使うべきでは？
マルチタスクが当たり前の現在であれば、きっとそうなっていたでしょうね。
今からでも遅くないので、ボーカルのグッズ、出ませんかね？
セツ・モードセミナーに在籍した人々のWebコラム「私のセツ物語 -みんな夢みる学生だった-」のページに、ボーカルの描いたビートルズの絵と在学中の思い出話が載っています。是非見てみてください。

ボーカルのすごいところは、交遊関係の広さです。
意外な人とも親しいのです。
いちばん驚いたのは、矢沢永吉と友人だということです。
あんまり結びつかないなぁ。
これはGAROをプロデュースしていたミッキー・カーチスがキャロルを手掛けることになり、ボーカルにデモテープを聴かせたのがきっかけでした。
「このバンドはすごい」と感じたボーカルは、キャロルのデビューライヴの司会をかって出ました。
それ以来、同い年の矢沢永吉と親しいのだそうです。

GAROのプロとしての初めてのレコーディングは、かまやつひろしの『四葉のクローバー』のバックでした。
これもボーカルがロックミュージカル『HAIR』に出演した際、楽屋を訪ねてきたかまやつひろしと親しくなったことからです。
アルバム『GARO2』にはトミーをリードボーカルに据えたGARO版『四葉のクローバー』が収録されており、お返しとばかりにかまやつひろしがコーラスをつとめています。
また、同アルバムにはベースで細野晴臣（宇戸もんど名義）が参加しています。
こちらは、ボーカルが出演し音楽を担当した劇団「キッド兄弟商会」での縁だと思われます。劇中歌の自主制作盤を作ったときに、細野晴臣が在籍したバンド・エイプリルフールが関わっているからです。
初期のGAROのバックでドラムを叩いていたのは高橋幸宏ですから、GAROはYMOとも関係があったことになりますね。
他にもGAROのアルバムに参加したことがあるのは、伊藤銀次、井上尭之、大野克夫、岸部修三(現・岸部一徳)、高中正義、羽田健太郎、松崎しげる、松任谷正隆、山下達郎等々、そうそうたる顔ぶれです。
日本のポップス、ロックの歴史ですよね。

忘れてならないのは、岸部シロー(当時の芸名表記)との交遊です。
1970年頃には、個人でテレビ放送を録画できる機器は出回っていませんでした。
VTRというのはあくまでも業務用だったのです。
そんな時代にオープンリールのVTRを持っていたのが、洋楽ファンであり、趣味人でもあった岸部シローです。
GAROというグループ名をつけたのがザ・タイガースのマネージャーですから、当然岸部シローとも交流があったボーカル。
シローが録画したビートルズの来日公演やCSN&Yのスタジオライヴの映像を見て刺激を受けたといいます。
また、当初渡辺プロダクションに入る予定だったGAROが結局田辺エージェンシー系に行くことになったのにも岸部シローが関係しています。
当時三人組のグループ「シローとブレッド&バター」が在籍していたので「これ以上男性三人のグループは要らない」となってしまったのでした。

今も歌い続けているボーカルは来月がお誕生日。当日はライヴがありますがこのご時世です。無事に行われることを祈ります。
そして、これから解き明かしたいボーカルの謎。
一時、芸名を大野轟二としていたこと。
とどじ？　何故？
可愛いからいいような気もしますが、やっぱり、何故？
子どもの頃、テレビの中のボーカルは、髭や渋い声のせいで、飛び抜けて大人に見えました。
でも、追い始めてからは、当時のライヴやラジオで一生懸命お喋りをしている様子、低音パートを引き受けてぶっきらぼうな感じを出している歌唱、可愛いと思います。大人に見えてもGARO当時24歳くらいですしね。
（つづく）
（文中敬称略）