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わたしが観た今年のベスト映画
音楽制作を生業としていることもあり、また来年は短編映画の音楽を制作することになっているため勉強も兼ねて今年は可能な限り映画を観てきました。
元々、映画は好きでしたがどちらかというとドラマを観ることが多く、意識的に映画を劇場でも、自宅でも観ています。絶賛、ハマっています。
主にAmazon Prime、NETFLIXで視聴しているものですが今年観た映画のなかで心に残っているものをご紹介し、そのなかでもベスト映画を最後に書こうかなと思います。ネタバレにならない程度にご紹介します。
観るのがツラい「ミッシング」
沙織里の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた。夫の豊とは事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々。そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう。世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように。一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材を命じられてしまう。
愛する娘の失踪により徐々に心を失くしていく沙織里を石原が体当たりで熱演し、記者・砂田を中村倫也、沙織里の夫・豊を青木崇高、沙織里の弟・圭吾を森優作が演じる。
あらすじからして観るのがツラいし、石原さとみさんの役作りでも話題になっていたので劇場で観たかったのですが、配信されていたので自宅で観ました。
鑑賞しながら10年以上前の作品ですが、アンジェリーナ・ジョリー主演の「Changeling」を思い出しました。話のテーマは異なるのですが、親が子をなくすこの狂気や葛藤、そういうものが感じられてしんどかったです。(Changelingみたいにサスペンスではないので怖くはないです…!)
やはり石原さとみさんの演技が素晴らしく、子を持つ母親として自分を重ねて見てしまいました。実際に自分に降りかかった出来事だとしたら、おそらく同じような行動をとるだろうと思います。
途中で何度か子供の幻聴が聞こえるんですね。これは母親ならみんな経験があると思います。泣いているような気がする、声がするような気がする、っていうのは、それほど毎日の子育てで子供の声を聞いて、神経尖らせているところってあると思うんです。母親の命のアンテナ見たいな。
ラストのシーンまで良いですが、割と心の余裕があるときに観るのをお勧めします。
いつまでも色褪せない「羅生門」
世界にクロサワの名を知らしめた歴史的作品。原作は芥川龍之介の短編「藪の中」。平安時代、都にほど近い山中で貴族女性が山賊に襲われ、供回りの侍が殺された。やがて盗賊は捕われ裁判となるが、山賊と貴族女性の言い分は真っ向から対立する。検非違使は巫女の口寄せによって侍の霊を呼び出し証言を得ようとする、それもまた二人の言い分とは異なっていた……。豪雨に浮き立つ羅生門の造形美、立ち回りシーンの迫力、生き生きとした役者たちの演技などすべてが印象深い作品。ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した、黒澤明の出世作である。米アカデミー協会の全面的バックアップを受け、映像とサウンドを修復した「デジタル完全版」が2008年に公開された。
古い新しいに関わらず名作を観ようという気持ちも強かったので、黒澤明監督の「羅生門」も鑑賞、感動しました。これほどの名作をなぜ、今まで観ていなかったのか後悔するほどでした。
1950年製作ですが、モノクロ映像の美しさが素晴らしいです。光と影のコントラストだけでこれほどの表現ができるのか、と心が震えました。
斬新な撮影テクニックだけでなく、脚本の素晴らしさも、観ていて人間の愚かさや良心、というものについて考えさせられました。
幸せとは何かを考える「PERFECT DAYS」
https://www.perfectdays-movie.jp
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
こちらも映画館で見逃してしまった作品。周りの方々も「好きだと思う」と勧めてくれて実際に鑑賞しましたが、あらすじからは想像できなかった余韻というか、考えることが多くて年末にこの映画を観ることができて良かったです。
役所広司さんのラストの表情が本当に素晴らしいんですが、語りすぎていない作品なのでどう捉えるかは観ている人によるのかなと思います。
わたしとしては、人それぞれの幸せが何なのか、日々の中に幸せを見つけられる人であるか、幸せな人生だと確認しながら(振り返りながら)生きているのかなと思います。側から見れば幸せそうなことも、本人からすればそうでなかったり、不幸せそうに見えても本人は幸せだと感じていたり、幸せだと思い込もうとしたり。
そういった人生の難しさを感じました。
今年のベスト映画はこれ!
「MINAMATA」です。映画としては2021年公開ですが、動揺するほど感動しました。
ジョニー・デップが製作・主演を務め、水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いた伝記ドラマ。1971年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミスは、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。衝撃を受けながらも冷静にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしまう。追い詰められた彼は水俣病と共に生きる人々に、あることを提案。ユージンが撮影した写真は、彼自身の人生と世界を変えることになる。
「水俣病」といえば多くの方が知っている病だと思いますが、水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスに焦点をあてた伝記ドラマです。
有名な一枚の写真「入浴する智子と母」のシーンが映画でも再現されているのですが、何というかそのシーンが神秘的で衝撃的です。この写真は水俣病を国際的に知らしめる一枚となりましたが、この写真をめぐってはこちらの記事に大変感銘をうめました。
映画のなかでは水俣病の実態も描かれています。
また、坂本龍一さんの音楽も素晴らしく、テーマ曲も良いんですがわたしは特に「Coda」という曲が好きで、映画を観終わった後にこの曲を聴きながら色々考えました。
選ぶのが難しいほど素晴らしい作品に今年は出会えましたが、以上今年の個人的ベスト映画でした。来年はもっと多くの作品に触れ、知見を高めていきたいと思います。