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言葉では伝えにくい、マイプロ、というもの。

知らない人と、3ヶ月、6回会って、

「この場所で『本当の笑顔』と出会った」

と、彼女は言った。



マイ・プロジェクトというプログラムを、鍼灸師向けに開催している。
3期目が終わって、開始からちょうど1年が経った。

鍼灸師に向けて行われるセミナーやプログラムは、技術・知識を身につけられるものが圧倒的に多い中で、このプログラムはおそらくちょっぴり異色だ。

慶應義塾大学の井上英之先生がつくられたマイ・プロジェクト(以下:マイプロ)は、大学ではもちろん、高校生向けであったり、新入社員教育であったり、ビジネスセクターの人向けであったり、色々な団体や企業で利用されている。

私自身、2年前にはKAIGO MY PROJECTの5期メンバーとして、参加していた。
そしてその素晴らしさを知り、鍼灸業界へと輸入したのである。


マイプロを始めるにあたって、また、継続している今も、1番苦労しているのは、その魅力をどう伝えるか、という点だ。

例えば、
治療技術が身につくわけでもないし、
収入アップに直結するわけでもないし、
集客や経営のノウハウが学べるわけでもない。
日々の悩みに直接答えてくれるような、そういうものではない。

ただ、一つだけ言えるのは、3ヶ月を経た最終発表の場にいるメンバーは、3ヶ月前の彼らとは、明らかに変化している。
変化はそれぞれに違っていて、そしてその後も、じわりじわりと、スルメのように噛めば噛むほど味をだしてくる。

なぜなのか。
この3ヶ月の間に、たった6回の間に、
私に、メンバーのみんなに、一体何が起こったのだろうか。


メンバーの変化の理由について、私が断言できることは、正直1つもない。
ただ、参加者として、そして、主催者として関わる中で、私自身を後押してくれたものがなんだったのか、見えてきた気がしている。
ので、ここに記しておこうと思う。


①安心安全の場 であるということ

マイプロの1つの大切なルールは、お互いの「安心・安全の場」であることを守る、という共通理解である。

これは、なんとなく作っていくのではなく、しっかりと言葉で共有される。「共有されている」ということが、安心・安全の場への一歩となっていると感じている。

自分の思いを口にするのには、勇気がいる。学校や一般的な社会では、想いを口にしたところで、「無理だ」「何言ってんの」「わーすごいねーガンバッテー(棒読み)」みたいな言葉が返ってくることが多い。そして、もう言わないようにしよう、と思う。私もそうだったし、そういう過去を持つ人は多いと感じている。

安心安全、という共通理解のもと、勇気を出して想いを話してみる。誰も否定しない、むしろ、応援してくれる。一緒に考えてくれる、共に悩んでくれる。
私はこの経験を通して、ものすごく自己肯定感があがった。


②自分の歴史を語り、他者の歴史を知るということ

自分の歴史を振り返る機会を、どれくらい待っているだろうか。そしてさらにここで重要なのは、それを他者と共有する、ということであるが、普段の生活の中で、そんな機会はどれほどあるだろうか。

自分を振り返るのは、ただただ楽しいことではない。忘れたかった過去、今も続いている苦悩、乗り越えたと思っていたことが、今の自分に暗い影を落としていると気づいた瞬間…。

しんどい。正直しんどい。
自分の暗黒面ばかりが、目に付いたりする。

そんな自分の歴史を、メンバーと共有する。すると不思議なことに、自分では見つけられなかった、暗黒面の「意味」を見つけてくれたりする。自分では見えなかった「良いところ」を教えてくれる。1人では引っかからなかったところに、思考のヒントをくれる。

気づいたら自分の中でストーリーが書き換わっている。私はそんな気持ちだった。過去は変わらないのに、今への繋がり方が変化した。

そして今度は、他者の歴史を知る。昨日までは知らなかった人の、歩んできた人生を聞かせてもらう。
1冊の小説を読んだような気分になる。さっきまでは「はじめまして〜」だった人が、急にものすごく、いとおしく感じる。
もっと知りたくなる、そして心から、応援したくなる。

心から応援したい人たちと、自分の歴史を知った上で想いを応援してくれる人たちが、同時にできる。

この仲間が、今も、私の想いを形にするプロジェクトを続けていく力になっている。


③圧倒的な気づきの量

6回の中にはさまざまなワークがあって、1回1回に新たな気づきがある。
そのほとんどが、1人だったら気づけなかったことだな、と私は感じている。メンバーと共有し、様々な視点からの言葉をもらうことで、「は!」と思うような気づきをもらえる。
同時に、自分の言葉で誰かの「は!」を呼び覚ましたりする。これも嬉しい。何かものすごく役に立てた、という気持ちになる。

誰かに教えてもらったのではなく、仲間との対話の中での「気づき」のパワーはすごい。たまに、人生の価値観を根こそぎひっくり返されるような気づきを得ることもある。
瞬間に目の前の景色が変わる。自分への言葉が変わる。人との、仕事との向き合い方が変わる。

沢山の気づきが、無意識のうちに、私を変えていた。


安心安全の場が、自己肯定間を高めてくれた。
メンバーと歴史を共有しあったことが、かけがえのない仲間をくれた。
たくさんの気づきが、私に変化をもたらしてくれた。

現時点で、私を後押ししてくれたマイプロの大事な要素は、この3つであったと思っている。

これは、あくまでも私の話だ。他のメンバーはもっと違った価値を知っているに違いない。
ので、それも是非聞いてみたい。


私は昔から、Mr.Childrenの「終わりなき旅」という曲が大好きだった。
この曲に、なんども、人生を救われてきた。
若かりし桜井さんは力強く歌う、

「誰の真似もすんな 君は君でいい。生きるためのレシピなんてないさ。」

マイプロは、まさに、私にこのことを体験として教えてくれた。
私は私で良くて、生き方にレシピなんてない世界を、私はずっと求めていた。
そんな世界が、ここにはあった。



知らない人と、3ヶ月、6回会って、

「この場所で「本当の笑顔」と出会った」

と、彼女は言った。


そして私は、これからも、

そんな笑顔と出会い続けたいと思う。


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