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オープンDの音色を追って 40 ~トミーが書いたクラプトンのこと・その1~
(約5分で読めます)
12月です。
クリスマスソングのプレイリストを聴いていると、アレンジされた讃美歌が流れてくることがあります。
マークのやさしい声で讃美歌を歌ってくれたらなぁ。聴きたいなぁ。
もっとAIが一般的になったら、ボーカロイドみたいにGAROのメンバーの声を使って好きな曲を歌わせることができるのでしょうね。
GAROのメンバーが好きなアーティストは、もちろんCSN(&Y)。
それがベースにあって、その上で、ボーカルが特に好きなのはビートルズ。
トミーが特に好きなのはエリック・クラプトンと、彼が所属していた複数のグループ。
マークはいろいろなアーティストを幅広く好きだったようです。ギタリストに関してはクラプトンよりジミヘンだとか。
エリック・クラプトンは、何度も日本公演をしています。
GAROファンクラブの会報にトミーは、1975年の武道館公演を観に行ったことを書いています。
以下はムック本『エリック・クラプトンのすべて 第2集』(1975年4月21日/株式会社エイプリル・ミュージック発行)に寄せたトミーの手記です。
今日では放送禁止用語にあたる言葉がありますが、オリジナルを尊重して引用します。
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『クラプトンに出合ったその日から』
クラプトン気ちがい代表/ガロ・日高富明
僕はクラプトンの大ファンです。だから彼が出す音、全てが素晴しい音に聞えるのかも知れません。
でも、それでいいと思うのです。彼の創り出す音や音楽は僕にとって本当にいい音楽だと心から思えるのです。
僕がクラプトンの名前を初めて知ったのは、丁度クリーム時代でした。(僕は「ミルク」というG・Sを結成した頃でした。)
当時、新宿界隈のディスコで活躍してたフィリッピンから来た「ザ・スーナーズ」というグループが“SUNSHINE OF YOUR LOVE"を演奏していました。
僕はこのスーナーズが大好きで、いつも聴きに行き、何を隠そうファンクラブにも入会していた程でした。
初めてこの曲を聴いた時の感激は今でもよく覚えています。
タイトルとグループ名を人に聞き、急いでクリームのアルバムを買ってきてコピーしたものでした。
もちろん当時はトレモロ・アームが非常にポピュラーで、ヴィブラートのテクニックなど知るよしもありません。
一体、あの音はどうやって出しているのだろう、と真剣に考えたものでした。
今でも “SUNSHINE OF YOUR LOVE "のヴィブラートは本当に難しいと思うのです。しかもその頃、僕が使っていたギターはFENDER TELECASTERですので、あのGIBSONのパワフルな音は出せなかったのです。
(またアンプはYAMAHAの一番最初のモデルで、今でもこれは非常に良いと思います。)
そして僕は、ファズとかの「ぐ」……ギターをラーメンに例えるならファズやブースターはさしずめ「なると」や「しなちく」になります。そういうエフェクター類の事を僕達は「ぐ」と呼びます。ファズ、ブースター、サステナー、エコー・マシンなど沢山の「ぐ」を使って、ギター本来の生の音色を消して全く違う音にしてしまう人の事は「五目ギタリスト」なのです。
僕は「ぐ」が嫌いで、さしずめ「かけうどん」と同じで、「かけギタリスト」ですネ。……を使うのが嫌いな僕には非常に難しかったのであります。(この頃友人のバンドで、なんとヤードバーズというグループがあり、そこの2人のギタリストがとっても、そういうナンバーをこなしていました。)
クラプトンも、ギターに各種アタッチメントを使うのが非常に嫌いらしく、せいぜいワウワウどまりです。
GIBSONを使えばそのパワフルな音色を、FENDERを使えばその澄んだ音色を、と最大限にそのギターの生の音を大事にする人です。
クリームのライヴを聴いて、これはレスポールかな、ファイアーバードかな、などと思ったり、音が伸びない時など、コンディションが悪いのだなとか。
彼は神様的でもあるけれど、僕はやっぱり人間的なものをより多く感じます。僕が聴いたBLIND FAITHのライヴのギターや歌など、コンディションは最悪なのです。
この表現力はどうでしょう。
誰にでもわかりやすい食べ物にたとえてギタリストのタイプを説明するとは。
トミーは音楽だけでなく、文章にも才能がありますね。
音を加工せずに演奏することを「かけ」とは、粋です。さすがは深川の江戸っ子です。
それに、トミーの実家は食堂。
家業での生活に根差した感覚で説明したことにもなっています。
クラプトンは今年2023年にも来日していましたね。
そのときSNSに「日本はクラプトンを甘やかしている」「以前見に行ったが良くなかった。もう行かない」と書き込んでいる人がいました。
そのことから、出来ばえにムラがあるアーティストなんだな、と思っていました。
上記のトミーの手記にも「BLIND FAITHのライヴのギターや歌など、コンディションは最悪」とあります。
そんなクラプトンですが、在籍したデレク・アンド・ザ・ドミノス『Layla』(いとしのレイラ)は、洋楽やギターに興味のない人でも聞けば「知ってる!」と言う大ヒット曲です。
こんなに印象的なギターのフレーズは滅多にないでしょう。
(つづく)
(文中敬称略)