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オープンDの音色を追って 64 ~詞が先か曲が先か~

(約4分で読めます)
 ずっと『GARO singles&origins』を聴いています。
 もうすぐ一か月になりますね。
 追加に追加を繰り返したボーカルのライヴ、驚いたことに8月にもあるそうです。
 もうこれは「GAROは現役のアーティストである」と断言しても良さそうですね。

 また、GAROファンの先輩から『夜間飛行機』のデモ音源を聴かせていただきました。本当にいつもありがとうございます。
 聴いて驚いたのは、歌詞がついていないだけで、ほとんど出来上がっていたことです。
 マークの才能からいって、驚くようなことではないのかもしれません。
 クイーンをオマージュしたというツインギターアレンジも既に表現されています。
 ちょっと違うのは出だしの部分。
「安らぎのない……」からツインギターまでは、デモ音源にはまだ入っていませんでした。
『夜間飛行機』は作詞作曲編曲すべてマークです。
 従来、GAROの曲は、曲が先に出来ている「曲先きょくせん」が主で、作詞は山上路夫が多く手掛けています。
 こういったデモ音源をたくさん聴ける作詞家特権がうらやましいと思いました。
 余談ですが、特撮ファンである私は、山上路夫作詞『ウルトラマン80』は傑作だと思っています。

 詞が先だったのは、阿久悠が全曲を手掛けたアルバム『吟遊詩人』です。

アルバム『吟遊詩人』

  このとき、新聞に載った阿久悠の記事には「『大都会の羊飼い』というタイトルのアルバムを作っている」と書かれていたそうです。
 大手の新聞にそう書かれて、ボーカルは訂正を求めたけれども聞き入れられなかったとか。

GAROの曲は基本的にはコンペで(アルバムタイトル曲)『吟遊詩人』にもマークとトミー、二人とも曲を持って来た。
「これ、くっつけちゃったら面白くない?」ということで組曲風になった。Aメロがトミーで、CSN&Yの『Deja Vu』調の部分がマーク。

ラジオ『K's TRANSMISSION』でのボーカル発言

 
 GAROの曲は歌詞がちゃんと聴き取れるので、あまり歌詞カードをみることがありませんでした。
 今回、なんとなく歌詞カードを見ていて驚いたのが『ピクニック』です。
「君がこしらえたステキなランチ」という歌詞がかわいらしい曲ですが、問題はその後です。
 てっきり「ラララ」だと思っていた部分に、「ウラララ」と書かれていたのです。
 えっ、そうなの?
 そう思って聴くと、確かにただのラララじゃなくて、アタマに小さい「ゥ」が入っている……。
 ホントに愉快な曲ですね。

 GAROファンになる前、コロナ禍直前まで、私はテレビアニメ『ほしの島のにゃんこ』のシナリオを書いていました。
 この番組は、音楽スタッフがとても豪華で、ディズニー映画の日本語版を作っている会社なのです。
 ですから『にゃんこ』にはミュージカル的なシーンもたびたびあり、私は初めて作詞をさせてもらいました。
 正確に言うと、シナリオに「大体こんな感じのことを歌う」と、仮のつもりで書いておいたメモ書きに曲をつけてもらったのです。
 他にも、エンディング曲と最終回のフィナーレ曲にはコーラスで参加するという貴重な体験をしました。
 アフレコのとき、毎回いろいろと音楽に関する興味深いお話を聞かせてもらっていて、印象に残ったことがあります。
 最近の若いクリエイターはデスクトップミュージックから入っている人が多いので、プレイヤーによる生演奏の音に対する感覚が違うというのです。
 例えば、指板の上でギターの弦を押さえるキュッという音をノイズとみなし「取って(消して)ください」と言ってくるんですって。
 ……びっくりしますよね。
 生身のプレイヤーのたてる音をノイズだと思いますか?
 それも音楽のうちではないのですか?
 それをノイズだと言うなら息継ぎもできません。デジタルネイティブ恐ろしい。
 そういえば、初期のTM NETWORKのインタビューで「小室哲哉はブレスがない曲を書くことがある」と読んだ覚えがあります。
 ボーカリストを人間だと思っていないのでしょうか。ボーカロイドにならブレスなしで書いてもいいかもしれません。
 しかし1980年代にボカロはありませんからね。最初のボカロ製品が出たのは2003年のことです。先を行き過ぎている小室哲哉も恐ろしい。

 GAROは音を加工するといってもシンプルにダビングを重ねるくらいしかしていないのですから、もう実力が違うと思うのです。
 データとは違い、プレイヤーとマイクの間に空気があって、振動したり反響したりしている音。それがGAROだと思います。

(つづく)
(文中敬称略)

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