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平和な世界の訪れが今すぐでないのなら

ウクライナの惨状が伝えられる度に居ても立ってもいられなくなり、マクラメアクセサリーを販売して売上を寄付するチャリティーを始めた。

始めるとすぐに反響があった。実際に購入してもらえたり、友人がSNS等で紹介してくれたり、応援してるよとメッセージをもらえた。

ウクライナの状況に胸を痛め、支援したいと思っているのは私だけじゃなかった。この企画をきっかけに声をかけてくれた人たちは、「何かできないかな」「何かしたいな」と前から思っていたのだろう。
私と同じように感じている人はきっとたくさんいる。後先考えずに始めた企画ではあったが、そのことにとても勇気づけられ、始めて良かったと思った。

ところが、販売を開始してすぐからだんだんと、始める前には予想できなかったジレンマに苦しむようになっていった。

心をこめて作った作品が売れれば、やはり嬉しい。
けれどそもそも、戦争がない方がいいのだ。こんな企画を思いつくきっかけがない方がいいのだ。
なのに、戦争のおかげで作品が売れて嬉しがっている。もしかすると「戦争が続いている間は売れる」という思考に嵌まりつつあるのではないか。まるで武器商人のようだ。
嬉しいのに素直に喜べない苦しさがじわじわと折り重なっていった。

そしてもう一つ。
ウクライナから少し目を離して世界を見れば、今現在も紛争の続いている地域は他にもある。シリア、ミャンマー、アフガニスタン…。
ウクライナ支援の気運が高まる今だけのチャリティーでいいのだろうか。一発屋で終わらせて私はそれで満足なのか。そんなモヤモヤが頭から離れない。
私は心から平和を願っているし、不運にも難民となった子どもたちが安心して遊び、学んで、成長できる環境に暮らせるよう支援したい。であれば、継続してこそ意味があるのではないか。ところが今回のチャリティーは、経費を引かずに「売上全額寄付」という企画だ。アクセサリー制作にかかる経費はたかが知れているとはいえ、いずれ続かなくなる。

続けたいのか、続けたくないのか、続けられるのか。
悶々と考えながら売り続け3週間経った今日、いつまでと決めずに始めた企画にいったん区切りをつけ、売上3万2千円を寄付した。

不思議なもので、寄付を終えた瞬間こころが決まった。
やっぱり続けよう。ただし、寄付は経費を引いた利益の中から。そうして、できるだけ長く続けよう。これっきりではなく、これからも。

残念なことに、この3週間の間にもウクライナの現状は悪化の一途をたどっているように見える。それに、たとえすべての地域で紛争が終わっても、逃れた人たちが以前の暮らしを取り戻せるのはずっと先のことだ。
いつか平和な世界が訪れ、もうチャリティーを企画する必要がなくなるその日が今すぐでないのなら、その間細々とでも続けることには意味があるに違いない。そう思えば商品が売れることも怖くない。

寄付の払込が終わり、コンビニを出たところで、遠い国の誰かに想いを馳せる。できることがあると分かり、久しぶりに顔を上げて前を見ているような気がした。

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