月から読み解く古代史
月は、月の形の象形であり、三日月の形で、中に小点を加えて実体のあることを示す。
説文によれば、月は闕で音義説をとく。
闕けたるものが月といえる。
夕は、夕べの月の形であり、半月の象とする。
ただし、この文字は小点があったりなかったり、月の象形と互易したりとバラツキがみられる。
無視できない点である。
さて、この月の形を踏まえて、明である。
明は冏(けい)と月とに従う。冏は窓の形。
明は窓から月光が入り込む意味である。
そこは神を迎えて祀るところであるから、神のことを神明という。
さて、この明の甲骨文の月の形は、反転した月である。
つまり下弦の月である。
下弦の月明かりが窓に差し込む事を示している。
下弦の月は真夜中に東の空に昇り、明け方に南中する。
夜明け前に東の空に昇る月は、有明の月という。
月齢22日頃から27日頃までの月明かりである。
言い方を変えると真夜中から明け方にかけて東から差し込む月明かりに神が宿るといえるだろう。
だとすれば、月は、3つあるのである。
月が闕けたるモノならばお月様だけを指すわけではない。
明けの明星(金星)
明けの水星
これら内惑星も月と同様に満ち欠けする。
そうすると、夕もまた同じ事がいえる。
夕暮れに西の空にみえる月
宵の明星
宵の水星
月と水星と金星は欠けたる天体ファミリーであり
夜明け前と日没後の数時間を支配する。
明け方、夕方、この時間を支配する光。
神明という言葉から特に夜明け前の東の光に聖なる意味を見い出している事がうかがわれる。
古く黄土地帯の住居は、中央に方坑を掘りその四方に横穴式の居室を作る。
全体が亞字形をなし、中央の方坑に面するところのみ光が入るところで、明堂であった。
その方坑に面した所に神を迎えて祀るので、明は冏と月に従う。
故に神事を明といい、聖職者の称号に用いる。
明は幽に対する語で、幽界のことが明顕の世界にあらわれるとされた。
亞は陸墓の墓室の平面形。
墓中の棺槨をおく室を玄室というが、その玄室の四隅をおとして入り込ませた平面形が亞である。
亞は玄室における儀礼すなわち喪葬の儀礼を執行する職能者を指したようである。
亞はその氏族における重要な宗教儀礼を掌る聖職的身分のものであったが、戦争にも同行し、軍の特殊部隊を意味するものとなった。
夜明け前の光と喪葬の儀礼。
幽界と明顕が同時に出現する時間。
亞は次ぐと訓される
死者の魂が生まれ変わる時。
その儀礼を取り仕切る一族。
古代の人は夜明け前の水星と金星と月に
何を感じていたのだろうか。