月建とアルテミスカリストー 〜時を告げる神〜
ギリシャ神話に登場する月の女神アルテミスと
その侍女であったカリストー。
処女神であるアルテミスに仕えるカリストーもまた純潔を保っていた。
ところがゼウスに襲われ、カリストーは操を奪われてしまい、怒ったアルテミスによって、熊の姿に変えられる。
有名なおおぐま座の物語である。
この話は、現実の夜空の話を擬人化したものである。
約26000年毎の地球の歳差運動により、北極星となる星は変化する。
これが、おおぐま座の誕生に絡む。
おおぐま座の尻尾は、北斗七星の柄杓の柄にあたる。
この北斗七星の柄は、古来、建(尾指す)と呼ばれ、
「夜の時間」と「季節の暦」の役割を担ってきた。
尾が北を指す時は冬
尾が東を指す時期は春
尾が南を指す時は夏
尾が西を指す時は秋
北斗七星は中緯度では一年中沈まない星であり、
方角や時間を知るための重要な星である。
古代より夜、月と共に時を計る支配者であった。
月の女神アルテミスは古くは山野の女神で、野獣(特に熊)と関わりの深い神であったようである。
またカリストーは「最も美しい」の意で、この名前は女神アルテミスの添名でもあったことから、アルテミス自身の分身的な性格を持っていたと考えられている。
地球の歳差運動によりこぐま座ポラリスが北極星となった時に、この悲しいカリストーの物語が誕生する。
月アルテミスにすれば、長年のパートナーが北極星に奪われる事態である。
月と北斗七星は、かつて切っても切れない関係を持ってセットで考えられていた。
月と北斗七星の位置が、時を捕えた。
太陽の軌道を黄道と呼び、
月の軌道は白道と呼ばれる。
アルテミスの兄弟は、太陽神アポロンである。
月アルテミスと太陽アポロンは、時間を知らせる神として君臨していた。
ところがアルテミス、オリオンと恋に落ちる。
アポロンの妨害で、オリオンはアルテミスに殺される。
この話は、秋分春分に絡む話。
オリオン座の昇る位置は真東、
沈む位置は真西。
秋分春分の太陽、月も同様の位置を取る。
オリオン座の見える時間と月の軌道を考える。
アポロンは、海に入って頭部だけ水面に出していたオーリーオーンを指さして「あれを射ることができるか」とアルテミスを挑発した。オーリーオーンは、アポローンの罠で遠くにいたため、アルテミスはそれがオーリーオーンとは気づかなかった。
海から頭だけ出していたオリオン。それを遠くから射るアルテミス。
月とオリオン座の距離が最も離れる時。
春分。
日没の頃オリオン座は西に傾き、まもなくオリオン座は夜空から姿を消す。
日没にオリオン座が真西に見える時、真東を知らせてくれるのが、春分の頃の満月。
満月の煌々とした光が、星々を射る。
アルテミスにまつわる話は、月を支える夜の時の星座を教えてくれている。
オリオンは、和名酒枡星。親にない星。
これは、おそらく北斗七星に対比されたものと推測する。
北斗七星は、歳差運動により、現在の位置にあり、
秋は見えづらくなる。
北極星がベガだった頃は、一年中はっきり見えていた。
見えづらくなる秋から冬の夜空を三カ月ほど北斗七星を代行するのがオリオン座。
酒枡は、冬に酒を仕込む為と言われるが元々は北斗七星の枡の裂け目の意味合いがあったと推測する。
親にないの名は、北斗七星の役を代わりに担うの意味だろう。
このように物語は時を知る方法として作られた。
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