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下戸とタイトスカートの高円寺

東京生活の9割方を過ごしている、高円寺という街について。

先日の「出没!アド街ック天国」は、「人気芸人たちが愛する街【高円寺】」だった。
高円寺に住みはじめて10年強。

売れないバンドマンと芸人が夢を追い続ける街と言われていたのが、今や「人気芸人」の街と言われるなんて。

2021年にキングオブコントに優勝した空気階段の鈴木もぐらさん、2020年M1グランプリ王者マヂカルラブリーの村上さんをはじめ、三四郎・小宮さん、アルコ&ピース平子さん、鬼越トマホーク坂井さん…などたしかに今高円寺芸人たちは、人気絶頂だ。

彼らが語る高円寺の魅力は、売れる前にお世話になった衣食住の安さと、アウトサイダーっぽい人が普通にいられる雰囲気だ。

たしかに高円寺の飲み屋は安い。昔ながらの入口共有の安アパートが残っている。古本、古物、古着屋も多いから、やろうと思えば衣食住の費用はかなりおさえられる。
北口のローターリーではいつも、昼からチューハイを飲むおじさんとギターを持った若者が話していたりする。タトゥーとモヒカン率がやたら高い。でも、そんなにこわいかんじはしない。

弟の奥さんはスイス人で、今弟夫婦はスイスに住んでいる。日本にいるときは、関西に住んでいた。彼女は、東京は人が多くて慌ただしくて苦手と言っていたけれど、高円寺に来て、「ここは好き、日本ならここに住みたい」と言った。なんだかこの街の人は自由なかんじがすると。
元市場の暗い多国籍料理屋でベジタリアンプレートを食べて、モヒカンに腕全体にタトゥー、アシンメトリーな服のお兄さんとすれ違ったところだった。

タイトスカートにブラウス、ヒールで行った隣駅の営業先で、「私、高円寺に住んでいるんですよ」と言って、「なんだか、ぽくないですね」と言われたことがある。
そう、高円寺っぽい女性はヒールなんてはかないし、駅ビルで買った服なんて着ないのだ。だってこの街には、古着屋が100件以上あるのだから。

「あんまり飲まないんですよね〜」と言うと、「なんで高円寺に住んでるの?」と言われる。瓶ビールを入れるプラスチックケースを椅子に、昼から外で飲めるのがこの街だ。夜な夜な安く飲んで、路上ミュージシャンの声を聞きながら千鳥足するのが、この街の醍醐味だ。

それでも、途中海外生活と半年の下町生活をはさんで、戻ってきてしまった街なのだ。
年末また海外に引っ越すことが決まり、同僚に「日本にいるうちに、行っときたいところないの?」と聞かれた。「それが高円寺以外思いつかないんですよね」と言ったら、「いつもいるじゃん、好きすぎ」と笑われた。

駅の北口から。ねじめ正一の小説の舞台でもある、高円寺純情商店街。コロナ禍では、「鈴木もぐらさん、優勝おめでとう!」という横断幕がかけられた。


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こちらの記事は、毎週末、配信しているニュースレター「日曜の窓辺から」のアーカイブです。(元記事公開日:2022.11.13)


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